…プロローグ…
…プロローグ…
「ついにこの時がやってきました!!」
全世界LIVE中継のなか、目をギラギラと輝かせ興奮気味に言葉を発したのは、現日本国総理大臣の萩本ヤスシだ。
時間など今の世界には小さなことで、世界中が息を呑み萩本の次の言葉を待ち望んでいる。
「世界中が待ちに待った、Peaceの完成です!!」
その瞬間、世界が震えた。
歓声が空気を叩き、地は振動に波打つ。
今なら世界のどこにいても、誰かの声が聞こえるのではないかと感じられるほどだ。
現日本国総理大臣の萩本も興奮冷め止まぬ瞳で言葉を続ける。
「国を挙げての会議の末、初めのPeace使用者、いわゆる能力者はこの日本国が先立って選出することに決まった!」
萩本のこの発言後、日本ではまた大きな歓声が巻き起こる。
そして世界各国では悔やみのブーイングだ。
世紀の開発とも言えるPeace。
使用者は「人間の理を超越する」とさえ噂されている代物なのだから、誰しもが身近である自国にPeace使用者の存在を夢見たのだ。
そんな世界の声など知るよしもなく、萩本は尚も言葉を続ける。
「既に決まっているPeace使用者、すなわち 能力者の3人は後々テレビや新聞でお目に掛かる日がくるでしょう。世界平和のために、そしてこの世界のより良い発展のために頑張っていただきたい所存で・・・」
萩本の演説はその後もしばらく続き、やがて終わりを迎えた。
まだ興奮の冷め止まぬ中、ある者は仕事を開始し、ある者は子どもを保育園へ送り出し、ある者は学校へと通い、またある者は眠りについた。
世界中が、いつもの日常へと戻ったのだ。
ただその心には、先を見据えた高揚感を抱えて。
時間はいつものように流れ、世界を創り出している。
間も無くこの日本に、そして世界に。
大きな時代のうねりが訪れるとはつゆ知らず。
今日も世界は廻り続ける。