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夢の中で生きていた僕は、ある日目を覚まさなくなった  作者: 月白
第三章

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第十七話

「......ミナト、誰なんだ?」


カイルが俺に尋ねる。


「彼女がノクティアさんだよ」


「はじめまして」


カイルとノクティアは軽く会釈を交わし、自己紹介を済ませた。


俺たちは仕事部屋へ入る。


「おはようって、カイルにノクティアさん!?」


セレナが目を丸くする。


挨拶を交わした後、ノクティアが口を開いた。


「手紙を読んだ。私も調査に同行しようと思って戻ってきた」


それに続くようにカイルが言う。


「俺も護衛として、それからミナトの師匠として同行させてもらう」


「......そう。二人が一緒なら心強いわ。ありがとう」


セレナは柔らかく微笑んだ。


俺は本題を切り出す。


「早速なんだが、ノクティアさんの故郷へ向かいたい」


一瞬、空気が静まる。


「手紙にもあった話だな」


ノクティアは淡々と続けた。


「......ディストラは10年前、魔物の襲撃を受けた。

村は壊滅した」


「壊滅......?」


セレナが小さく呟く。


「助かった者もいるだろうが、住人のほとんどは戻らなかったと聞いている」


部屋の空気が重く沈む。


「今は廃村だ。だが道案内はできる」


俺たちは顔を見合わせ、うなずいた。


「行けば、何か手がかりが掴めるかもしれない。案内を頼む」


「分かった。準備をしよう」


――――――――――


ディストラへの道は遠い。


途中までは馬車、その後は森を抜ける長い旅になる。


揺れる馬車の中で、カイルが尋ねた。


「ノクティアさんの故郷は、どうしてそんな森の中にあるんですか?」


「敬語は好きじゃない。それに皆、ノクティアでいい」


少し視線を落としてから、彼女は続ける。


「......ディストラの民は、アルケアという種族の子孫だ。

エルフ族とも交友があった」


「アルケア、か。聞いたことないな」


カイルが顎に手を当てる。


「私も、すべてを知っているわけじゃない」


カイルはふと、ノクティアを見つめた。


「それにしても、ノクティアはいくつなんだ?

ミナトから12年前に初めて会ったって――」


「ちょっと、カイル!女性に年齢を聞くのは失礼よ!」


セレナが割って入る。


「構わない。私は半分エルフの血を引いている。他の者より長命だ」


「えっ!?そうだったの!?ずっと若いままだから美の秘訣を聞こうと思ってたのに!」


「おいおい、セレナだって十分――」


その時、馬車が止まった。


「日が暮れます。ここで野営を」


御者が告げる。


見通しの良い平原だった。


俺たちはテントを張り、焚き火を起こす。


セレナが料理をし、ノクティアは御者と明日の道を確認している。


「なあ、ミナト。疲れてないなら稽古つけてやろうか?」


「いいのか?」


「おう」


俺たちは少しキャンプから離れ、

落ちている木の枝を拾い、向かい合う。


「まずは構えだ――」


説明は少ない。


見て、感じて、覚えろ。


それがカイルの教え方だった。


一時間ほど経ったころ。


「お待たせ。夕飯にしましょう」


俺たちは焚き火の周りへ戻る。


食事の最中、セレナがふと思い出したように言った。


「そういえば、ミナト。向こう側には行けてないの?」


「ああ......それなんだけど」


俺は息を整える。


「記憶を取り戻してから、毎夜向こう側に行けてる」


セレナがむせる。


「な、なんで言わないのよ!」


「ごめん!忘れてた。でも記憶はちゃんと覚えているから」


「......もう」


安心と怒りが混じった顔だった。


カイルが問う。


「変わったことは?」


俺は、時間のズレのことを話した。


空白の一年が、影の中の夢だった可能性。


翔のことはあえて伏せた。


「なるほどな。歪みが時間にまで影響しているのは確実だ」


焚き火の火が揺れる。


「明日も早い。休もう」


ノクティアの声で、その夜は終わった。


――――――――――


横になる。


最近、湊の影を見ない。


記憶を取り戻したことで、繋がりが絶たれたのかもしれない。


それとも――

俺を探して、歪みと化しているのか。


俺たち以外にもボーダーキーパーはいる。

だが歪みは、静めたところで消えはしない。

いずれまた、どこかに生まれる。


だがーー

誰も魔物の犠牲になっていないことを願いながら。


俺は、静かに目を閉じた。


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