生命線が短い
俺は、生命線が短い。
だから人より早く死ぬ。それは避けられない運命だ。
しかし、それがわかっているということは、俺にとって最大の強みだ。俺は毎日を全力で生きる。強迫観念に取り憑かれるように、生命の激流に呑まれるように、走り続けると決めた。
やりたいことをやる。後悔しないように。汗の一滴すら、明確な目的がある。血のにじむ努力すら、喜びに変えてみせる。
「なんでそんなにいつも焦ってるの?」
幼なじみに尋ねられる。
ワケを話すと彼女は笑って言った。
「手相見せて」
見せると、彼女は安心したような微笑みを浮かべる。
「運命線の補助線があるよ。大丈夫」
早死には俺の勘違いだった。どうやら気力でなんとかなるらしい。
「それにね、」
彼女は笑顔で俺に手のひらを見せる。
「私、生命線ないんだ」
「……」
「二人とも短命だったら、一緒に仲良く天国でも行く?」
「……」
彼女は美しかった。
彼女の言葉に、そして俺はさらなる勘違いをする。恐らく全力で後悔することだろう。人生はまだ続くのだ。