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23.君の名は、海の宝石(パール)


波瑠(龍の子)を無事生命の揺籃(マナポッド)に寝かせ、もっと構いたい!と駄々を捏ね、ぶつぶつ文句を垂れる大人共を回収して治癒師の天幕に戻って来たフラッガ。


そこにはヨグ、イリシュネア、エンキルが先程と変わらず話し込んでいたのだが、何やら深刻そうである。


『本当に…籟暭(らいごう)の気配がするな…』


空中を見つめながら、何事かをエンキルに言うイリシュネア。


『だ~か~ら~言うたじゃろ~が~。外身の~姿形は~ほぼ似ておらん~が~、あれ程の~()()持ちは~北の桓雄(ファヌン)の~中では~籟暭(らいごう)しか~おらん~。』

『………そう、なのだがな…。』


エンキルの発言を聞いてヨグも龍の子を寝かせた天幕がある方向の気配を探っているようだ。


『………確かに彼奴(あやつ)の気配に近い。其と言われれば然もあらん…。』


波瑠の気配を探った後、納得しながら顎に手をやるヨグ。


その姿を横目にエンキルが首を傾げる。


『じゃが~子が生まれた~など~聞いて~おらん~が~な~。子が~生まれれば~我等の~元に~真名を~授けるために~必要な~緣の枝(ノードゥス)を~くれ~と、誰ぞ使いが~来るはずじゃが~。混沌の~おぬしの~十八番(とくい)の~()()()で~なんぞわからんのか~?』

『…………、そも、吾が星詠みで()()()()()()()()()と出た故、仔細を確めんと狗に伝えたのよ。だがな、()と出ておったのだ。龍の子が降るなど流石に判らぬわ。』


そんなやり取りをする2人の…更に横でイリシュネアは腑に落ちなさそうに唸っている。


『………………むぅ。』

『シュネーは~まだ~あの子の親が~籟暭(らいごう)と~納得できんの~か~?』

『いや、確かに彼奴(あやつ)の気配が強い、強いが…あんなに可愛らしい子の親が()()だと思うとな…』

『たしかに~()()男が~親とは~信じがたいがの~。』


どうも…

3人の口振りからするに、龍の子の父親はとんでもない(じんぶつ)らしい。


『お祖母(ばあ)様、龍の子を休ませてきました。皆様は何をお話されているのですか?「らいごう」とは何方で?』


そんな3人の様子を天幕の入り口から入ってすぐの場所から窺っていたフラッガだったが、話の切れ目に波瑠を休ませた事の報告をし、今まさに話題になっている人物について詳しく尋ねるために会話に割って入った。


『フラッガ、ご苦労だったな。龍の子はどうだ?大事ないか?』

『はい、今のところは。夜が明け次第、胃の腑を整える薬を飲ませて何か食事をとらせようと思います。エンキル様が先程マルームを下さるとおっしゃられてましたし。で…その、()()()()という方は…』


聞き慣れぬ響きの名前の人物はどうやら祖母(イリシュネア)たちには既知の人物らしい。


『ああ、おまえ達の世代の者はあまり知らぬか…籟暭(らいごう)は…先の大戦で生ける伝説とまで言われた龍。現、煬帝城の主にして桓雄(ファヌン)(おう)。………まぁ、我等から言わせれば脳筋の融通のきかぬ石頭な男だがな…。』


さらりと答えたイリシュネアの言葉に、目が丸くなる若い世代一同。


『イリシュネア様、まさか……まさか、あの子の親が()()「らいごう」殿だと?』


恐る恐る尋ねるガンウェイン。


『いかにも、治癒師殿。我等は皆彼奴の命の焔(オド)を知っているのだが、あの子が持つ命の焔(オド)が大層似通っていてな…。十中八九、あの男が父親だと思うのだ。』


未だに腑には落ちていないが、事実ではあるのでそのようにガンウェインに告げるイリシュネア。


『!!では、龍の子は煬帝城から落ちて来たのですか!?』

『……一度星詠み殿からは伺ったが…何故そのような事に…』


フラッガとラグザもその言葉に驚きを隠せない。


『我らも~そのあたりが~わからんから~話して~おったのよ~。』


のんびりとしたエンキルの声が話を続ける。


『龍はの~子が~生まれると~我ら~樹精人(エント)の~もとへ~名付けの~儀式をするために~緣の枝(ノードゥス)と言う~精霊樹の~枝を貰いうけに~来るのよ~。じゃが~近年は~そのような話はないからの~。』

『!!じゃあ()()()は…』


アイギスがエンキルに何かを言いかけたのだが、それをヨグが遮った。


『…所で狗は先程より何を言っておる。何か、ヌシは子に名を勝手につけたのか………』


呆れを多分に含んだヨグの言葉に、ハッと今気がついたかのようにラグザとガンウェインがアイギスを見やる。


『アイギス、()()()というのは…』

『そういえば大分前から()()呼んでいたな…』


そんな2人に向かってアイギスは…


『あの子は白くてキラキラしてて、海の真珠(パール)みてぇに綺麗だろ?だから…パールだ。あの子の名前はパールって俺はひと目見て決めてたんだ。』


自信満々で胸を張って言い放った。


『…………狗っころ。吾の説教(はなし)を聞いておらなんだな。他所様(よそさま)の家の子に勝手に名をつけるでないわ…(此奴、もうすっかり子の父親気分でおるわ…)』


流石一番手で父親(パパ)の名乗りをあげた男であった。

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