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愛とは何か、ここで言う必要がありますか?

作者: 日奈子
掲載日:2025/12/08




「だからっ!私は、ギルバートのことを愛してるのっ!!あなたは、そうではないんでしょ?だったら、私に……」



学園のお昼休み時間。

食事を終え、午後の授業までの休息に充てるべきひと時に「ちょっとよろしいでしょうか」と声をかけられ、なぜか、感情的な少女に詰め寄られています。


適度に育った木々が木陰を作り、足元にはさりげなく香り高い草花が植えられ、光と風と香りの心地良い空間でひと時どころか長居したくなるようなベンチまで設置された、中庭。


図書館で借りた本を、食後に読むのにこれ以上相応しい場所はないと言えるのに、なぜ、私はこのような少女の相手をしなくてはならないのでしょう。


わたくしと同じように、食後のひと時を過ごそうとしていた生徒たちは、せっかくの時間を邪魔されたと不満気に去る人や、面白そうなことが始まったと興味津々な人など、まあ、とにかく、この後で話題になることは避けられないようですね。


「……わたくしに何かご用なのでしたら、簡潔にお話ししていただけるかしら?」


声をかけてきたかと思えば、わたくしの前で、もじもじしたり、あー、うー、と赤子のような声ばかり出すので、わたくしから促してみたら、あのような言葉が返ってきて──。


「ふうん?君に、どうしてほしいんだい?」


わたくしと少女の間に、現れたギルバート様は、言葉は少女の方に投げつつも、わたくしの隣に立ちました。


「ギルバート様!あの、わ、わたし、あなたのことを愛してるんです!その……ソフィア様は、ギルバート様のことを愛していないのでしょう?だったら、私が、ギルバート様を──」


「君は、ソフィアのことも、僕のことも、何も知らないんだね」


少女が何やら話している途中で、ギルバート様がそれを遮るように言葉を重ねます。

あまりよろしくない行動ですが、まあ、少女も落ち着いて話ができる相手ではないようですし、ここは仕方がないという場面でしょうか。


「な、何も知らないだなんて……私はっ、ギルバート様のことならどんなことでも知りたいと思っているんです!」


「うーん、それってさ、わざわざ、僕の婚約者であるソフィアに言うことかな?君が僕に何かの感情を持っていても、それは僕には関係ないし、ソフィアにも関係ないよね?」


「え……で、でも、ソフィア様は、婚約者なのに、ギルバート様と一緒に過ごすことも、見つめ合って微笑むようなこともないですし……お二人の関係はあまりよろしくないと思って……」


「それが君に何の関係かあるの?」


あらあら。

少女は、ギルバート様のこと、本当にご存知ないのですね。


「……え?そんな風に言わなくても……」


「じゃあ、どんな風に言えば分かるかな?僕とソフィアが、婚約者としてどう振る舞おうが君には関係ないし、そもそも皆が見ている学園内で、婚約者だからと恥ずかしい振る舞いをするほど、僕は幼稚ではないつもりだよ。そのことを理解しない幼稚な生徒が、この学園にいるのは知っているけど、まさか直接ソフィアに言いに来るような幼稚で品の無い生徒かいるとは思わなかったよ……さあ、行こうかソフィア」


「ええ、ギルバート様」


彼にエスコートされ、わたくしは中庭から離れます。

後ろで、少女が何やら言っているようが、耳を傾けるだけのことではないでしょう。


「まったく、変な生徒に絡まれていると聞いたときには驚いたよ。せっかくの読書時間を邪魔されて気を悪くしていないかい?」


「いいえ、ギルバート様に守っていただきましたもの。読書以上に楽しい時間でしたわ」


「それにしても……どうして、愛してるということを、人前でああも堂々と言えるのだろうね。それは本当に愛なのかも分からないような幼稚さでさ」


「ふふ、物語に憧れた子供のようでしたわね。……もし、わたくしも、あのように幼気に愛を語ったら……ギルバート様?」


会話が途切れ、ふと隣を見ると、目元どころか全身を赤く染めたギルバート様が、エスコートしていない手で顔を隠されていました。


「……ソフィ。そういう言葉は、二人だけの時に…………頼むから」


そうなのです。

ギルバート様は、わたくしからの愛情をたっぷりと受けた結果、こうした話題になると人前に出られないような状態になるので、学園内ではあえて適切な距離感で過ごしていたのです。


親しい友人達には、いつものことと見守ってもらえても、何も知らない生徒には、先ほどの少女のように誤解されるようですね。


「ギルバート様、午後の授業はお休みされますか?」


「…………うーん、このままソフィと一緒にいたいけれど、授業にはちゃんと出るよ」


「ふふ、では、また放課後に」


そう告げて、午後の授業の教室に向かうわたくしの耳元に、ギルバート様は言葉をひとつ落としました。


「ああ。放課後、二人きりで、愛を語ろう、愛しいソフィ」


「愛している」と言葉にすることも大事だけど、それを言う相手と場面も大事というお話。


午後の授業、ギルバートは鍛錬の時間なので、高ぶる気持ちを発散させました。 ソフィは、通常モード。


放課後、ギルバートはめちゃくちゃソフィに甘えて、ソフィからの愛の言葉で真っ赤になりつつ、愛を返すのです。

もちろん二人きりで(R15の範囲でね)


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