表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

1-14 羽

ばばばばっ


黒い部屋に噴き出す、白い噴水。

落ちためみみから羽根が噴き出しているのだ。小さな体なのに、どこにそんな量の羽毛があるのだろうか。部屋いっぱいに羽根が舞う。


羽根吹雪。


汚れた絨毯、割れた窓の破片、溶けた机、異形の生き物、全てを白く覆う。白い噴水の勢いが徐々に衰えて、やがて止まった。

「後はお前だけだ」

人面が嘲笑う。

「勘違いするな、なめるとこいつは怒るぞ」

野嵜も嘲笑う。


宙に舞う最後の羽根が、床に積もる羽根の上に着いた。

その瞬間、総ての羽根がネズミに変わり、出口に向かって突進した。


「?!」

突然の事態に、人面が怯んだ。その隙を突いて、野嵜が印を結ぶ。

「д!!」

放電が起こったように、くうが鳴る。

ゾディの身体から、人面の首がふっ飛んだ。




 たくさん分裂しためみみたちが廊下に向かう。

 しかしそこに廊下はなく、闇が広がっている。かまわずめみみたちは闇の中へ走りこむ。

!」

 一匹のめみみが闇に向かって呼ぶ。遥か向こうに小さな火が見えた、と思うとすごい速度でこちらに向かってくる。それは『火の子』の一匹だった。

「『火の子』のオリジナルはあなたね」

 走りながらめみみが炎に問う。

「そうさ、あっしがфΨ●でっさ」

「不用意に自分の真名まなを名乗らないの」

 キッとめみみが睨む。

「真名を知られた相手には絶対服従しなければならないこと、知らないの? そうやって真名を明かすから、他人に利用されるのよ」

「いえ、あっしらは野嵜以外に明かしておりませんで。そう簡単に自分の命を差し出すようなことはしませんて。少なくとも、あっしはお嬢さんを見込んで名乗ったんで」

「どこを見込んだの? なぜ見込んだの」

 炎はキョロリと目を回して、めみみを見た。

「あっしらは待ってたんですよ、お嬢さん。野嵜自身が強く推す、野嵜の真の理解者であるかたを」

「それって、私のこと?」


「あいさ」

 炎は速度を緩めず、後ろ向きに走り始めた。

「この屋敷は、野嵜がお嬢さんを待つ秘密の場所。野嵜は、どうしてもお嬢さんと話したかった。伝えたいことがあった。そのための場所をこさえたんでっさ。しかし、侵入者があった場合、ただちに破棄すべき場所。明日にはここはなくなっていたんでっさ」

 炎は、またキョロリと目を回して、めみみを見た。これが、相手の反応に興味がある時のしぐさらしい。

 話を聞いためみみは、複雑な表情をしていた。

「そう、ギリギリ間に合ってよかった」

 彼方に一筋の光が見える。

「出口でっさ」

 炎の雛が、ネズミの集団の先頭に出る。

 走る速度が上がる。

 光は見る間に近づく。近づくにつれて、それが炎の雛が鏡に映ったものであることがわかる。

「<うつし世>に戻りますってか」

 めみみの一匹が呟く。

「思いっきりぶち当たってくださって大丈夫でっさ」

 ひょいっと炎が飛んで、鏡の炎と合体した。


 ガラスがはじける音が庭に甲高く響く。それと共に、屋敷の玄関の窓から、ネズミが滝のように流れ落ちる。その数は軽く4桁を越している。

「大きさ、ギリギリでしたね。もうあそこの通路は使えなくなりました」

 先頭の炎がほっとした口調でめみみに云う。

「屋敷が・・・」

 ちらりと後ろを見ためみみがもらす。

 屋敷が真っ赤な炎に包まれている。

「あい、あっしのコピーの最後の仕事。屋敷を炎で浄化することでっさ」

 振り返らずに炎が応える。

「野嵜が燃やしたいものを燃やす、それは、あっしらにしかできない仕事で」

「燃やしたいものって・・・」

「これは、私にしか云われていませんが、」

 炎はキョロリと目を回して、めみみを見た。

「一番は野嵜の身体、でっさ」





ズルリと火ょうがゾディの下から這い出てきた。

「下がっていなさい」

ず・・・と野嵜がゾディに歩み寄る。

「何を・・・!」


「д!」

再び野嵜が喝を入れる。今度は火ょうが、部屋の隅まで弾き飛ばされた。


「下がっていなさい」


「ゾディをどうする気ですか」

野嵜は答えない。答えず、動かないゾディに向かって、印を構える。先ほどと違う印である。

「ダメです・・・ダメです!」

火ょうの身体に、にじみ出るように炎が広がる。同じくして、部屋の隅からも炎がにじみ出してくる。こちらはすぐに燃え広がり部屋を炎で包み込んだが、火ょうの炎はじわじわと燻りながら燃え広がる。

「あなたは自身がなさっていることを、わかっているのですか? 許されると思っているのですか」

「いいかげん、敬語を使うのをやめたらどうだ、∽Å♯▼」

ピクッと、火ょうが強張る。

「それに、私の行為を、誰が許し、許さないのか? 私が何をしようとも、私の勝手だ」

轟々と部屋の炎は火の粉を散らしながら、荒れ狂う。その中で、ゾディ、野嵜、そして火ょうは静止したままだった。

「私が・・・私が許しませんとも、野嵜の片腕として」

フッと野嵜が鼻で笑う。そして印を構え直して、足元のゾディに向く。ゾディの腹は、まだ辛うじて上下している。それを冷ややかに見下ろす野嵜が口を開いたとたん、天井が崩れ、火ょうの目の前――野嵜とゾディの上に降った。その火の粉は、炎の使い手である火ょうをも焦がした。はっと事の重大さに気づく。

「ゾディっっ!!野嵜ぃっっ!!!」

渾身の力を振り縛って、火ょうが炎の塊の中に飛び込んだ。



こんにちは。瑛彪・玄彪です。

ようやくルビ機能の使い方を会得して、今日、全部分の読みにくそうな漢字にに仮名を振りました。

一回振り仮名をつけた漢字は、以下付けないことにしたのでご注意を。

参考にしてください。


はぁあ〜、やっとここまで来れた! ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。いよいよ次が一章ラストになります。


どうぞ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ