序幕
日々単調に目覚め、食事を摂り、仕事をし、
帰宅して眠りにつく。
そうして代わり映えのない人生を終える時まで
過ごしてゆくのだ…
と思っていた頃もありました(笑)
生まれて此の方30年、情報過多の社会に揉まれ事実も虚偽もごちゃ混ぜ混沌…二番煎じどころか無限大に広がる類似したシチュエーション。
(……あるんだねェこんな事……)
『おお!!生まれたか!!』
『はい、無事にお生まれになりました…
…ただ…奥方様が………』
『何と言うことだ…… ―― は!?すでに身罷ったと言うのか!!侍医は何をしておったのだ!!』
『仕方が御座いません…――様の御体では御子をお育てするには生命の吐息が圧倒的に足りなんだのです…――様はそれをご存知であらせられた…だからこそあなた様には伝えるな、と。』
『ッ… 何故だ……
其方が居ればそれで良かったのだ…
子など居らぬでも幸せであったではないか……!!』
『御方様………』
『――様はもはや冥府に還られた……泰山府君に冥魄を庶幾おうが叶いませぬ……』
『………』
『...御方様…不敬を承知で申しあげまする。
御子は――様が命を賭してお生みになられた愛しき子。母たる――様の愛を受けてお生まれになられたが、此よりは母を、その愛を知らず生きていかねばなりませぬ。ならば…ならば!遺された我らが足り余る程の愛を持ってお育て申し上げるべきでございます。』
『……』
(何か、目が覚めたら凄い状況なんだけど………)
複数の足音が遠ざかっていく気配だけが分かる此の状況よ…
(目の前何かほの明るいけど見えないし、
…………仕方ない………寝るか。)
これは、何番煎じかわからないが、
異なる世界に転生した私の話。