5.え、自分ファンタジーなアレなんですか…?
『………るぅ(ハァ)…』
『お、鳴いた。』
『ぱる(はい)、ぱるるぅ(そうですね…)』
『ハハ、よしよし、安心しろ、おっちゃんが駐屯地に連れて帰ってやるからな!』
『ぱぱるぅ(ウチ)、ぱるぅぅぱる(それ、何処でしょう…)』
『に、しても不思議だなァ。ヨグの星詠みで「降る」のは予測できたが…卵とは畏れ入ったぜ。』
『るるるぅ(たまご…)、ぱるるるるぅ(冗談、と言ってほしい)』
『ん?大丈夫だぞー、たまごちゃん。
おまえ迦楼羅かそのへんの仔だろう?
もし鳥じゃなくてもおっちゃん飛翔竜とか地竜の世話も出来るからな、安心して生まれてこい!』
『ぱる(はぁ…)』
アイギスのおかげで地面に激突は免れたものの…
一難去ってまた一難。
波瑠が今まさに居る閉鎖空間。
誰が想像しようか…気が付いたら卵生の生き物を。
誰が想像しようか…会話しようにも『ぱ』と『る』と『う』しか発音できない状況を。
『………ぱぱるぅ(誰か…)』
『ん?何だ?』
『ぱるぅぅぅぅぅぅ(説明してぇぇぇぇぇ)』
『おー元気イッパイじゃねぇか!!いいぞーその調子だ!!』
噛み合わない会話程虚しいものはなし。
波瑠の気も知らず、ウキウキ卵を抱えて駐屯地に戻るアイギス。
『ハッハァ!!騎獣が増えるかもしれねぇし、こりゃ大収穫だぜ!』
一方憐れな子牛状態される波瑠の心境は此に尽きた…
(神よ、こういう状況はもっと若人に与えて下さい…三十路にはキツイです…)
※※※※※※※※
行きはよいよい帰りはナンとやら…
という童謡があるが、木々をなぎ倒して来たアイギスには帰りもよいよい、何の苦もない帰路。
鼻歌まじりに足取りも軽く、腕に抱えた丸く白い卵に時折話しかける。
『たまごちゃん、もうちょいでオウチだぜ~』
『……………ぅ』
『ん?あれ、鳴き声が小っせぇな…たまご?たまごちゃん?たまちゃーん?』
『…るぅ(ハイ…)』
『どしたー?腹減ったのか?』
『ぱるぱる(おなか…)』
『どっか痛いのか?』
『るぅるぅぅぅ(いたい…)』
『………困ったな…此処で殻から出すわけにもいかねぇ。たまごちゃん、後もうちょい辛抱してくれや…』
『……ぅぱるぅ(がんばります…)』
今まで数々問題あれど割合寛容(?)にやり過ごして来た波瑠ではあるが、流石に理解の範疇とストレスが限界点を突破した模様で…
(え、私卵なの?、というか何の卵?え、この人さっき何か言って…なかった?鳥?いや、ワイ、ワイバーンとか、アースドラゴンって…イヤイヤ待って卵も有り得ないけどワイバーンって何?ドラゴンって良くRPGとかファンタジーな話に出てくるおっきいあれ!?)
『しかしよォ、オマエの親はどうしたんだかな?鳥にせよ竜にせよ「渡り」に卵抱えて往くわけねぇし…空から降って来たっつーことはアレか、野分で吹っ飛んだのか?
?おーいたまごちゃん、よ?生きてるか?』
(…………いや、うん。
流石にコレ夢オチにして欲しいんですけどぉぉぉーーー!!!)
卵の中心で盛大に混乱しているようだ…




