6月生まれの魔女の娘①
よろしくお願いします。
表記について(後日談より)
ヒューゴ =聖騎士ヒューゴ(小ヒューゴ)
大ヒューゴ=勇者ヒューゴ
結局ヒューゴの『英雄譚の真実暴露計画!』は有耶無耶のまま終わってしまった。
やったことと言えば方々をヒューゴが一人で駆け回っただけ。魔女のことを知る人に話を聞きに行き、知らない人には話をしにいった。
その後にゼンから、ヒューゴ本人のために作られた英雄譚だと言われてしまったので、流石にどうすることもできない。皆の思いやりを無碍にはできなかった。
しかし、このオチを知るものは少なかった。つまり、傍から見たら大騒ぎしていた割には尻すぼみに静かになっていったように見えた。
これについて、『有り余る若い力が空回っていたんだな』と周りはみていた。
そもそも、英雄譚の真実は、知っている人はすでに知っていた。
国の政治を動かす評議会。一部の高位貴族。カサンドラ討伐に出陣した一部の軍人。そしてたまたま見かけた一般人と、魔女の根城である古城付近のひとびと。さらに、その人々から噂を聞いた者たち。
そしてその他の大部分のカサンドラを知らない人々、主に民間人については、真実には興味がないと言えた。娯楽が欲しいのであって、本当はどんな人物なのかは問題ではなかった。
英雄譚は変えられなかった。
そして、カサンドラは戻ってこなかった。
それでもヒューゴが待ち望んでいる人がとうとう帰ってきた。魔女の娘、アレクサンドリアだ。カサンドラが行方不明になってから更に二年経った後のことだった。
アレクサンドリアはヒューゴの想い人だ。彼女が生まれたときからそばにいた。
ヒューゴは過酷な状況の中生き抜いてきたが、別に不幸だとは思っていなかった。
命があること。そして見守ってくれる人がいること。そしてアレクサンドリアが生まれてからは見守るべき人ができたこと。
それに感謝しながら生きていた。
彼は素直だったのだ。
ゼンからは、
「年頃の男子が絶世の美女と過ごしていたのだから、幸せなのも当然だ」
と身も蓋もない言葉をもらっていた。
ヒューゴはなんとかしてアレクサンドリアと結婚したかった。
そのためにカサンドラに認められるような人間になりたかったし、自分自身も納得できるような人間になりたかった。
聖騎士の称号に見合うように、見習い騎士ではなく正式な騎士になれるよう騎士学校でも頑張った。
それなのに、カサンドラは帰ってこなかった。
そして、当の本人、アレクサンドリアもなかなか帰ってこなかった。
一方的に旅先から連絡はくるものの、待てど暮せど帰ってこないアレクサンドリアを悶々と待ち続けるヒューゴを、流石にゼンや周りの団員達が慰めた。
そう。アレクサンドリアも、母カサンドラや父ヒューゴと同様、普通の感覚とはちょっとずれているのだ。
そして、そこがまた可愛いと思ってしまうヒューゴも、すでにずれているのだろう。
アレクサンドリアはその誕生からしておかしかった。
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