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1-1 闇
月のない夜だった。
春の穏やかな風が、まだ冬のにおいを残す夜の闇を、そっと撫でていった。
その風を避けるがごとく、闇の深いところに彼らは潜んでいた。
切れかけた電球がしがみつく電信柱の後ろ、
こんもりと茂る植え込みの中、
乗り捨てられた車の下、、、
影という影の中で、彼らは皆、息を殺して潜んでいた。
そもそも彼らは息をするのだろうか。
彼らは本当に存在しているのだろうか。
そう疑ってしまうほど、彼らの気配は希薄だった。
しかし、彼らは確かに存在した。
そして、彼らは待っていた。
影に潜みつつ、下される指令を待っていた・・・。