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夢の中で生きていた僕は、ある日目を覚まさなくなった  作者: 月白
第三章

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第十六話

目を開けた瞬間、ルナリア城に戻ったと分かった。


向こう側での出来事も、今までの記憶も、すべてはっきり覚えている。


俺はゆっくりと体を起こした。


身体は軽い。

だが、眠気が少し残っている。


この感覚、前と同じだ。


......そりゃ、全部覚えたままなら頭も休まらない。


早く静めないと、俺の身体も持たないかもしれない。


その時、扉が勢いよく開いた。


「ミナト、大変よ!歪みが発生して、住人の一人が消えたみたい。街で騒ぎになってる」


セレナが慌てた様子で部屋に入ってくる。


「何だって......急いで向かおう」


俺たちはすぐに城を飛び出した。


――――――――――


現場は城外れの牧場だった。


人だかりができ、ざわめきが広がっている。


歪みはすでに消えたのだろう。

気配は感じない。


「急に消えたんだって」

「魔物に襲われたんじゃないの?」

「ただの家出だろう」


”歪み”を知らない住人が噂話をしている。

無理もない。


人混みをかき分け、小屋の前へ向かう。


ドアの横に、家畜が横たわっていた。


......魔物化している。


皮膚は黒く変色し、目は濁っていた。


小屋の中へ入る。


少女と、ひとりの男がいた。


「お母さんが......」


少女は泣きながらそれを繰り返している。


消えたのは、この子の母親らしい。


「あなたは?」


セレナが男へ視線を向ける。


「私は、たまたま近くを通りがかった冒険者でして......」


魔物が小屋のドアを壊そうとしていたのを目撃し、討伐したという。

中に入ると、少女が震えていたらしい。


「では、私はこれで」


冒険者は軽く頭を下げ、小屋を出ていった。


セレナが少女の前にしゃがむ。


「ゆっくりでいいわ。話せる?」


頭を優しく撫でる。


少女は震えながら語り始めた。


牛を放牧していたこと。

急に群れが暴れ出したこと。

父親が逃げた牛を追いかけに行ったこと。


「お母さんは、私と一緒にいたの」


少女は続ける。


一頭だけ逃げ遅れた牛が、突然恐ろしい顔になり襲ってきた。


母と少女は小屋へ駆け込もうとした。


ドアを開けた、その瞬間。


ーー母親が、目の前から消えた。


その後の記憶は曖昧だという。


「話してくれてありがとう」


セレナが静かに言った。


その時、小屋の扉が勢いよく開いた。


「クレア!!......アリー!この人たちは?

母さんはどうした?」


少女の父親らしい男が息を切らしている。


アリーが少女。

クレアが母親だろう。


俺たちは事情を説明した。


男は崩れ落ちるように膝をついた。


「そんな......俺が牛を追いかけなければ......アリー、怖い思いをさせてすまない」


少女を強く抱きしめ、涙を流す。


俺は二人の前に立った。


「クレアさんは生きています。俺たちが、必ず見つけます」


真っ直ぐに目を見て、深く頭を下げた。


小屋を出る。


外の空気が重い。


「......お父さんも、生きてるよね」


セレナが小さく呟く。


「ああ」


俺は遠くを見つめる。


「ずっと、あのわらべ歌が気になってる」


はんぶんびとはさらわれる。


「クレアさんは、はんぶんびとだった。

なら、殺されたんじゃない。連れていかれたんだ」


セレナが静かに頷く。


「......とりあえず、ノクティアさんの返事を待ちましょう」


俺たちは城へ戻った。


――――――――――


数日後。


仕事部屋へ向かうため、部屋を出る。


「おーい」


後ろから声がする。


振り返ると、カイルが立っていた。


「カイル?なんでここに」


歩み寄りながら、カイルは言う。


「俺も歪みの調査に混ぜてくれるって話だったろ?

だからセリオン王に、ボーダーキーパーの護衛として働かせてほしいって頼んだ」


「王直々に?」


「当たり前だろう」


腕を組み、少し得意げな顔をする。


どうやって頼み込んだのか、少し見てみたかった。


「そんなことより、いつ調査に行く?もう待ちきれない」


「ああ、それなんだが。ノクティアさんからの――」


「待たせてすまない」


背後から声が響く。


俺は思わず振り返った。


そこに立っていたのはーー


ノクティアだった。


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