幕間:二
——不思議なことも起きるものだと、私は首を傾げていた。
「……どういうことかしらね」
久方ぶりに引っ張り出した、過去の装束と武器。予期せぬ魔獣の襲来に、これが必要になるだろう。そう思っていた。
しかし、実際のところは……そうはならなかった。私が現場に到着した頃には、既に瘴気の霧は晴れていて、防衛組の面々が死体の調査を始めていた。何者かが、私より早く、魔獣を討伐していたのだ。それも、熟練の戦士ですら討伐が難しいとされている、ベア種の魔獣さえも。
「……この村に、それほどの力を持った人が……?」
思い当たる節がなく、私は再び、首を傾げた。これまで一〇年間この村で暮らしてきて、そんな力を持った人を、私は見たことがなかった。
結果的に、私が力を使うこともなく事態が終息したことは、幸運だったと言えるだろう。これまで、村の誰にも言ってこなかった私の秘密。先代の村長だけは、私たちの事情を知った上で、何も言わずに受け入れてくれた。どこの誰かは分からないけれど……その点については、感謝しなければならない。
それと同時に……警戒も。
何も、魔獣を討伐したのが、この村の人間と決まったわけではない。外部から来た人間が魔獣を討伐し、森の何処かに潜んでいるのかもしれない。そうであるならば、まだ、私が無関係であると決まったわけではないだろう。
もし、その存在が彼らであるなら……やはり、この装束は必要になるだろう。
「……いつまでも逃げ続けることはできない、か……いつか聞いた占いも、あながち間違ってはいないのかもしれないわね……」
長らく共に戦ってきた相棒を指で撫でながら、私は、数日ぶりに帰宅する愛する夫の到着を待った。




