珠を持つ者達
よろしくお願いします
「やはり、出会ってしまわれましたね」
高い木の枝から二人の様子を見ている者が呟くように言った。
「出会ってもらわなければ、この世界はなくなっていた」
一人はほっとしたように溜息を吐いた。
「…でも、この世界に危機が訪れてしまうことは避けられない。出会わなければ、もしくは…」
「竜珠。彼らが出会わなければ、玻璃がこの世界を見捨てていたかもしれない。あいつはそういうやつなんだよ」
青年は思い出して身震いした。彼の事を知っているからこそ、そんな事がないようにしなければならないとも思っていた。
「蝦蛄、そろそろ、お主が帰ってくる。いい加減に出仕しろ」
整い過ぎた女性を思わせるような青年、竜珠が蝦蛄と呼ばれた青年に言った。
「陰陽寮って言ってもさ、お主自身がこの世界の命運を握ってるんだ。今更何を視ろって言うんだよ」
蝦蛄が大袈裟に溜息をついて抗議した。
「お前、陰陽寮は私の仕事場だ。お前は内裏でお主の補佐だろう?」
呆れたように竜珠が訂正した。
「女のお前に陰陽寮を仕切らせておいて、内裏でのほほんとお子様の相手はできないよ」
蝦蛄がそういうと凄い勢いで竜珠が胸座を掴んだ。
「女と言うことを知っているのはお前だけだ。それに女だからとばかにするな!」
「…すっ、すまん。口が滑った。別にばかにしているわけじゃないんだ。お前にかなり負担を強いているから…」
あまりの剣幕に蝦蛄が恐れ戦いて本音を言った。
「今はそれ程、負担は無いよ。お前が手伝ってくれるからな。それより、これからの事だ。お主とあの娘が出会ってしまった。最後の一人があの二人の前に現れるのも時間の問題だ」
溜息交じりに竜珠が言った。
もういくつ転生を繰り返してきただろうか。神に選ばれ、人の世界が危機に瀕した時に転生を受ける身体。幾度となく世界を崩壊寸前にまで追い込まれ、かろうじて免れてきた。誰に褒められるわけでもなく、すべて闇に葬り去ってきた。
「始まりの時からの記憶がすべてあると言うのがこれほど苦痛だとは思わなかったよ」
蝦蛄が大袈裟に溜息を吐いた。
「だが、それを選んだのは私達だ」
諦めたように竜珠が空を仰いだ。
「…そうなんだけどな」
蝦蛄も竜珠の眺める先を追いかけた。
「金は揃った事だし、そろそろ珠の所有者で集まらなきゃな」
竜珠は仕方ないと言外に言って、木の枝から飛び降りた。
「あっ、先に行くなよ」
蝦蛄は彼女を追って、枝から飛び降り、難なく地面に無事着地した。
「転ばないし……蝦蛄、帰るよ」
ちっと舌打ちして口の中で小さく呟いてから、蝦蛄を促して、その場を後にした。
「舌打ちして行くなよな。待てって、竜珠」
「…待たない」
追い掛けてきた蝦蛄を振り返る事もなく、竜珠達は森の中を迷うことなく帰ったのだった。
ありがとうございました。