22.やっぱりおまえ(同僚)か、原因は。
診察を終えた後…
フラッガというお兄さんに抱えられて、別の天幕に移され、ふかふかに調えられた…一見するとコールドスリープのカプセルを思わせるベッドに寝かされたのだが…
正味あれだけ寝倒したらぶっちゃけ少しも眠気は来ない。
『ぱるぅ…(また寝ろ、と…)』
ふかふかに半分埋もれながら、眠れないのでごそごそと這ってカプセルベッドの縁によじ登るようにして顔を覗かせて周りを観察してみると…
『ぱるぅ(おお?)』
同様のベッドのようなものが5台程並んでおり、
お隣は光の繭に包まれていて誰かが眠っているようだ。
『ぱぁるぅるぅ(これがまなぽっど?)』
しげしげと外を観察していると、後ろからフラッガの笑い声がする。
『ふふ、隣が気になるの?もう少ししたら夜明けだ。生命の揺籃で回復して、お薬を飲んでから体の様子をみて美味しいものを食べようね。』
『るぅるぅ(薬?)、ぱぁるぅ(おいしいもの)?』
『まず、お腹の中が悪いもので大変な事になっていたからね、お薬が先。その後でエンキル様、さっき居た大きな木のおじいちゃんからマルームをもらおう。』
『るるぅ?(マルーム?)』
『そうだよ、マルーム。とっても甘くて美味しいんだよ?あ、でも君は知らなかったね。樹精人しか作れない珍しい果物だから、めったに手に入らないけど、エンキル様ならきっと物凄く美味しいマルームを下さるよ。』
優しく波瑠の頭を撫でながら、話しかけるフラッガ。
『だからいい子でおやすみ。癒しの眠りを』
『るぅるぅ。(善処します…)』
フラッガが何事かを唱えると、光のヴェールのようなものがベッドを覆い、内側からは外の様子も見えなくなり、音も閉ざされたようだ。
フラッガが撫でてくれた頭に手をやってから、
無音になったポッド内に座り込む。
(結局……大分時間が経った気がするけど。どう考えても日本じゃない上に、人間卒業しちゃった感じ?最初に目が覚めた場所ではないみたいだし。)
思考しながら腕を組もうとしたのだが、腕が短かすぎて組めない上に、バランスを崩して転がった。
(えー、しかもウーパールーパーの体型だからバランスが取りにくい…なんだろうこの間抜けな感じ…多分外から見たら両生類がひっくり返ってじたばたしてるんだろうな…)
たちの悪い事に…この体は一度転がると中々元に戻れないというこの状況。
『ぱるぅ…(はぁ、)』
両手足を動かしてみるも、より敷布に埋もれただけである。
(それにしても…わたし日本で死んだの?死ぬような状況に居なかったはずだけど…隕石でも直撃したとか?あ~流石に160万分の1の確率に当たる事はないか…)
―よく隕石に当たって死亡する確率を知っていたものだが…せめてもう少しまし(?)な死因を思い付かなかったのだろうか…
(姿形が変わってるって事は、ラノベとかで言う、「転移」じゃなくて「転生」なんだっけ?後、こういう時って、あれだよ、お約束だと、ゲームみたいにインベントリがあるとか、ステータスとか見れたりするんだよね…)
(ステータスおーぷん、なんちゃって…)
半信半疑ながら頭の中で呟いた途端、フォン、と軽い電子音と共に目の前に半透明のパネル状のものが出現した。
Name⋮パール(仮名)※真名の名付け無し
TRIBE⋮龍族(皇龍) AGE⋮2days
Lv %$@&%%$
HP 15(↓-20)
VIT 100(-50)
MP 836,000,000
RES ―(MAX)
STR 30
ATK 45
INT ―(MAX)
DEX ―(MAX)
LUK ―(MAX)
【 特殊スキル 】
神の菜園、癒しの水
インベントリ(∞)、物質置換
防壁展開、魔道の深淵
【 加護 】
龍神の加護
不可知の狼の加護
▶波瑠ちゃん見てる?
ちょっと時間がおしてて、説明出来なかったから、
ステータスにオマケしといたよ(笑)
後はオプションで強そうな保護者を沢山ね!
こっちの仕事が片付いたら説明に行くねwww
追伸⋮MPは波瑠澤村で836にしてみたよ。
こういうのはいくらあっても良いですからね(笑)
by月島
そしてわかってしまった。
今の状況の原因が。
『…………………。(あのヤロウ。)』
あり得ない事に、月島が原因であったようだ。
波瑠が言っていた同僚の呪いはあながち間違いではなかったという…
ステータス末尾に記載されていた伝言を見ながらプルプル震える波瑠。
(……………MPとかどうでもいいから、せめて、手足をもう少し長くしろ!)
………つっこむ所はそれでいいのか…
※※※※※※※※※※
波瑠を生命の揺籃に寝かせ、天幕から一度外に出ようとしたフラッガだったが、入り口に保護者たちが屯していたので思わず眉間にシワがよる。
『皆さん………龍の子は大事になりかけて、まだ回復途中なんですよ?大の大人がよってたかって振り回したら治るものも治りません。明朝に連れて行きますから、一旦お引き取りください!!』
そわそわと天幕の中を覗くアイギスとラグザの体をくるりと方向転換させ、背を押して外に追い出す。
『あ、』『っ、おい。』
思いの外強い力で背を押された2人はもごもご言いながら抵抗を試みるも…
『また体調を崩させて、辛い思いをさせるつもりですか!保護者なら子の体調回復が一番でしょう!』
年若いフラッガに怒られ…
『私は経過観察を、『ガンウェイン先生も、ご自身の天幕にお戻りください!』…うむ…』
完全に正論で論破されたのであった。
親代わり候補達の会話
『お、見ろ縁に登って部屋を観察してるぞ。
目をキラキラさせて可愛いな~。』(アイギス)
『フラッガの話しに相槌をついているのか?
利口な子だな。』(ガンウェイン)
『おいしいもの(マルーム)に反応したぞ。
エンキル殿に可能な限りの量をもらえるよう
交渉しよう。』(ラグザ)
フラッガは甘やかし放題しそうな父たちを止める
苦労性のお兄ちゃんポジションにおさまりそうな…