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空色縞瑪瑙Ⅱ  作者: 高崎菜優多
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第三話 宙人と空  青柳宙人





第三話 宙人と空  青柳 宙人





最後に空に会ったのは、高校一年生のゴールデンウイーク。

そしてそれから早二年が過ぎ、俺はすっかりと大学受験へと頭を切り替えていた。


もともと大学の附属の高校に通っているために、そんなにがっつり受験勉強をするわけじゃない。

しかし、俺のプライドをかけて、絶対に学校の成績はトップじゃないといやなのだ。


そんなことをしている間にも、俺の双子のひなたと幼なじみの空は青春を満喫している。


空は幼なじみ。ひなたは双子。

この三人の共通点は、皆空に関係する名前ってこと。


俺は宙人。宇宙の字をとり、宙人となった。

ひなた。ひなたは太陽のあったかい日差しから。

空。そのまんま。

ね?皆空に関係するでしょ?


さて、そんな幼なじみとひなたとは、ずっと一緒だった。

高校生になるまでは。

高校生になって、俺は私立の大学附属校へ、ひなたと空は女子校へと入った。

そして、冒頭へと戻る。俺はもうしばらく空と会っていない。


本当は、すごく会いたい。会って話をしたい。

空の笑顔は本当に素敵なんだ。


「宙人は空にベタ惚れだよね。」

「いいだろ、別に!」


ひなたにいつも突っ込まれて、俺はへこむ。

そして、いつも考えるのだ。

告白をして、お互いに変な雰囲気になるなら、ただの仲良しの幼なじみでいたほうがいいのかなって。

でも


「空に初彼できたときは、放心状態だったじゃないの。

反抗して無理矢理彼女作ったりして。ベタ惚れどころじゃなかったわね。」


ひなたはクスクスと笑う。俺もひなたも空も。

もう高校二年生になった。

月日が流れるのは本当に早い。


「あーあ。懐かしいわねえ。あの時の宙人。」

「もう、その話は触れないでほしいんだけど。」

「いいじゃないの。そろそろ空に気持ちを伝えていいころじゃないの?」


ひなたにそう言われ、俺は少し目を伏せた。

俺は、ずっとずっと空に好きだといいたかった。

でも空だって人間なんだ。

空だって、誰かを好きになるし、誰かと付き合ったりする。


それがわかるようになってから、俺は段々と自分の気持ちに不安になった。




***




中学二年生の春――――。


「あーもーっ!!なんで空ばっかりからかわれなくちゃいけないの!」


空が俺とひなたにそういった。

学年が変わり、クラスも変わり、空が虐められていたことも知らない人のいるクラスの中で、空はよくからかわれるらしい。

皆たぶん、空の反応がいちいち可愛いからそうやってからかっているだけだと思う。


その当時空は、虐められたこともあってか、かなり自分を隠していた。

誰かを直視することも嫌で眼鏡をかけていたし、今なら色んなヘアアレンジで人気者の空も、髪はおろした状態でとても地味だった。

そんな見た目で、性格は明るく素直なものだから、そのギャップで反応がいちいち可愛いく見えた。


「空が可愛いからよ。」

「可愛くないっ」

「そうゆうのが可愛いのよ。」


眼鏡のおくの瞳は、睫毛も長くてぱっちりな目。

つまり、普通に顔を出していて、髪型もすっきりしていれば、本当は美人なのだ。

見た目は隠してるくせに、性格がオープンだから、あっという間にクラスの人気者になった。

俺はその時たまたま同じクラスで。

そんな空を見るのが好きだった。


「ほんと、お前ウケるわ!」


そんなクラスで、人気者の男子生徒、霜月が空に目をつけた。

霜月はギャグのセンスもバッチリで、顔もそこそこよかったが、とにかく話すのが上手い。

これで虜になった女子も多かった。


「お前、真面目そうなのにゲームとかするんだ。」

「うん。」

「たとえば?」

「たとえば、モンスターをハントするゲームとか、赤い帽子をかぶったヒゲ男とその仲間のレースゲームとか。」

「俺もやるぜ。楽しいよな!」


二人はあっという間に仲良くなっていて、気がつけばメールアドレスまで交換していた。


「霜月ってすっごく面白いの!」


霜月とのことを話す空は、本当に楽しそうだった。

俺にとっては生殺しだ。

俺だって、空が好きなのに。

俺はずっと一緒にいるのに。


出会ったばかりの霜月のほうへばかり、空の視線は向いていく。


「宙人」


ひなたは俺を心配しながら、俺の肩を叩く。


「眉間。」


気がつけば眉間にシワ。


「イケメンが台なしね。」

「ほっといてくれないかな。」


フラれてもないのに、俺は空にフラれたようにショックで。

気づいてもらえないことも。今の関係を崩したくないことも。俺にとっては切なくて儚くて。


「ひなた」

「なによ。」

「俺は、どうすればいい?」

「はぁ?」

「・・・・なんかさ、変な感じがするんだ。

心臓らへんがツーンとする。

ソワソワして、落ち着かない。」


「それで?」

「これはなんだろう。」

「・・・・”恋”ってもの以外になんと言ってほしいの?」

「・・・・ですよね。」


自分の気持ちから逃げたくて仕方がなかった。

自分の気持ちをごまかしたくて仕方がなかった。

そうしている間にも月日は流れ、空と霜月の関係は親密になっていく。

俺は自分が嫌になる。

素直になれない自分と、自分のとろうとしている行動に。


「宙人って、意外と空のこと知らないのよね。」


ひなたが唐突に言った。


「だってそうじゃない?

空の好みの男とか、どんな人にときめくとか、知らないでしょ?」

「・・・そうかも。」

「恋ってねぇ、簡単に盲目になれるのよ。」


ひなたは、こうゆうときだけ大人だから参る。

いつもは立場が逆なのに。


「霜月がかっこいいかは置いといて、空は霜月に惚れちゃったのよ。きっと。」

「・・・・。」

「でもね、私は空と霜月がもし付き合うことになったら全力で阻止するわ。」

「・・・・なんで」

「霜月は面白いし、いい人人かもしれないけど、

言葉が上手すぎじゃない?

それにあいつはモテるのよ?女には困ってないじゃないの。

空なんか簡単に釣れるのよ。」


・・・意味、わかんない。

正直、あの時の言葉は意味がわからなかった。

しかし、今となってはわかる。

そして起こる若気の至り。


俺は空に対抗し、彼女をつくった。

とにかく、空から気をそらしたかったのだ。

俺も霜月と同じで、どうにかすれば、女の子には困らなかった。

俺は、以前に俺の下駄箱に手紙をいれてきた女の子に声をかけた。


「気にはなっていたんだ。」


そんな風にかっこよさげに言ってみたら、嬉しそうに素直に笑ってくれた。

・・・その笑顔に、俺は少しときめく。

名前は佐藤明日葉。大人しめで、小さな女の子。


「アス」は凄く素直な女の子だった。


吹奏楽部に所属していて、優しい子。

お互いに名前で呼びあったし、俺はその時間が幸せになった。

それに、アスはよく気づくんだ。俺のことも本当は気づいてる。

本当に恋をしているのは、アスじゃないことに。アスは、優し過ぎるんだ。


「宙人君、本当はアスのこと恋人としての好きじゃないんだよね。」

「え」


アスは唐突に言った。

しかし、険しい顔はけしてしない。


「アスはね、宙人君のこと好きだよ。宙人君の優しいところ。」

「俺だってアスが好きだよ」

「違うの。宙人君の好きは違う好きだよ。」

「アスが好きだ。」

「違う」


アスはそう言ったあと、真剣な瞳で俺を見た。


「宙人がアスのこと好きだって、わかるよ。

アスは宙人君に愛されててるのもわかるよ。でも、違うでしょ?」


どうして、アスにはわかったのか不思議だった。

でも、アスの瞳は優しくて、空と重なった。


「宙人君の想いが空ちゃんに伝わるまで。

アスが傍にいてあげる。アスが応援してあげる。」

「・・・アス、どうして・・・」

「宙人君が去年、謹慎処分になってまで、空ちゃんのこと助けたの、空ちゃんが好きだからでしょ?」


虐められていた空を、ひなたと二人で助けた時から、アスは俺を見ていたんだ。


「・・・アス・・・・」

「そんな顔しないで。」


アスは、俺の頬を手で包む。何をしていたんだろう、俺は。

空と霜月の仲に嫉妬して、自分も彼女を作って。その上、自分の本心まで見抜かれて。


「空ちゃんは必ず宙人に気づいてくれる。

だってもう、空ちゃんは霜月と付き合ってるんだよ。」


――――そう、空は俺とアスが付き合ってから数週間後、霜月と付き合い始めたのだ。


「・・・・ごめん、アス・・・。」

「謝るのはアスだよ。アスは宙人君につけこんだんだもん。」


アスの手は、温かくて俺はその手に自分の手を重ねる。


「霜月に嫉妬してるの、なんとなくわかってたから。今なら彼女になれるって、思ったの。」


だから、お互い様だね。なんて笑い合う。


「空ちゃんが霜月と別れるまで、アスが一緒にいてあげる。」

「うん。」

「だから宙人もアスの願いが叶うまで、一緒にいて」

「アスの、願い?」

「うん。」

「アスね、霜月が好きだった。」

「うん。」

「小さなころから、ずっと、ずっと。」

「うん。」

「ずっと気づいて欲しかった。淋しくて、苦しくて仕方がなかった。

でも、宙人と一緒にいれて、アス、凄く幸せな気持ちになれたの。」

「うん。」

「だから、アスのこと、恋人じゃなくてもいいから・・・友達でいいから、見捨てないで欲しい。」


俺はなんて最低な男なんだろう。

アスも、俺も同じことを思っていたのに。

アスには何だってわかってしまう。

アスには簡単に俺の気持ちがばれてしまう。

守りたい。恋とか、そうゆう感情じゃなくて。

一人の友達として、一人の人間として、アスを大切にしたいと思った。


「アスのこと、絶対に見捨てない。」

「うん。」


アスはにこりと笑った。

馬鹿な俺達。想いのすれ違いが、人との繋がりを生むなんて。

そして俺はアスが唯一の幼なじみ以外の女の子の友達となる。

そんなことをしてる間に、クラスでは空と霜月が付き合ってることをオープンにし、

完全に空は霜月に釣られたようだった。


「まさかあんなにいちゃつくとは・・・私の空に!」

「いつからひなたのになったの。」

「うるさいな!宙人は!」

「失礼な人だな。」


ひなたが機嫌を悪くしてる間も、霜月と空は楽しそうに笑っている。

あの二人が付き合いはじめて早二ヶ月。

俺とアスが付き合いはじめて(?)も二ヶ月ほど。


「宙人とアスって付き合ってる感じじゃないわよね・・・?」


そしてひなたには俺達の友達よりは仲がよいけど恋人ではない・・・つまりは異性での親友的な感じになったことを見抜かれた。


「まぁ、はたからみれば恋人だし。」

「アスたち、設定では付きあってることにしてるし。」

「・・・なんで?」

「めんどくさくない?お前ら付き合ってるのかって聞かれるの。

うんっていっとけばその場で終わるし。ね、宙人。」

「そうそう。」

「すごいわね、あんたたち。」


ひなたが感心する中で、霜月はこちらを睨みあげた。

それに気づいたアスは、俺の手をとりその場を離れる。


「アス?」

「宙人、先に言うね。」

「うん?」

「空ちゃん、食べられちゃうかもよ?」

「え?いや、ないでしょ。だって俺達まだ中二だよ?」

「・・・うそでしょ!?アスはてっきり宙人は済みかと・・・」

「へんな想像はしないでよ!」

「とにかく、霜月は絶対にヤると思う。だって今までの女がそうだったんだよ。

結構要求も激しいみたいだし。ま、言葉が上手いからね。女の子も上手くのせられちゃうんじゃない?」

「・・・なんで知っているんだよ、そんなこと。」

「家が隣だからね。うち、マンションだし。」


ちょいちょい聞こえるんだよね。喘ぐ声。

それを聞いた瞬間にも、アスは凄く強い女の子だと思った。


「・・・。」

「ほら、宙人!しっかり!」

「アスはなんでわかってたの。霜月が空を食べるって。」

「ふふ、男はみんな狼なんだよ。なんなら宙人、アスたちもスる?」

「からかうのはやめて。」


アスともすっかりうちとけて、ひなたは空を見守り、霜月と空は今、はたからみればただのバカップルだ。

クラスメイトも呆れるのと直視できないのがいてめんどくさい。


話上手な霜月に落とされる女子は多い。

だから、霜月はかなり人気だった。

そのなかで、去年まで地味で虐められていた空が付き合ったものだから、かなり噂は大きくなる。


「私のクラスまで届いてるよ。霜月と空のこと。」

「・・・へぇ。」


家ではひなたとその話題で持ち切りだ。


「宙人は、いいの?」

「なにが?」

「空のこと、好きでしょ?」

「好きだよ。」

「だったら奪いなよ!?ずっと一緒にいたじゃない。なんで宙人が遠慮すんのよ!?」

「俺には今、アスがいてくれるし・・・アスも、俺と空の関係に似た人がいるんだよ。」


俺は、ひなたが困る顔をした。

俺が悲しそうに笑えば、ひなたは困る。でも、実際そうなんだ。

アスにもいるんだ。


「その人は・・・霜月なんだよ。」


そう。だから二人とも参っている。もう、どうすることも難しいって。


「だから、二人はお互いの気持ちをわかっているのね。」

「そう。それにアスは大人だよ。弱音をはかない強い女の子だ。

きっと、本当のことを言ってくれたのは俺だからだと思うんだ。」


アスのこと、俺なんかより霜月のほうが知ってるよ、きっと。

でも、アスは隠してるんだ。

霜月に、自分の本当の気持ちだけは。


「それに、アスに言われたんだよね。」

「何を?」


『本当に宙人が空ちゃんから手を引くなら、アスね?』

『え?なにが?』

『アス、本当に宙人が好きかもよ。』


「って。」

「それはすごい。」

「だから、俺はアスと一緒にいることも俺の人生なんだ。」


俺は、そういって自分の部屋へと戻る。

そしてベッドへとダイブ。


空がこのまま霜月と一緒にいるなら、俺はずっとアスと一緒にいたほうがいいのかも知れない。

その方が、空にとっても俺にとってもいいことかも知れないのに。

なのに頑固な俺がいる。

そんなときだった。

携帯電話が鳴り出した。着信だ。


「もしもし、青柳です。」

『・・・・宙人』


電話の主は、アスだった。


「アス?どうしたの?」

『来て・・・ほしいの・・・』


アスの声は、嗚咽が混じり、はっきりと聞こえない。


「どうしたんだい?落ち着いて話してごらん。」

『アス、一人でたえられない・・・』

「わかった。今からアスん家行く。何があったの?淋しいの?」

『違うの・・・・』

「うん・・・」


アスの声は段々と落ち着きを取り戻す。それでも、まだガラガラとした声だった。

そして、再び嗚咽混じりで俺に訴える。


『・・・・冬樹が・・・』

「うん、霜月と、何かあったの?」

『冬樹が・・・・、空ちゃんじゃない女の子・・・・家に連れ込んでた・・・・。』

「・・・・・え・・・・?」

『アス、もう無理だよ。たえらんない!!冬樹が女の子と一緒にいるの・・・!!』


どんなに大人ぶったって。

どんなに人の気持ちを察することができたって。

自分の感情までをコントロールできたら、そんな人がいたら、その人は天才だ。


「今から行く。待ってて。」


俺は上着を羽織り、アスの住むマンションまで、自転車を走らせた。


俺がアスの家に向かうと、ちょうど隣の家の霜月が家をでてきた。

霜月と一緒にいるのは、空じゃない。

空を虐めていた女子の一人で、学年の中でも美人だと噂の女の子だった。

俺からすれば可愛くもなんともないのだが。


「霜月」

「青柳じゃん、何?アスん家?」

「あぁ。まあね。」

「さすがじゃん。」

「君もね。でも君って空と付き合ってなかった?」

「あぁ、角館とも付き合ってるよ。」

「角館とも?」


そう聞いた瞬間に、あぁ、そうゆうことかなんて一人で勝手に解釈をした。

要するに、二股かけているってことだ。


「どうゆうこと?それって。内容によっては俺、容赦しないよ」


ぶちギレる、寸前だった。


「なんでお前にそんなこといわれなくちゃいけないんだ?。

お前だってアスと付き合ってるくせに、角館の心配かよ?」

「空は、俺の幼なじみだし、アスもそれを知ってる。」

「ふん、そうかよ。」

「先に言っておくよ?空を他の女の子と一緒だと思わないほうがいい。

空は人の気持ちに敏感なんだ。すぐにばれるよ、君の二股なんてね。」

「・・・そうかよ。」

「それから、君の近くで傷ついている女の子がいることを忘れないでね。」


俺はそういって、アスの家のインターホンを鳴らす。

アスはすぐにドアを開けて俺を玄関に入れた。

そして、俺にしがみつく。


「宙人・・・・・っ!!」


俺を見て安心したのか、泣き崩れてしまった。

手のかかる双子が増えたみたいだ。


「よしよし。」

「・・・・・っ・・・!!」


涙でぐしゃぐしゃのアスは、下を向いたままとにかく泣いた。

そんなアスに、俺は頭を撫でてやる。


「今ね、外で霜月にあったんだ。女の子は隣のクラスの仁科さんだったよ。」

「・・・・」

「大丈夫。アスには俺がついてるから・・・。」

「・・・・・・・っ・・・・うん・・・。」


人は、人を好きになると変わる。

アスは、好きな人のために泣いてるんだ。霜月の好きな人を否定してるわけじゃなくて。

一人の女の子を好きなる霜月を否定したいわけじゃなくて。


その人が、ただ一人の女の子を愛することができないのが、とても悲しいのだ。


「アスね、霜月が空ちゃんと付き合ったときは、負けたなって思ってた・・・。」

「え」

「空ちゃんは、幸せになったほうがいいと思ったの。

とても素直な子だもん、曇りけなんて一つもない。だから、身を引いても我慢できた。

霜月を横取りしようとか、空ちゃんに意地悪しようとか思わなかったよ。」


・・・なのに、なんでよっ!?


アスは俺に訴えた。

そして、しがみついた手をはなして、俺にぽすぽすとこぶしをぶつける。

痛い。こぶしが痛いんじゃなくて、アスの心がそのこぶしに乗り移って、痛みを逃がしているような気がして。

アスが落ち着くと、ずっと玄関にいた俺を部屋へといれてくれた。

アスの家には何度も来ている。俺は大体の勝手をわかっていた。


「ココアあるからそれでいい?」

「・・・・うん。」

「落ち着くまで一緒にいるよ。」

「・・・・うん。・・・・ね、宙人?」

「なんだい?」

「宙人は、どうしてそんなに優しいの?」

「え?」

「女の子に、そうやってみんなに優しい?」

「まさか。俺が女子とそんなにしゃべんないこと知ってるだろ。」

「・・・・うん。アスと空ちゃんしか話してないね。」

「ひなたは身内だしね。」

「・・・そっか。」

「ずっと、レディーファーストしろってひなたに言われてきたし、俺は男女関係なくこうしてるよ。」

「ひなたが?」

「ひなたのが、妹のくせにね。」


そういって、苦笑いをすれば、アスなやっと笑ってくれた。


「アスも宙人の妹になろうかな。」

「え」

「何、その微妙な顔!」

「そ、そんなことないよ!」

「うそだよ。そんなに慌てないでよ。アスも宙人のために何かできるように頑張るね。」

「ん、ありがと。」


そうして、俺たちは再びお互いの存在を確認して、お互いに支え合っている人間としての関係を作った。

そうして、月日はながれ、霜月と空はいつの間にか別れていた。


「ほんとに?」

「うん。冬樹から聞いたの。冬樹からふったんだって。」


俺もアスも信じられない気持ちでいっぱいだった。

原因は、霜月の二股。

それから後、空はやつれていき、段々と学校にも顔を出さなくなった。

心配したアスが、空の家へと向かうために、俺に空の家を案内させる。

しかし、空は玄関を開けて、俺達を見ると、ぱったりとドアをしめた。

ひなたいわく、今、どんな人であろうと、カップルを見たくはないらしい。


「空、開けて。俺、本当はアスとは付き合ってはいないんだ。ただ、心配で・・・アスも・・・。」


そんな俺をみたひなたは、俺のことを空に話してくれたらしく、空は中へといれてくれた。


「はい、空ちゃん。」


アスは手作りのケーキを空に渡す。


「最後にみたとき、すごく痩せてたから・・・。

アスね、得意なんだ。ケーキつくるの。フランスのお惣菜ケーキなんだけど・・・。」


空は、そんなアスの優しさに触れたのか、泣き出してしまった。

そして、霜月とあったことを全て話してくれた。


霜月の二股は、クラスの子だけではなかったこと。

(つまり、二股以上だった。)

ちょっと他の男子としゃべると叩くこと。

それなのに、霜月は女子とよくしゃべる。

そして、本当は身体目当てだったかもしれないこと。

他の子同様、家に来ないかと誘われて行ったらそうゆう流れになったそうだ。


はたからみたら、そんなこと恋人同士なら問題ないと思うかもしれない。

そんなこと、普通なのかもしれない。

けれど、空には霜月がはじめての恋人で

段取りも順序もめちゃくちゃに抱かれるのが怖いのは当然のことに決まってる。

さらには二股をかけてる男にそんなことされたら、嫌でも身体目当てだと思ってしまうだろう。

そして、その上で霜月が空をふったこと。

俺はなんて勝手なのだろうと思った。

アスはすごく真剣なな眼差しで俺をみた。

俺も、なんとなくアスの思っていることに察しがついた。

アスは霜月の軽率さが許せない。


空がずっと一途に霜月を想い続けていたのを、俺と二人で見てきたからだ。


「空ちゃん」

「・・・明日葉ちゃん・・・」

「男になんて負けちゃだめだよ。

空ちゃんはもっとステキな人に出会えるだろうし、空ちゃんのこと、もっとわかってる人だっているんだよ。また、学校でね。」


アスも、言葉を紡ぐのが上手い。

空がちゃんと学校に顔を出せるように、上手くもちこんだ。



***



そして今、俺は高校三年生。

アスは家の事情でアメリカへと旅立った。

しかし、今でも連絡はたまに取り合ったりするし、アスが向こうのお菓子とかを送りつけてきたりする。

まぁ、アメリカのお菓子も嫌いじゃないからいいのだが。

霜月は、今何をしているのかしらない。

どっかの高校には通っているらしいが、どこだか知らない。


空は?空は何をしてる?

今日は七夕だ。


俺はわけもなく近所の祭へと出かけた。

俺たちの住む地域は、七夕に合わせて夏祭りがある。

俺は、小さな頃に空と遊んだ公園へと足を運び、そして、公園に小さな丘へ行った。

そこは、幼い頃からの隠れスポット。

ここから見る天の川は、とても綺麗だ。

しかし、そこには先客がいた。

体育座りをして、かき氷のカップを持っている。

きっと、祭の出店のやつだ。

暗くてよくは見えなかった。

しかし、なんとなくだけど空な気がした。

この場所で天の川を見るのは、俺達しかいない。

意外と知られていない、俺と、ひなたと、空の毎年の定位置だったから。

近づけば、やっぱり空だった。


「・・・空?君、空だよね?」

「・・・・宙人?久しぶり!」

「そうだね。隣、いいかな?」


空は驚いたように俺をみた。

しかし、にこりと微笑んで頷いたので、俺は隣に腰を降ろした。

そして、俺たちはお互いの今の生活を語り合ながら、夜空を眺めた。

今日は天の川がくっきりと見えた。思わずため息がでるほどに美しい。


「ね、空」


俺は、思わず声をかける。

今、じゃないか?想いを伝えるなら。

ちょうど、アスのことや、空のことを思い出したばかりだったじゃないか。

俺は、にこりと笑ってみせた。思っているよりも、自然に笑える。


「来年も、来るよね?」


空を見つめると、顔が赤くなる。大丈夫。暗くて見えていないさ。


「好きだよ」


俺はは、空をじっと見つめていた。

――――そして俺は一年後、この答を聞きに祭へと足を運ぶのだった。










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