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あわだちねこ

〈枇杷の木を伐つた設計事務所かな 涙次〉



【ⅰ】


 環九朗との闘ひは、ほんの私闘だとテオは規定してゐたが、「プロジェクト」からカネが出る、と云ふ。「何か、『プロジェクト』のコードに引つ掛かるところがあつたんスか、奴は」佐々圀守キャップ曰く「大有りですよ、テオさん。まづ奴は*『ねかうもり』を造つた」‐「え!? マジすか」‐「ねかうもり」被害を未だに受けてゐる人たちがゐるのは、テオ、知つてゐた。然しその造り主が、環だつたとは...「プロジェクト」から教へられる事もあるんだなあ。テオ、正直彼らを見くびつてゐたやうだ。



* 前シリーズ第18話・他參照。



【ⅱ】


 見くびる、と云へば環に對してもさうだつた。奴が、そんな惡辣な「キメラ・メイカー」だつたとは... 魔道に墜ちた者に付き物の、蘇生が怖かつた。と云ふのも、どんなキメラを新たに生み出すのか、が氣になつたからだ。

 そして、案の定、環は蘇つて來た。本人、【魔】であるつもりはなかつたので、驚いたやうだ。だが、彼にはし殘した事(キメラ造り)が澤山あつたので、これを千載一遇のチャンスと見て、【魔】としての生を全うすべく、新たなキメラを世に放出した。

 その中で、猫と、セイタカアワダチソウのキメラ、「あわだちねこ」、の事を紹介してみやうか。



【ⅲ】


 まづその繁殖力の事‐ セイタカアワダチソウも猫も、共に繁殖力は強い。とくに、セイタカアワダチソウは、何世話されるでなく、色んな場處に繁茂する。そして他の植物の繁殖地を侵す。

 そして「取り込まれた」猫は二度と元の姿に戻れない。にやあにやあ啼いても、環の魔眼に射(すく)められた者は、決して猫の姿に還る事はない。「冬蟲夏草」のやうな、哀れな肢體を晒す。

 環、これを以てして、「我が」猫王國の住民とする- 産めよ増やせよ、と云ふ譯だ。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈沖繩の人を棄民と定義する惡の底流感じたか否か 平手みき〉



【ⅳ】


「助けて、テオさん」‐「あわだちねこ」に變身させられた、テオの顔見知りの野良。殘酷なやうだが、テオには救ふ事が出來ない。かうして次々に野良たちは、「あわだちねこ」に變へられて行つた。さうして家々の花壇をいつの間にか占領し、環の「猫王國」の版圖を拡げて行つた...

「むう、許せん、環九朗」



【ⅴ】


「テオ、出陣か? 助太刀するよ」‐とカンテラ。じろさんも既にスタンバつてゐる。「お願ひします!」じろさんは白虎を連れてゐる。これも環を二度と蘇生出來ぬようにする為だ。

 環は白衣に聴診器、と云ふ()()は相變はらずだつたが、その顔面は蒼白、最早血が通つてゐない事がありありと分かつた。

「やあ、お揃ひだね、諸君」‐「巫山戲るな! 野良たちの仇を討ちに來たぞ」‐見れば、巨大化した猫が彼の護衛に当たつてゐる。だが‐

 カンテラ拔刀、「しええええええいつ!!」巨大猫、彼も被害者の一人(?)だつたが、カンテラは構はず斬り捨てた。「カンクローの味方をする奴は、全て斬る!」そしてじろさん、白虎に「行け!」‐「があお」‐白虎、環の胴體に嚙みついた! そしてじろさん、環の顔面に、きつい鉄拳(掌底)を食らはせた。環の躰は5㍍ほど吹つ飛んだ、と云ふ。



【ⅵ】


 テオは白虎が嚙み千切つた環の躰を、更に小間切れにした。これで蘇生は、ない。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈馬耳東風夏は南風吹き拔ける 涙次〉



 と云ふのがカンクロー退治の一部始終。白虎、久し振りに暴れ、滿足顔。「あわだちねこ」たちは、引き拔かれ、荼毘に付された。「成佛してくれよ‐」テオは心から祈つた。お仕舞ひ。




 


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