第十九章:アリシアとアスタロテの本音
今回はアリシアとアスタロテの二人にとって重要な回です!
お見逃しのないように、注意してください!
ドラゴン形態で寝ていたアスタロテは急に寂しくなり、
人間形態に戻ってアリシアが、
寝ているテントの中に入ってきた。
「アリシアよ」
「起きているか?」
「なあに?」
「アスタロテ」
「起こしてすまぬ……」
「平気よ」
アスタロテは、
アリシアの寝袋に入ってくる。
「改めて余のつがいにならないか?」
「じゃあ私、本当に奥さんになるの?」
アリシアは受け入れて頬を撫で始める。
「まあそういうことじゃ」
「余はもう多くを失いすぎた」
「あの子が助かったのは、」
「アリシアのおかげだ」
ベビーベッドに置かれている卵を、
切なそうに見つめる。
「感謝してもしきれぬ」
「ずっと人間は裏切り者で、」
「卑怯な奴らだと思っていた」
「だがアリシアのように善い人間もいる」
「我々ドラゴンは……」
「神々との戦いや種族同士の対立……」
「そんなことを何千年と学ばずに……」
「繰り返してきた大馬鹿者達だ」
「同胞たちも数が少なくなって……」
「……ほとんど残っていない」
「ドラゴンは長生きするが……」
「アリシアはたった数十年だ……」
「余は本当に一日で弱くなった」
アリシアを壊れ物のように、
優しく抱きしめるアスタロテ。
その手は震えていた。
「あの子以外にも失うものができて……」
「怖くて仕方がない」
「アリシアに出会って……」
「幸せを知ってしまった」
「そなたの寿命が尽きるまで……」
「余をそばに置いてくれないか?」
「なんだかそれって……」
「改めて結婚のプロポーズみたいね」
「いいわよ!」
「感謝する……」
「アリシア」
「最初の出会いこそ最悪だったが……」
「……まさか一日で最愛の人になるとは」
「世界はよくわからないのう……」
アスタロテは恥ずかしそうに視線をそらす。
「そうね」
「これからあと何十年かわからないけど……」
「よろしくね」
「うっ……」
アスタロテは感極まって、
大粒の涙を流し始める。
「大丈夫!?」
「余も本当に軟弱になったな……」
「情けない」
「ううん」
「アスタロテは人間の心が、」
「分かるようになったのよ」
「そうか……」
「これが愛なのだな」
「本当に良いのか?」
動揺して変な話し方に戻るアスタロテ。
「大丈夫よ」
「一緒に生きていくの」
「この屋敷でね」
「そうだな」
「アリシア……」
「愛してる」
「私もよ」
「ドラゴン形態だと大きすぎて、」
「屋敷の裏山でも小さいかしら?」
「わりと居心地はよいぞ」
「たとえ世界や同族すら敵になっても……」
「守り抜いてみせる」
「かっこいいわね」
「期待してるわ」
「ねえ、アスタロテ」
「結婚式は挙げないの?」
「ゴハッ……」
「何じゃと!?」
「余を何歳だと思っておる?」
アスタロテはさすがに動揺し、
顔が真っ赤になってしまう。
「うーん、一億歳だったかしら?」
アリシアはとぼけてわざと間違える。
「食堂でも言ったが……」
「五千歳じゃ……」
「もうおばあちゃんだね」
「そうじゃの」
「でもこの赤い綺麗な尻尾かわいいよ」
「そんなことを言えるのは、」
「世界でお主だけだな」
「普通は逃げ出してゆくぞ」
「だってまさか愛しの人が、」
「ドラゴンだなんて……」
「思わなかったし」
「あの化け物執事は?」
わざとらしく震えながら聞く。
「シアンは……」
「言葉では説明できないくらい大切な人」
「もうお父さんとお母さんは……」
「死んじゃったし……」
「残った家族は……」
「ガランドおじいちゃん」
「ベアトリス叔母さん」
「あと一応クララもね」
「すまぬ」
「余としたことが……」
「アリシアを傷つけてしまったな」
「大丈夫よ」
アリシアはアスタロテに、
優しくキスした。
「キスはくだらないと、」
「思っていたが……」
「改めてアリシアが、」
「相手だと全然違うぞ」
「ねえ」
「どうやって生きていこうか?」
「まさかドラゴンが奥さんに、」
「なるとは思ってなくて……」
アリシアはアスタロテの頭を、
撫でながら考えている。
「余も同じだ」
「恐らくドラゴン族で、」
「初の異種間婚姻だと思うぞ」
「世界を平和にできるね」
「二つの種族の架け橋になれそう!」
「残った馬鹿なドラゴンたちも……」
「これで暴れたりするのをやめるか……」
「微妙なところではあるがな……」
「でもきっかけにはなるかな?」
「そうなればいいな」
「あの勇者のような連中も減るだろう」
「うん」
「アスタロテは悪くないよ」
「そんなこと言うな……」
「余はお主が考えているより……」
「酷いことをしてきたのだ」
「元は邪悪なドラゴンじゃぞ!」
「はっ……」
「すまぬ……」
「平気よ」
「それだけ真面目に、」
「考えてくれてるのよね?」
「もう自分を責めないで……」
「一緒に生きてる時は、」
「幸せだけを考えて?」
「ああ……」
「アリシアは生粋のドラゴンキラーじゃな」
「もうなにそれ?」
「世界最強クラスのドラゴンを誘惑して……」
「赤髪碧眼の人間形態に大喜びし……」
「あまつさえ妻にするとは!」
「伝説の聖女として歴史に名前を残すな!」
アスタロテはゲラゲラと笑い始めた。
「生意気なドラゴンさんには!」
「尻尾をくすぐる攻撃よ」
「おー、かゆいわ」
「じゃあここは?」
「つけ根をグリグリします!」
「気持ちいの〜」
「良いマッサージじゃ」
「もうこうなったら最終兵器ね!」
頬を膨らませて、
拗ねたような顔。
「なんじゃ?」
「魔法でも使うのか?」
アスタロテはわざとらしく言う。
「アスタロテ」
「あなたを心から愛してる」
「誰よりも何よりもね」
「ずっと側にいて見守って!」
「私がシワシワのおばあちゃんになるまで!」
「大変なことも、」
「たくさんあったし……」
「これからも起きるかもしれない」
「でもあなたを幸せにすると誓います」
「だから近いうちに結婚しましょう?」
頬に優しく恥ずかしさを、
隠すためにキスして誤魔化す。
「お主は本当に卑怯じゃ……」
「余も決意せねばな」
「その……」
「アリシアを守り抜いて……」
「一緒に生きて死ぬことを誓うぞ」
アリシアはアスタロテの頬を、
瞬間的につまんだ。
「ダメよ」
「あなたは生きるの」
「私がいなくなったあとも……」
「あの子がいるんだし」
「今ここで誓ってよ?」
「もし寿命が尽きそうだったら、」
「同じお墓の場所で眠りましょう」
「それまでは何があっても生き続けるって……」
「あなたが勝手に死ぬのを私は許さない」
「母親として身勝手すぎるわ!」
「誓うぞ……」
「何があっても諦めずに生き続ける」
「残されたあの子とな」
アリシアの左手を握りながら、
優しくささやく。
「早く名前つけてあげないとね」
「全くじゃな」
「ベアトリスを名付け親に決めたぞ」
「いいわね」
「素敵じゃない」
「ベアなら……」
「いい名前をつけてくれるわ」
「それに新しい生き方を、」
「見つけられると思うの!」
「そうじゃな」
「ベアトリスは余と同じで……」
「何か復讐に取り憑かれておるし……」
二人が再びキスしようと、
顔を近づけた瞬間……
「二人とも……」
「聞こえてるわよ?」
ベアトリスは寝返りを打って、
二人を見つめる。
「起きておったのか!?」
「起きてたの!」
二人とも同じ反応をしてしまう。
「あれだけ熱愛トークを……」
「聞かされたら起きるわよ!」
ベアトリスはうんざりした顔で、
二人に注意したが……
「どこから聞いておったのだ?」
アスタロテは、
真っ先に聞き出す。
「最初からね」
「いやあああ……」
「諜報員の隠密盗聴スキルかの?」
「そんなものないわ!」
「恥ずかしい……」
「そうじゃな……」
「呆れたわ」
「まあ仲良しなのは、」
「良いことだけど……」
「夫婦漫才もほどほどにして……」
「寝なさいね!」
「名前の件は検討してくれる?」
「ベアトリス頼む!」
二人でベアトリスを左右から、
抱きしめて動けなくする。
「二人して暑苦しいわ……」
「わかったわよ」
「考えればいいんでしょ?」
「ありがとう!」
「ベアトリスよ!」
「余は嬉しいぞ!」
「はいはい」
「二人ともおやすみなさい」
「「はーい!」」
また仲良く同じタイミングで、
かぶってしまった。
「おやすみ」
「愛しのドラゴンさん」
「おやすみ」
「愛しのアリシアよ」
結局三人は寄り添いあって、
再び眠るのであった。
彼女たちの幸せな人生は続いていく。
なぜ二人でなければならなかったのか。
その理由が明らかになりました。
次回は急展開を迎えます。
ぜひ楽しみに待っていてください。
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