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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
最終章 ペルミテース、そしてカタレーイナ 名無しのコーザ
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第98話 重ねて使う強制顕現と、心優しき雲の根。

 セーフティの造りというものは、どこも似通うものである。ここ、タオンシャーネについても、コーラリネットと遜色はなかった。違いがあるとすれば、それは人のほうであろう。カウンターの主人は、ゲゾールと同じく妖精の瞳を持つ者だった。あえて秘匿にしている点は、コーザとも変わらない理由による。

 カウンターの前に立ったフレデージアが、少しだけ驚いたような表情をしたのは、主人の顔を見ただけで、相手に瞳があるとわかったためだ。


「……」


 今まで意識したことはなかったが、これも強制顕現(フレデージア)の能力なのだろう。そうだとするなら、おそらくは、カタレーイナにも瞳の有無を見分ける力が、あるということになる。信じたくはないが、幾度となく妖精王を探しても、一回たりとも発見にいたらなかった理由は、先方が意識的に、瞳の持ち主を避けたためなのやもしれない。

 黙るフレデージアを見るにつき、主人のほうから声がかかる。フレデージアが小声で応対したのは、妖精の瞳を思えば当然であった。


「冒険者かい? ずいぶん勇敢だね。私たちに何か用だろうか?」

「予備の拳銃をいただきたいのです。囲い屋(ミミック)に武器が飲まれてしまい、リンクが途絶しました。それは、こなたの相棒が証言したので、間違いありません。囲い屋(ミミック)の話は、ワープゲートを潜る前の出来事ですので、ご安心を。近くにはいません」

「……その相棒さんは、今どこに?」

「ふふっ。武器が変わってしまうのですから、早々に逃げだしましたよ」

「なるほど、賢い。……もう少し、囲い屋(ミミック)についての話を、相棒さんに詳しく聞きたかったところだが、あなたが無事で何よりだ。拳銃に注文はあるかな?」

「特には」


 差し出された拳銃を、フレデージアはしずしずと受け取った。

 天は――妖精に味方する。

 直後、銃が緑色に光ったのだ。


「あんた……」


 顔を歪めてにやりと笑うフレデージアを、主人は訝しむように何度も見た。そこには、いるべきはずの妖精がいないのだ。そうであるにもかかわらず、拳銃が光る。どう考えても、おかしな状況であった。

 マーマタロがセーフティに到着したのは、ちょうどフレデージアが銃を構えたときである。制止の言葉よりも早く、引き金は動かされてしまっていた。


「最初から、こうしているべきでした」


 発砲と同時に、フレデージアの体が怪しく光る。

 この体で失われる寿命が、妖精としての姿に、どのような影響を及ぼすのかは不明だが、そんなことは起こってから気にすればよい。些細な問題だ。すべては、ミージヒトの仇を打つことに劣後する。


「遅かったか」


 悔いるマーマタロを横目に、フレデージアが空気をまとう。

 もはや、そこにスキルの残数はないはずであったが、今のフレデージアには、委細関係がなかった。エネルギー装置と直結しているのだから、事実上、弾数に上限はない。

 胸にかき抱くようにして縮めた腕を、ゆっくりと大きく広げていく。それに呼応して、渦巻く風が放たれた。

 壊滅。

 セーフティを囲っていた壁は、円形にくり抜かれ、それでも勢いの衰えない風のために、フレデージアを起点とした一直線の道が、にわかに作られていた。

 だが、その埒外な攻撃は、無反動ではいられない。焼けるような両腕の痛みに耐えかね、思わず、フレデージアが苦悶の声をあげる。ダンジョンの基盤を、根底から変えてしまうほどの力なのだ。行使するうえで、代償があるのは必然とも言えた。

 そうそう連発はできないだろうが、コーザを手にかけるぶんには支障がない。

 超人じみた疾駆は、瞬く間に両者が争った地点に達する。

 過ぎ去ろうとしたフレデージアの目に、かすかに純石(じゅんせき)の棺が映った。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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