表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子がシンデレラを追ったわけ  作者: 相内 充希


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/2

1.ループ

今作はカクヨムの公式企画、書き出し指定「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」用に書いたものです

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


「うわあっ!」


 ガバッとベッドから起き上がった俺は、夢の余韻に心臓をバクバクさせながら悪態をつく。まるで全力疾走した後みたいに肩で息をしながら、ここがどの現実(・・・・)なのかを確認するよう部屋を見渡した。


 早朝の薄明かりに浮かぶ見慣れた調度品。天蓋付きのやたらデカいベッド。

 自分の両手を見て、がくっとおろす。鏡を見なくても自分が金髪碧眼であることは間違いないだろう。


王子(おれ)のままだ……)


 安心したはずなのに、同時にひどく落胆した。その気持ちを飲み下すべく、サイドテーブルに置かれた水差しから注いだ水を一気にあおって、ようやく人心地つく。


 起きるには早すぎるが、もう一度寝なおす気にはなれない。目を閉じてしまったら、目覚める前に浮かんだ【→もう一度やりなおしますか?】の文字がちらつく気がするのだ。

 その問いかけに毎回、鋭い心臓の痛みに耐えながら「する」と答えて意識を失い、夢から醒める。それをもう9回繰り返している。

 ――しかも最後に見えた数字が、今回2から1になったのは間違いない。


「あと1回」


 もう1度失敗したら――俺はもう目を覚ますことはないだろう。

 声に出さずに呟き、ごろんと大の字になる。


 こんなことを誰かに聞かれたら、夢なら死なないだろうって言われるに違いない。俺自身、3回目まではただの夢だと思っていたんだ。


 この国の第二王子として生まれ、21歳まで何不自由なく生きてきた。

 王太子である兄や、今は隣国に嫁いだ姉と年が離れているせいか、多少甘やかされてきたかもしれないが、熱心な教育の賜物で文武共にそこそこ優秀。

 見た目は「THE・王子!」って感じの、兄とは違うタイプのイケメンだ。


 ん? 自分で言うなって?

 言うさ。

 だって宮城史郎の目から見れば、今の俺はとんでもなくイケメンなわけだよ。

 史郎だってまあまあ男前だったけど、一般人レベルとハリウッド俳優並みの差があると言えばわかるだろうか。


 なお宮城史郎というのはこの王子の中の人、つまり俺の本当の名前だ。いや、前世が正しいのだろうか? よく分からん。

 ただ、王子として生きてきた自分と日本人だった自分が、ひとつの体に混在しているという感覚があるだけ。

 そして史郎の記憶は、この夢を繰り返すごとにハッキリしていくのだ。

 

 夢はいつも俺の誕生日のちょっと前から始まる。

 王族にとって節目にあたる年齢がいくつかあり、男にとって22歳はその1つにあたる。その為この年の誕生日は盛大に祝われることになっているのだが、そのメインイベントである舞踏会の招待状を送る最終確認をするのがこの頃なのだ。


 兄上は22歳の誕生祝いの席で婚約を発表した。だから国民からは、第二王子(おれ)もそうでは? なんて思われている節があるのは知っている。


 ところがどっこい。この時点の俺には婚約者どころか恋人もいない。

 身分も容姿も申し分ないんだから、モテないわけではない。縁談もしかり。

 事実、繰り返された夢の中では恋人や婚約者がいたこともある。というか、毎回いる。でも全員「違った」のだ。必要なのは運命の相手なのに。

 

「まずいよなぁ」


 こめかみあたりをガシガシ搔きながら、のほ~んと他人事みたいに呟く。


 なあ、運命の相手ってなんだ?

 どの相手とだって誠実に向き合って来たし、それなりに好きだという気持ちもあったのに、この呪いは解けやしない。

 心から愛する者同士の口づけでないかぎり、繰り返される時間。


 逃げ出しても意味がないことは、すでに経験済みだ。くっそ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ