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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
最終章 ペルミテース、そしてカタレーイナ 名無しのコーザ
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第94話 人としてのフレデージア。

 図らずも、けりをつけようとしていたのは、ミージヒトたちも同様であった。天邪鬼(マリシャス)により、コーザが吹き飛ばされるのを確認すると、ミージヒトは労わるようにして、フレデージアを見やった。


「そろそろ、準備運動はおわったかな?」

「はい、お待たせしました。次で決着をつけます」


 本来であれば、さっきコーザを仕留める予定だった。しかし、ルーチカがコーザから離れ、逆方向の通路に逃げてしまったため、計画は大いに狂った。

 禁止区画(デッドエンド)の中でも、妖精は問題なく突き進むことができる。だが、これは妖精が人でも機械でもないという、イレギュラーな存在だからこそのものだろう。そうであるがゆえに、天邪鬼(マリシャス)は妖精が単独で存在する区画を、書き換えることができない。端的に言えば、同地を対象としてスキルを発動することは、かなわないのだ。

 だが、それもコーザをルーチカのほうへと、無理やりに弾けば解決する。

 あとは、複数のスキルを同時に(・・・・・・・・・・)使えばよい。

 感覚が戻るのに、だいぶ時間がかかってしまったが、もう十分だろう。完璧に体を制御した。

 天邪鬼(マリシャス)で三方を封じ、逃げ場をなくしたうえで死神の愛(アムネスティー)を放つ。

 さすれば、何人であろうと刈り取ることが可能だ。

 残りの二か所を、一斉に閉鎖してやろう。

 刹那――。

 フレデージアがスキルを発動するより早く、コーザが目の前に姿を現していた。


「どうして!?」


 悲痛な声でフレデージアが叫ぶ。

 完全に意表を衝かれてしまった。

 禁止区画(デッドエンド)による排除に、若干のタイムラグがある以上、天邪鬼(マリシャス)の直後に風を飛ばすやり方が、ベストだった。特に、禁止区画(デッドエンド)への置き換わりには、スキルごとに変動する時差がある。複数のスキルを一度に用いるのは、それを回避する意味も込めていた。置き換わりのタイミングが、共通になるからである。しかして、逃れる時間は生まれない。

 それなのに、まだ天邪鬼(マリシャス)さえ使えていないではないか。これでは到底、死神の愛(アムネスティー)は間に合わない。

 第一、自分が同時にスキルを使えると、なぜわかったのだ? それはだれにもない発想のはずである。

 コーザがトリガーを引く。

 懲りずに蛇の舌(スネーク)、あるいはそう見せかけた通常弾か。

 風の贄(エロード)? いや、すでにすべてのスキルが、発動モーションに入ってしまっている。自分の残数はすでにゼロだ。それらを強引にキャンセルしたところで、使える弾数は変化しない。

 ならば、受け止めるのだ。己の体で。

 幸いにして、この状態で負った傷ならば、強制顕現(フレデージア)の解除とともに、きれいさっぱり消え失せる。人であるミージヒトを守ることのほうが、遥かに優先されるはずだ。


「――ッ!」


 しかし、同じ心配をミージヒトもするのである。

 今、フレデージアは人の状態にある。では、もしもそのとき、深手を負ってしまったら? 死なないはずの妖精も、倒れてしまうことがあるのではないか。

 ゆえに、フレデージアを庇うべく、ミージヒトは前へと飛びだしていた。

 発砲。

 コーザに遅れて放った弾丸は風となり、両者の軌道をわずかに変えた。

 互いの腕をかすめ、火傷をしたときのような痛みが走る。

 なおも、コーザは前進する――幾度もトリガーを引きながら。

 それが弾ぎれを誇張するための、単なるパフォーマンスであることは、ミージヒトにはわかっていた。

 火の弾(ショット)か、それとも純石(じゅんせき)の短刀か。

 いずれにせよ、切り札の種はわかっているのだ。対応は容易である。


「自分の勝ちだ! コーザ!」

「ミージヒト!」


 大声を発しながら、コーザが自身の拳銃を放り投げる。

 そうして、腰から情報屋の形見を取りだしていた。

 やはり、そっちが本命だったか。

 ミージヒトは己の勝利を確信し、そして二度の発砲音が鳴った。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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