13.3歳以下のお子さまには与えてはいけません。
『あ~あ。口が真っ青じゃねぇか!』
『ぱ、ぱるぅ?(え、真っ青?)』
『いい子だ、ほら、お口を拭こうな~』
『るぅぅ(いや、あ)ぱるぅ(自分で)』
『アイギス……もっと優しく拭けんのか?嫌がっているではないか…』
『大丈夫だよな~パールはいいこでお口を拭けるもんな!お、手も汚れてるじゃねぇか!ルバーブ、手にも食わせたのか?美味かったか?よしよし、手巾でふきふきしような。うん……まだ大分青いな…』
ラクザの気遣いで寝台に乗せられたら、何故か怒涛の介護がはじまった…
アイギスの強制回転ブランコで目を回し、すわ二度目の大惨事だったのだが、今回は早めに魔の手から脱出したため、何とか酔った程度におさまった。
おさまった…のだが…
『貸せ、アイギス。口許がまだ汚れている。龍の子よ、此方を向けるか?』
『ぱるぱるぅ(いや、もう結構で、)』
『何言ってやがる!もう口は大丈夫…って!!ぶはっ!!!さ、半魚人みてぇな色だな…つぅか、ラグザ、お前ルバーブどうやって食べさせたんだよ!?あっちこっち真っ青じゃねぇか!!!』
『いや、普通に口に入れてやっただけだ。』
『普通に口に入れてこんな事になるか!!?』
何故だか、大の大男2人が波瑠の世話(?)をめぐって目の前で揉め始めた。
『ぱるぅ、(いや、)ぱるるぅ(わたしのために争わないで、って)、』
おそらく、先程気遣いの延長であーんされた、あのルバーブの色素があっちこっちに着いてしまったのだろうが…
目の前で手巾を取り合いながら、どちらが波瑠の口許を拭くか、言い合いを始めた2人を唖然としながら見つめる。
『(こ、この人たち…)、るぅ、』
『言い争うのはよいが、早く拭かねば子の口や手がそのままになるぞ。よいのか?狗っころと子守竜よ。』
見かねたヨグが間に割って入るも状況は変わらず…
『『俺』・『私』が拭いてやる。』
(いや、私流石に自分で拭け…)
更に揉める2人を、眺めていたら…
『―――っ、けふっ、げっ、(な、に?)』
急激に嘔吐感がこみ上げてきて食道をのぼる灼熱感に苛まれ…
虹をかけずに済んだ筈が、ラグザの寝台に青紫の池を造り...
(え、何で………?)
意識がブラックアウトした。
※※※※※※※※※※
どちらが波瑠の面倒をみるか、醜い言い争いを続けていたアイギスとラグザだったが…目の前で波瑠が突然嘔吐した事ではっと正気にかえった。
『なっ!!?』『え、……?』
『!!!!』
吐瀉物には先程食べたルバーブであろう青紫の塊と、赤い……
『ち、血が!!』
『何故…………!!』
体を丸め、小刻みに震える波瑠のもとに慌てて駆け寄る2人。
蹲る波瑠のその姿に、はっとしたヨグ。
…………………っ、吾とした事が、ぬかったわ…』
『!!じじぃ、どういう事だよ!!』
『……狗っころ、忘れたか…子は空より降り、先程吾が命の焔を繋ぎ、殻より出した。』
『それが何だってんだ!!!』
『………………ルバーブは、幼き子らに与えてはならぬ。』
『は???!』
『子らにとって、生まれてより三歳を数えぬうちはルバーブは毒。しくじったわ!!!』
『なっ!!』
『幾つ食べさせたのだ!!』
『っ、房から外して2つ程。』
『!!!いかん、直ぐに治癒師のもとへ運びやれ!!!』
普段大声を上げぬヨグが叫ぶ。
『疾くせねば、子の命はないぞ!!!』
こちら(地球)で乳幼児に蜂蜜を与えてはいけないように、ウルスラ(異世界)ではルバーブを与えてはいけなかった…という事を失念していたヨグ。
吾とした事が本にぬかったわ…
否、子守竜が勝手に与えてしもうた故、
気がつくのが遅れたのよ…すまぬ龍の子… byヨグ