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夢の中で生きていた僕は、ある日目を覚まさなくなった  作者: 月白
第四章

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第二十八話

ただ、どこか違う。


重い空気。


ここに来るべきじゃなかったのかもしれない。


ドクン、ドクンと鼓動が強く波打つ。


「......やっと来たのね」


後ろから、待ちくたびれたような声。


振り向く。


そこには、一人の女が立っていた。


長い髪。


淡く光を帯びた瞳。


どこか人間離れした気配を纏っている。


「あなた......姉さんじゃないのね」


俺の顔を見るなり、あからさまに嫌そうな表情を浮かべた。


彼女はきっとーー


「......アルス」


俺が聞く前に、彼女はそう名乗った。


やはり。

アルカイアの時と同じだ。


ここでは、思っていることが伝わるらしい。


「姉さんって、どういう意味ですか?」


俺の問いに、アルスは面倒くさそうに答える。


「知らないの?私とアルケアは双子なのよ」


「......双子」


「あーあ、姉さんじゃないなら用はないわ」


肩をすくめる。


「むしろ何しに来たわけ?あんた誰?」


俺が説明しようとした、その瞬間。


アルスはすっと近づいてきて、俺の額に手をかざした。


「......っ!」


頭の奥を覗かれるような感覚。


「......そう」


「姉さんは、とっくに死んだのね」


一瞬だけ、悲しそうな表情を浮かべる。


ただ次の瞬間。


その顔は、歪んだ。


「私はずっと......ずっとここで一人だったのに」


何も言えなかった。


何を言えばいいのか分からない。


沈黙が落ちる。


「......始まりの地を探しているみたいね」


さっきまでの表情が嘘のように、

アルスはにっこりと笑った。


「......はい」


「ここが、その始まりの地よ」


「あなたが思っている通り、私が歪みを抑えているの」


やはり、そうだった。


胸の奥がざわつく。


「......ただ」


アルスは少し間を置く。


「そうね、実際見た方が早いわね」


軽い調子でそう言うと、アルスは目を閉じた。

まるで頭の中で何かを探すように。


「おいで」


と、両手を広げる。


......っ!


急に目の前に、靄のようなものが湧き出てくる。


「......ミツケタ」


「え......?」


現れたのはーー


湊の影だった。


「どういうことだ......?」


「もう、鈍いのね」


アルスはくすっと笑い、俺の耳元で囁く。


「私が、こっちから影をそっちに送ってるの」


背筋が凍る。


「どうしてそんなことを......?」


「うーん」


少し考える仕草をしてーー


「忘れちゃった!」


無邪気に笑う。


そのまま影へと近づいた。


「ごめんね。せっかく身体を盗んだ人、見つけたのにね」


そう言って、湊の影を拘束する。


「おい!何をする気だ!」


「何って」


くるりと振り返る。


「あなた、彼を救いに来たんでしょ?」


「だからーー交換条件を出そうと思って」


「交換条件......?」


アルスは微笑む。


「姉さんは死んじゃったんだもん」


「だからあなたのその身体に流れてる、姉さんの力を全部ちょうだい?」


思考が止まる。


「......何を言ってるんだ」


「この世界を、ひとつに戻すためには必要なの」


世界をひとつに戻す。


その言葉の意味が、ゆっくりと理解されていく。


「それって......」


「あら?聞いてない?元々この地球(ほし)はひとつだったって。

ひとつに戻せば私も自由になれるし。まあ、向こう側のみんなには犠牲になってもらうしか無いけどね」


軽い口調だった。


「それってルナリナのことか?」


「そうよ。元々みんな、こっちにいたんだから。当然でしょ」


この地球という世界が基盤だから

歴史がここまで発展していたのか。


それに、始まりの民。


すべてが繋がっていく。


「で?」


アルスが首を傾げる。


「力、くれるのよね?」


「......それはできない」


即答だった。


湊を見捨てるつもりはない。


でも。


世界をひとつに戻すなんて、そんなことーー


「そう」


アルスはあっさりと言った。


「じゃあ残念だけど」


手をかざす。


「待ってくれ!」


俺の声は届かない。


次の瞬間。


湊の影は、消えた。


「......そんな」


膝から崩れ落ちる。


視界が揺れる。


その場所を、ただ見つめることしかできない。


するとーー


「アハハ」


笑い声。


顔を上げる。


アルスが笑っていた。


「冗談よ。歪みの空間に飛ばしただけ」


一気に力が抜ける。


だが同時に、怒りが込み上げた。


「ふざけるな......!」


「だって、力をくれないって言うから」


涙を拭いながら、くすくす笑う。


「少しくらい楽しませてよ」


ーー狂ってる。


「ふう」


ひと息ついて、アルスは言った。


「じゃあ代わりに」


「あなたの身体、もらうわね」


「......は?」


唐突だった。


アルスは俺の額を軽く弾く。


「じゃあね」


「待っーー」


意識が、急速に沈んでいく。


光が遠ざかる。


声も、思考も、消えていく。


――――――――――


「......はっ!」


目を開ける。


そこはーー


レイシェルの館の客室だった。


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