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夢の中で生きていた僕は、ある日目を覚まさなくなった  作者: 月白
第四章

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第二十二話

地下室の空気は、重く静まり返っていた。


松明の炎が揺れるたび、書架の影が伸び縮みする。


セレナが差し出した本。

ーー始まりの民、アルケア。


古びた装丁。

ひび割れた革。

だが、不思議と朽ちてはいない。


「......読むぞ」


頁を開く。


そこには、こう記されていた。


はじまりの時、世界は一つであった。


命と影は混線し、存在は溶け合っていた。


人は争い、魔は人を喰らい、世界は常に崩れかけていた。




「世界が......最初は一つ?」


息を呑み、続きを追う。




そこに現れたのが、二人の女性。


ひとりはアルケア。

ひとりはアルス。


彼女たちには不思議な力があった。


二人は悟った。このままでは世界が壊れると。




彼女らは、世界を二つに分けることを選んだ。


こちらの世界と、向こう側。


だが、完全には断てなかった。


布と布を縫い合わせたように、

そのつなぎ目に歪みが生まれた。




アルケアはこの世界へ。


アルスは向こうの世界へ。


生き延びた人々もまた、二つに分かれた。




アルケアは歪みを鎮め、平和をもたらした。


人々は彼女を長とし、”始まりの民”と呼んだ。


恋をし、家族を作り、子を産んだ。




だが彼女は知っていた。


自らの命が尽きれば、歪みは再び現れると。


守る者がいなければ、世界は崩れる。




彼女は森で祈った。


すると、一人の妖精ーーエルフが生まれた。


アルケアはその存在に、己の力のすべてを託した。




力を失った彼女の銀の髪は、黒く染まった。


彼女は家族と共に森の奥へと姿を消した。




その後、時は流れる。


彼女がエルフへ託した力は、世界に静かに根を張った。




やがて、その力を強く宿した者のひとりが王となる。


王国が生まれ、


”ボーダーキーパー”という役目が定められた。




それでもーー


彼女の名は、やがれ忘れられていった。


歪みを知らぬ者も増えた。


それは平和の証でもあった。




私は、彼女に託された役目を果たした。


これで、彼女のもとへ行ける。




ただひとつ。


彼女が忘れられることだけが、悔やまれる。


ここに残す。


彼女が確かに生きた証を。




読み終えた俺の指先にかすかな熱を感じた。


まるで、本に奥から何かが脈打つような。


「アルケアは......種族じゃなかったのか」


ノクティアが呟く。


その時、背後から声がした。


「その本を......開いたのか?」


振り返ると、蒼白な顔のアルディオンが立っていた。


「どういうことですか?」


セレナが問う。


「その書は、代々誰も開けなかったのじゃ。

触れた者はおった。だが......」


その瞬間ーー


「アルディオン様!魔物の群れです!」


エルフ兵の叫びが響いた。


「持ちこたえられません!」


アルディオンは即座に決断する。


「ついて来なさい!」


地下を出て二階へ。


そこに描かれていたのは、巨大な魔方陣。


「転移魔方陣......!」


カイルが驚く。


外から、魔物の咆哮が響く。


「急げ!」


俺たちは円の中へ飛び込んだ。


光が弾ける。


視界が白に染まる。



次に目を開けた時。


そこには、整然と並ぶ白木の家々と、澄んだ森の空気があった。


「......ここが」


俺の声に、ノクティアが静かに呟く。


「リーフェル」


エルフの村だった。

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