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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
最終章 ペルミテース、そしてカタレーイナ 名無しのコーザ
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第90話 ただ、ニシーシのために……。

 ミージヒトは儀礼的に手を差し出したが、対するチャールティンは、小さく肩をすくめただけだった。


「話ができてよかった。約束は果たそう」

「それなら、ありがたいですわ。わたくしからのプレゼントと、ニシーシが莢の炎(カートリッジ)持っていない証(・・・・・・・)として、あちらのエネルギー装置付近に、短刀の失敗作(・・・・・・)と薬莢とを、置いておきますの。ご自分の目でお確かめになってくれると、うれしいですわ」


 思わず、ミージヒトは笑ってしまった。チャールティンが言わんとしているのは、ニシーシが敵でないことの証明に、ほかならないからである。もとより、マーマタロに相棒がいないこと(・・・・・・・・)は、確認済みだ。ゆえに、イトロミカールの住人を襲う気なぞ、初めからない。それなのに、武具の不所持を、さらに誇示しようとしているのだから、チャールティンの対応は、心配性と言わざるをえなかった。

 チャールティンがその場で反転し、セーフティへと戻っていく仕草を見せる。言いたいことはすべて話したのだろうが、フレデージアとしては、まだ聞いておかなければならないものが、明確に残っていた。


「待ってください。そなたは肝心なことを語っていません。どうして、莢の炎(カートリッジ)一発だけ(・・・・)と言いきれるのですか?」


 立ち止まったチャールティンは、試すようにミージヒトを見あげた。


「ああ、心配ない。ちゃんと、わかっている。そちらは戻ってもかまわないよ」

「そうですの、お見事ですわ。では、ついでにわたくしからも一つ、おまけをあげましょう。あなた方も、さっさとこの場を離れるといいですの。コーザが、タオンシャーネの仲介人を雇わないうちに、ね」


 その言葉に、ミージヒトは心底肝を冷やした。チャールティンの暴露が示しているのは、いつでも勝たせようと思えば、コーザに軍配をあげることも可能だった、ということにほかならないからである。


「……そちらであっても、コーザが自力で雇おうとする場合には、さすがに怪しまれるので止められない、というわけか。忠告、感謝しよう」


 離れていくチャールティンの、後ろ姿を睨みつけながら、フレデージアは相棒に言葉を求めていた。それを受け、ミージヒトが申し訳なさそうに口を開く。


「すまなかった。どうして、莢の炎(カートリッジ)が一発だけと断じられるか、だったね? 口には出さなかったが、チャールティンも、タオンシャーネでの決戦が、免れないことに気がついている。どうあがいても、それが勝手に起こる争いであると、知っていたんだ。――にもかかわらず、このような取り引きを、持ちかけて来たのだから、今回の行動はただの駄目押しなのだろう。その理由は、間違っても、コーザが勝ってしまわないようにするためだ。自分らが負けようものなら、チャールティンの相棒はコーザと共に、ワープゲートを潜ってしまうからね。……それが答えなんだよ。なぜ、未踏破領域に向かうのを、そんなに嫌がるのかと言えば、相棒の安全が保障されていないからだ。端的に、それは莢の炎(カートリッジ)が複数も作れないことに、由来している。いくらでも作れるのならば、そもそもおチビちゃん((ニシーシ))が危険に遭う、道理はないのさ。当然、自分らが、チャールティンから話を持ちかけられることも、なかっただろうね。……そうでなくとも、チャールティンは相棒を参戦させない(・・・・・・)だろう。潔白の証明はやや過剰な反応だが、向こうとしては、万が一にも敵と思われるのは、避けたかったのだと見えるよ」


 本当にそうなのだろうかと、フレデージアは不信感を抱いたのだが、やがては頭を横に振って考えを改めた。すでに、マーマタロが無力なことは、妖精を使って確かめているのだ。このうえ、コーザが頼みとしているニシーシも、とてもではないが、戦力には数えられないだろう。今の状況は、盤石と言ってもさしつかえないはずだ。

 だが、どうして――。

 なぜ、自分はこんなに不安を覚えるのだろうかと、フレデージアは、甘えるようにミージヒトに身を寄せた。

 その遠くで、チャールティンは大きなため息とともに、小さく独り言ちていた。


「あとは、コーザの機転にかけるしかないですの」


 純石(じゅんせき)の短刀をすでに使用していたとは、完全に想定外だった。おかげで、ミージヒトの信用を得るためには、莢の炎(カートリッジ)についての詳細を、語る必要に迫られてしまった。だが、自分にやれるだけのことはしただろう。最悪は、コーザが負けても問題はないのだから。


「ニシーシ……。できれば、わたくしはあなたに、妖精の運命について、知ってほしくはないですの……」


 もはや記憶の片隅にしか存在しない、カタレーイナのことを、少しばかりチャールティンは思い出していた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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