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7.オハヨウは穏便に


『………………。』

『オイ、大丈夫か?』

『……………………………。』


気が付いたら卵の中(見知らぬ場所)で、

次に気が付いたらちょっと()()な女性に(多分)

高いところから落下(紐なしバンジー)させられ…

墜落死(ぺちゃんこ)は免れたがアイギス(未知の人)に抱えられ、有無を言わさず拉致(ドナドナ)され…(←イマココ)


………全くもっての不可思議(わけわからん)状況に

流石に頭も混乱しようものである。


(何、月島(同僚)の呪い!?

イヤイヤ、仕事手伝ってあげたのに呪いは無いデショ!)


……いや、まず落ち着け、資本主義の日本(現代の文明的日本)に呪いは無かろう…うん、無いはずである。


(え、誰も説明してくれない上に卵?

っつーーー何の因果で卵!?ナニコレ罰ゲーム?)

『……………………………。』


思考の上では脳内大騒ぎだが、卵(?)の中で無言になるのもやむなし…



…なのだが、アイギス(周り)から見れば

急に反応を無くした卵。

先ほどまで忙しなく鳴き声を発していた何かの生き物であろう卵。


それが沈黙すれば慌てふためくのも道理。

一瞬最悪の事態(中身死亡)が頭をよぎり…


『おい、大丈夫か?』


真剣に中身に問うも反応はなし...


『……………………………。』


まるで屍のようだ…


『――――――まて!まて、おい、さっきまで生きてたよな!?ヤベぇ、帰路(かえりみち)に時間かけすぎたか!??勘弁してくれ…!オイたまご!返事しろ!!』


と、思わず雪山遭難者を叩き起こすかの勢いで

抱えた卵を揺さぶりかけてハッと我に返り

無音の卵を抱え直して右往左往。


駐屯地(ベース)を目の前にしてあわや任務失敗(目標死亡)の大惨事か、誰か助けになりそうな者が居ないか…


…ぉ……あ!!!よ、ヨグ!!』


と、絶妙なタイミングで救世主(何とかしてくれる人)を発見。


したのだが、


『何を喚いておる、狗っころ。』

『い、ぬ…じゃねぇよ!!!何回言ったよ、俺は月狼(フェンリル)であって狗じゃねぇ(怒)』

『ふむ、そうであったかな?まぁ差程変わらぬわ。200有余年(その程度の年)しか生きておらぬ若造など皆()も生え揃わぬ童の狗っころよな。』

『っつ、このクソじじい!!てめぇこそ大戦前から生きてて(長生きしすぎて)耄碌したんだろ!!聞いた事も記憶に残らねぇんじゃ痴呆(ぼけ)がいよいよはじまったか!!』

『はっはっは、今時の狗っころは上下関係(れいぎ)を知らぬか。これは愉快。躾が必要かの。』

『こ~の~じじぃ~(怒)』


相性、いや、タイミングの問題か

当初の目的(卵の中身救出)は忘れられ…

卵の外(まだ見ぬ世界)が何やら騒がしくなったが…懇切丁寧に現状を説明してもらえるわけもなく…


(…………もう、もう一回寝よう…)


波瑠はやさぐれて眠るそうだ。


(起きたらまた何か変わってるかもしれないし…)




※※※※※※※※※※



『して、狗っころよ。』

『~まだ言うか!!』

『いや、ヌシが抱えておるモノの気配がの。ちと気になったが故に。』

『あ゛ーーー!!!!ヤベ!!こいつ、これ、卵っつ!!』

『ふむ、(門をくぐったか…)見事な魂子(たまご)であるな。』

『そう!スゲェまんまるで……じゃねェ!!?中身が死ぬ!さっきまで鳴いてたのに急にだんまりしちまったんだ!!』

『然もあらん。(鍵も持たずに渡ったか……いや、この命の焔(オド)は…)()()()()()()のだろう。恐らくは………』

『!恐らくは!?無事なのか?これ、中身大事ないのかよ?!!』

『吾の見立てでは……』

『見立てでは!!?』

『寝ておるな。(何とも豪気な子じゃな…)』

『………は?』

『空から降って疲れたのじゃろう。一度生命の揺籃(マナポッド)に入れて休ませてやれ』

『寝て…る?』

『何にせよ、ラグザ(竜もどき)に報告せねばならぬのではないか?狗っころよ。』

『………忘れてた……』

『大方ヌシの事、その魂子(たまご)を一見、「新しい騎獣が増える」、と、早とちりしおったのだろう?本来は吾が星詠みした(よんだ)事象を見聞きし、報せる為に出たのではないのか?』

『!き、騎獣じゃねぇのか?』

『この期に及んでも騎獣(それ)か。』

『生き物なんだろ!?』

『是。(正確には()()()()()()おらぬが…)ふむ、それほど気になるならば…』

『お?』

『その魂子(たまご)()()()()やろう』

『(生かす?)おぉ。』

『貸しやれ。』

『おぅ。』


そっとヨグに卵を渡すアイギス。


(ふむ、命の焔(オド)は足りておるか…では殻に包まれた姿(このなり)現し世(この世界)の仮身か…)


卵を受け取るなり無言になったヨグを固唾をのんで見守るアイギス。


【吾、門にして鍵。全にして一、 一にして全なる者。幽けき(かそけき)命脈の絲と魂の緒を結び、命の焔(オド)を現し世に繋がん】


ヨグの口から出た詠唱の意味は不明であったが、途端卵は発光し…


ばきり、と音をたてて砕ける。


『!!!!』

『(なんと……これは…)』

『っ!』


光を集め重ねたように柔らかく色を変える真珠層(パール)のような体表。

丸っこい身体から小さく愛らしい手足と長くしなやかな尾がのびるその姿―


(よほど()()()()喚ばれたか。)


『~~~~っつ、』

『………ほれ、此でよい。』


ひょい、と手を開いたまま固まっていたアイギスに()()()を渡すヨグ。


数秒後―


『か、カワイイィィィィーーーー!!』


駐屯地(ベース)に大絶叫が響き渡った。


(ふむ、今世は面白くなるやもしれぬな…)

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