『この傘は誰のもの』
一話完結の短編です。傘というのは出会いであり、別れを生み出す物です。そんな傘を持った少女のお話です。
あの傘は赤い傘だ。青い傘だ。黄色い傘だ。
『アンブレラ、アンブレラ、私の為のアンブレラ』
今日はお誕生日だった。アンブレラちゃんが私の為にプレゼントを持ってきてくれた。それは傘だった。様々な角度から見ればそれはカラフルに光る。丘を目指し、走り出す。だが、それは親に止められた。
「わぁ!ありがとう!」
私の誕生日は冬のいつか。雪が降りしきる、つまらない景色の持ち主だ。傘はそんな銀の世界で反射し、色を生み出す。
『アンブレラ、アンブレラ、誰が為のアンブレラ』
私は常にその傘と過ごしていた。冬の雪を傘でしのぎ、その傘の光は失われていた。
「こんなの、いらない。」
私はその傘を雪の中に捨てる。春が来る。夏が来る。秋が来る。私を捨てるその時まで。
『アンブレラ、アンブレラ、私の全てよアンブレラ』
春が来る。春といえば春雨だろう?春には花が咲き、色とりどりな世界になる。冬とはまるで違う。あんな冬。消えたら良いのに
「でも消えないし」
私は大人になった。この春から新社員だし、決して楽しみではないが、新しい時代の幕開けだ。
『アンブレラ、アンブレラ、過去の記憶のアンブレラ』
全く持って熱い時期になろうとしている梅雨だ。透明なビニール傘を私の全てを包みこませ、私は思い出す。アンブレラちゃんのことを
「今思うと黒歴史だな…」
アンブレラちゃんとはその名の通り、ただの傘だ。初代傘は私のお気に入りでずっと大切にしようと思っていた。だが、その傘から輝きはなくなってしまった。そんな傘などいらなかったのだ。
『アンブレラ、アンブレラ、私の誰かねアンブレラ』
夏が過ぎ、秋になった。私の手には日傘があった。四十代になって子供は元気すぎてこっちがついていけない。
「ほら〜止まれ〜?」
私の手には黒い日傘だ。日を避けるための日傘だ。
『アンブレラ、アンブレラ、また訪れるアンブレラ』
今日は私の誕生日だ。いつか捨てた傘を思い出し、取りに行こうとする。もちろん一人でだ。あんな黒歴史、人に話したくもない。
その場所についたがさすがになかったあの日からもう何十年も経っている。そりゃそうか。まだ朝のため人が少ない。私の手には雪を避けるための傘を持っていた。
「時が過ぎ去るのは早いもので」
顔を上げると丘が見えた。その丘には基本的に立入禁止のテープが貼ってあるはずなのに丘には赤い…いや青い?いや、黄色?良いやどうでもいい。人が居たのだ。それは女性のようにも見えるが、傘で隠れてよく見えない。
私はその老いぼれた足で進む。その丘へと進む、私が行かなくてどうするかと本能が叫んだ。
『アンブレラ、アンブレラ、いつかの日のアンブレラ』
テープなんか気にせずその丘にたどり着けば、人が本当に居た。こちらに背を向ける形で、傘をこちらに向けている形で。
その傘は背が低く、形も子供用に見えた。
「あの…」
声をかければこちらを向く。その顔は…
終
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