曇天に虫眼鏡
曇天に虫眼鏡
鞄にいれて外へ出掛けよう
今日は曇り空だから安全だし
刺すような熱視線にはならないさ
曇る梨空に映える深緑や紫陽花、白百合
緑鮮やかな苔が活き活きと大樹の樹皮を覆う
その合間を這うダンゴ虫とアリ達の行進
曇天に虫眼鏡
誰かのちいさな心が震えてる
その細部までみてみてもいいかな
風に走る雨粒に映るあの手を握って
ひとつになるゆめ
夜空を流れてゆく どこかへ落ちて
カタツムリになるゆめ
青葉から滴る雨粒を
螺旋の渦巻きの中で数えるゆめ
曇天に虫眼鏡
紫陽花の妖精とカタツムリの姫を探しにゆこうよ
雨粒のカプセルに入れば
他愛のないお喋り、
あのしあわせな空間へタイムスリップする
海岸に立ち、風にふんわりと浮ぶシャボン玉
潮騒に弾けて見えなくなる
その数秒前のわずかな水分のゆらぎを
じっときみのことを想いながら
見つめていたよ
曇天に虫眼鏡
きみはまた驚いて、目を逸らすかな
虫眼鏡から覗くわたしの瞳に星はみえますか
真っ暗な夜空になにか光ってみえますか
せめて、あの頬を伝う一滴が凍らぬように
くちびるで堰き止めて溶かしてゆく雨粒へ
青葉を滴る雨粒へ、
カタツムリを包む雨粒へ
その一滴となれたらいいな
そんなゆめをキラリとみようよ
曇天に虫眼鏡 で