『このドレスは誰のもの』
一話完結の短編です。ドレス屋のある日常を非日常に変える出来事があった日でした、きっとドレス屋の少女は天国のような場所にいるでしょう。
「いらっしゃいませ!」
「あぁ、演劇用のドレスですか?かしこまりました。御注文承ります。」
「なるほど…動きやすく膝ほどの丈…すみませんが本番のときに着用する方は…?」
「あぁ、すみません。ピッタリサイズにするためにサイズを測っていきますので別室にどうぞ。」
「あ、ドレスのデザインなどはどうしましょう?相談しながらしますか?」
「かしこまりました」
「あ…わかりました。詳細等の書かれた資料などを次来られたときに持ってきてくださるとこちらも想像つきやすいので…」
「あぁ、ありがとうございます。ざっと決めてかれますか?」
「すみません。そうですか、またのご来店お待ちしております。」
少し隠れたところにある新しい仕立て屋…いやドレス屋は少ない足数で生計を立てている。取り扱うのは演劇用や貴族の衣装。店員と店長を掛け持つ少女はテキパキと仕事をこなし、客を誘導する。店員はおらず一人で経営している。
ドレスは女性に合う様な可愛いドレスやかっこいいドレス。たまに騎士用にドレスを仕立てることもある。店に飾られているドレスはもちろん買うことはできるが、オーダーメイドもある。サイズの問題もあるので客はみな、オーダーメイドで注文する。
~~~
「あ……いっ…いらっしゃいませ。」
ドアの向こうから人物の影が映る。チャリンとなったあと白髪の大きい帽子を被った背の高い人物が現れる。その人物はまず少女に軽い会釈をした後店内を見て回る。「わぁ…」などと声を上げながら見て回ると一段落ついたのかこちらに歩を勧め、声をかけてくる。
「すみません…ウエディングドレスをオーダーメイドしに来たんですが…」
「ウエディングドレス…?」
華奢な人物から意外な言葉が出た為聞き返してしまった。華奢な人物の後ろを覗くが他の姿は見えない。あとから入ってくる様子もない。
それに、ここはウエディングドレスを売っていると看板に書いた記憶もないからだ。
「あ…すみません。婚約者がここの店を紹介して、出向いたのですが…ウエディングドレスは取り扱っていないですか?」
「…いえ…、裏メニューとして存じます。いやはや婚約者様は物好きなのですね。ここで、ウエディングドレスなど。」
「あはは…服には特に興味はないのですが…ね。あ、今は仕事で席を外していて…あの…いません。」
少し悲しそうな表情をした華奢な人物を知らん目で見たあと次の言葉を紡ぐ。
「そうですか…。まぁ、承りました。ウエディングドレスへの希望はありますでしょうか?」
少女はメモ帳を取り出しメモ帳に目を送る。反対の手には黒いインクペンを持ち達筆で「ウエディングドレス.資料」と書いていく。
そこを覗き込むように目を配らせたあと華奢な人物は注文内容を淡々と言っていく。
指を言うたび折り曲げ数を数える華奢な人物は華奢な身体で白い髪は光を反射し様々色に見えた。
「ええと…胸元は開けず首まで布があるようにしてほしいです。ノースリーブでも構いません。レースはつけてほしいですが派手じゃないようにして欲しいです。」
次の質問をする為に少女は目線を目の前の人に繋げると華奢な人物は少しビクッとした。そんなことは関係なく質問をする。
「ふむ…えっと…布の選択はありますか?」
「…シルクで大元はお願いします。」
そしてまた次へと質問をしていく。
~~~
色々と聞いたらとカウンターへと少女は戻り、華奢な人物はカウンター越しに戻る。
少女は追加の言葉を絞り出す。
「もっと細かい指定なら紙にでも描いて後日持ってきてくださると嬉しいです。」
「いえ……その指定を守ってくれれば…構いません。」
さっきの淡々とした口調と変わり初めのモゴモゴとした言葉遣いになると少女はめんどくさそうにジト目にしながら目を見て言う。
「わっ…かりました。大体完成は二ヶ月後となりますがいいですか?」
「はい…ありがとうございました…。また二ヶ月後に」
そんな言葉を残しは店を出ていく。チャリンと鳴るベルは後味を残さずすぐに消える。
「またのご来店を」なんて言わず後ろにある椅子に腰掛ける。溜息を溢しながら目頭を押さえる。
室内は外と比べ格段に涼しく、心地の良い空気だった。蝉の音とコオロギの音、風の音、心臓の音。ドレスの匂い、乾燥剤の匂い、全てがすべて、自分のもののように感じた。
少女はもう接客する気は起きなくなり、終了の看板をドアに下げるために立ち上がる。
掛け終わったあと、後ろの被服室…ドレスを作成する部屋に入る。
「…注文は今日は一つ。ウエディングドレス。…めんどくさいから裏メニューなのに。んっ…はぁ。とりあえずデザインしなきゃ。めんどくさいからシンプルでいいよね…?」
初めてのウエディングドレスのオーダーメイド。作り方は頭に刻み込んであるため、作るのはいいが、気力が起きにくい少女はまず紙にデザインを描いていく。とりあえず注文の指示通りにはしたがい、他は自分で考える。
~~~
二時間ほど立った。しっかりとは言えないがデザインを完成させ、明日に備える。
「やる気が起きない…やる気が起きたら二週間で終わるのに…」
~~~
そのまま店の中で寝て次の日を迎える。朝日とともに起きると思えば昼過ぎになっていた。
「あ…寝すぎた。…開店準備するか。風呂は…入らないとか…。服は腐るほどあるし問題ない!まぁ今日も今日とて暇だろうから作業する暇はある」
独り言をうるさく言うと風呂に入る準備をする。
~~~
風呂を出る。出たら店内の涼しい空気が火照った体を冷やしていく。普段飲まない牛乳を取り出しゴキュゴキュと喉に通していく。
開店準備を済ますと開店の看板を下ろす。少女は後ろに周り、服を作っていく。もちろんウエディングドレスだ。ここ最近ずっとオーダーメイドは無かったので暇を持て余していた。
真っ白なシルクは二週間でドレスの形になりレースと、細かい作業だけを残した。サイズ通りに作っていき、注文通りに作っていく。真剣に取り組みきれいなウエディングドレスになっていった。作業部屋は奥にあるからかさらに寒く少し厚着をする。作業するたびに熱くなっていくので最終的には薄着になる。ウエディングドレスのほかにベールも注文されたので作っていく。真剣に、真剣にやっていく。
いつか完成したウエディングドレスは過去最高作品で真っ白なシルクに光が様々な色を垣間魅せる。
「出来た…あ?…はぁ…はは…」
出来たウエディングドレスを見ながら少女は笑う。泣き笑う。雫が頬を伝い光り輝いていく。目の前にしたとき、少女はおもむろに泣き出す。
「終わりだ」
くらむ視界と息のしづらくなっていく喉、強く締めている手はヒリヒリと傷んでいく。口が辛くなっていき、脳はふわふわしていく。酸素が足りない。けれどもそのままずっとずっと続けていく。手には頬を伝った雫が流れ込みヒヤッとした感覚が奪われていく。黒くなっていく視界と楽しくない思い出が頭に力なく流れてくる。
「はっ…」
馬車がこちらへ流れてくる。
ガッシャァン
ぶつかる音で生み出された轟音と、声のない悲鳴と、血が四散し真っ白のキャンバスに塗られていった。掠れる意識の中少女は言う。
「出来た…ウエディングドレス、満足?」
くらみかすみ黒くなっていく視界と感覚のなくなる四肢。少女の人生に終わりを告げたのは男性だった。
終
ご一読いただき、感謝いたします。よろしければ感想お願いいたします。