序章 大臣の孫娘
頑張って書かせていただきます。
時は平時安と言われた時代。
人は貴族と平民に分けられ、階級に縛られていた頃。
国を治めるのは部屋入りの天皇との異名をとる奇君、滝巣天皇。
部屋に籠ったきり、出てこないと噂された天皇だった。
天皇には二人の皇子がいた。一人は滝巣天皇にそっくりな母親がいないと何もできないと噂された帆杜皇子。
もう一人は前天皇の生まれ変わりと噂されるほどの文武両道に長けた第二皇子、利紀皇子。
しかし利紀皇子は後ろ盾である母親を早くに亡くしていた。
そして帆杜皇子、十三歳。利紀皇子、七歳の時に滝巣天皇は崩御された。
その頃、都の外でも運命の輪は廻っていた。
二人の走る後には数人の黒い影が迫っていた。男の手には産まれて間もない赤ん坊が抱かれ、必死にその者達から逃げようとしているようだった。
「もう、逃げ切れません」
一緒に逃げていた女性が男の手を引いて言った。
「馬鹿なことを。この子だけでも逃がすのだ。せめて、都に行けば…」
男は女を説得するように言った。
「しかし、追手が…」
「わかっている。だが、この子は…この姫はこの世の救世主なのだぞ。それをむざむざと渡すことなどできようはずがない」
男は腕の中で眠るわが子を愛おしむように眺め、女を説得した。
「あと少し、あと少しで都です。そこに行けば、追手は当分近づけない。旦那様、私を置いて行ってください」
女は叫んだ。我が子を守りたい。その気持ちは同じなのだ。
「馬鹿なことを。柚芽、お前がこの子を連れてゆくのだ。都の父の所へ。頼んだぞ」
男は言うと、都とは反対の方向に走って行った。
「旦那様」
柚芽は胸の中で眠る我が子をしっかりと抱きなおして、追手が夫を追っていくのを確かめてから、都へと駆け出した。都に住まう、父のもとへ。
ダンダンダン
強く門を叩く音で門番は飛び起きた。今までになく緊迫した叩き方だった。
「…ここを、早く」
弱々しく声をかける者がいた。
門番は不信に思いながらも、門を開けると、そこには見知った顔の女性が倒れていた。
「これは、姫様」
長年門番をしていた者が女性の顔を見るなり叫んだ。
「いったい、何があったのですか?」
門番は他のものに知らせに行くよう指示すると、女性に近づき、血にまみれた女性を抱き起した。
「私はもう、長くありません。この子をどうか、父上様のもとへ。時が来るまで、どうか、どうか、隠してくださいと…」
門番のもとへ家の主が急いで駆け付けるのと同じに女性は息を引き取った。
その頃、夫も暗闇の中で息を引き取っていたのだった。
ありがとうございます。