『この記憶は誰のもの』
一話完結の短編です。少女達の日常です。きっと温かい日差しの日だったんでしょう。
「あ!お〜い!」
「あ、リサじゃぁん。おっはよ。」
「うん!おはよ!」
少女は遮断器の上がった線路の上にいた。リサはその元へ駆ける。少女は爽やかな笑顔でリサと会話を交わす。周りには沢山の高校生がいる。リサもその一人だ。周りの高校生はニコニコでリサの横を過ぎていき、会話をする。女子二人組だったり、カップルみたいな奴らだったり……。とりあえず人が多かった。
「あはは!それな?」
「でしょ〜?てかなんかすっごい笑顔だけどリサ、なんかあった?」
「ん〜?特にないけど…やってるゲームで最高レアリティが出たのは嬉しかったわ」
「いや十分じゃん」
「いやでもね?欲しかったやつじゃなかったんよ」
少女は頑なにリサの顔を見ない。前しか見ない。リサはその少女の横顔しか見れないのだ。朝日が眩しい朝、リサは登校する。眩しくて目を細めてしまうほど明るすぎる世界。憂鬱な気持ちは吹っ飛んでしまう。蝉が良く鳴いてメロディーが奏でられる。けれどその合奏で蒸し暑くなっていく。一週間しかないその命。亡くなった命よりも尊いのか?…と。
「そういえばさぁリサ」
「なに?」
「いやぁ前猫を見たんよ。」
「ほーほー猫好きだよ?」
「うんそれで………」
リサは日陰に入る。リサの影も消えてしまった。少しの間日陰を進んでいく、周りの人が駆け足で進んでいく中リサはのんびりと歩く。後ろから車がくる。
「わっ危な。大丈夫?リサ?」
「うん。ありがとう」
少女はリサを道路側に寄せる。その間も少女はリサの顔を見ない。少ししてリサは日陰から出て、また日向を歩き始めた。リサの影も顔を出し、また笑い声が出る。
もうすぐ校門につくという頃少女は思い出したようにバッグからあるものを出す。
「これ上げるよ」
「ん?」
取り出したのは赤いなにかの破片。いらないけどリサは貰って自身のバッグにしまう。そうして校門を通りくぐり後ろから足音が響く、リサが振り返るとサオリがいた。
「おはよう…ねぇ…リサ」
「ん?どうした?あぁこの子はサオリだよ。ヒマリ」
「…ッ…誰と話してるの?ヒマリ?ヒマリはもう…交通事故で…亡くなったじゃん」
「え?何言ってるの?ヒマリはここに居るよ」
リサは横を向く。しっかりと確実に。見えていた貴方の、貴方の為だけの現実を見ようと思った。
___
そこには誰もいなかった。
無様にもそこには空虚しかなく、まるでヒマリの体温も匂いも感じない。リサは信じられない目で下を向く。
酷く黒ずんだ血溜まりが、できていた。
終
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