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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
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第76話 仲介人が到着したみたいだぜ。

 コーザは順調だ。

 不慮の事故も多かったが、それでも確実にペルミテースへ近づいている。この点は氷結も言いあてることができていた。ならば、ひょっとするとミージヒトについても、同じことが言えるのではないか。ペルミテースに会うまでは、全くもって安泰であるという推測も、いささか楽天的であったと、考えを改めるべきなのかもしれない。


(コーラリネットでニシーシと話した内容は、マーマタロなら待ち人を知っているというもの……。こうして当然のように、イトロミカールに戻って来ている以上、はたから見ても、捜索に進展があったことは丸わかりだろう)


 すると、これはもはや、ゲゾールに接触するのはどちらが先なのかと、そういう争いの様相を、呈しているのではあるまいか? もしも、タオンシャーネの道中で、ミージヒトが襲って来るのであれば、戦闘に参加しないと表明している、チャールティンなどの協力者を、わざわざ無茶をしてまで、危険な場所に連れて行くこともないだろう。そのあとで、自分にはイトロミカールに戻るという、選択肢もあるのだ。無論、ミージヒトを、無事に一人で倒すことが大前提となるが、成功すれば、以降の旅は格段に難易度がさがる。さすれば、タオンシャーネまでというマーマタロの制限も、にわかに意味を失い、再びニシーシたちを仲間として迎えることも、かなうようになるはずだ。

 ゆえに、その確度を、コーザはチャールティンに尋ねていた。


「タオンシャーネに向かっている最中に、うちが襲われる可能性っていうのは、どのくらいありそうだ?」

「ゼロですの」

「皆無なのか? なぜ?」


 たしかに、ミージヒトには、すでにコーザがペルミテースのすぐそばにまで、近づいていることがわからないかもしれない。だが、氷結が推測したとおりであれば、ミージヒトもまた、コーラリネットにおけるコーザたちの、会話を耳にしたからこそ、追跡をはじめたものと考えられる。ゆえに、かなりの地点にまで迫ったことは明白だ。それでいて、可能性が全くないというのは、少し納得がいかない。


「ミージヒトにとって、最も避けたい事態は、コーザが戦力を手にいれてしまうことですの。このとき、仲介人と行動を共にしているコーザに対し、道中で戦いを仕掛けるというのは、端的にタオンシャーネの人たちも含め、その区別なしに襲うことを意味しますわ。これは正式に交わされたイトロミカールとの、商売を妨害していることになるのですから、仲介人たちが黙っているはずがないですの。あなたにしてみれば、これは一時的に味方を増やしたのと同義。ミージヒトが攻撃をして来る道理は、全然ないですの」

「……なるほどな」


(だからこそ、チャールティンも、マーマタロの提案を受け入れたわけか)


 道中において、ニシーシの安全は、確実に保障されているということである。そして、それは同時に、仲介人たちを雇いさえすれば、ミージヒトも敵ではなくなることを意味した。

 だが、そんなコーザの淡い期待も、瞬く間にチャールティンが封殺していく。コーザには先立つ物がないのだ。当然、謝礼は後払いになってしまう。


「二人で仲良く分けようとしない、妖精王からの報酬を、おもむろに対価として提示したところで、進んで協力してくれる人は少ないでしょうね。……コーザにミージヒトよりも、上回っている点があるとすれば、それは向こうよりも先に、マーマタロの知り合いに会える、という部分にありますわ。以前にイトロミカールへ来たとき、あなたの怒る声は聞こえていましたから、お相手が地下の世界全般に詳しいことは、わたくしも承知していますの。そこで、何か有意義なことが聞けたらば、それを使って、わたくしがまた案を考えますの。心配せずとも、ちゃんと手は貸しますわ」







 イトロミカールに初めて来た当時は、二重(にじゅう)マップの件でごたついていたが、今は違う。どうしても確認しておかねばならないものが、コーザにはあった。ゲゾールが今も居場所を変えていないのか、この一点である。

 仲介人のメンツは前回と異なるが、なんとなく事情は察しているのだろう。コーザの姿を見ても、あまり驚いた表情は見せなかった。


「タオンシャーネの人間で間違いないな?」

「そうだが……」

「少し、聞きたいことがある。あんたたちのセーフティに、ゲゾール……もしくはペルミテースという人物は、住んでいるか?」


 ペルミテースの所在は、ゲゾールが知っているはずなのだから、その存否を確認することに意味はない。はやる気持ちの表れだ。

 仲介人は眉をしかめ、次いで仲間の顔を順々に見やってゆく。心当たりはないということなのだろう。


「いないな――」

「いいや、いるぜ」


 その中で最も老齢な商人が、横から口を挟んでいた。老いたと言っても、コーザよりも二十数年の違いであり、くだんのゲゾールほどではあるまい。


「もう一人のほうは知らんが、ゲゾールだろう? ああ、確かにいる。今は名を変えているがな……。なるほど。昔、やつが自分を探しに来る人間が、いつか現れるだろうとぼやいていたが、まさか本当にそんな日が訪れるとはな」


(そうか……ペルミテースについても、今は仮名(・・)で生活している場合があるのか)


 ということは、妖精王がペルミテースの手がかりを、何ら自分に与えて来なかったのも、ひょっとすると、待ち人の名前以外の情報は、本人さえ知らなかったからなのかもしれない。


「……」


 セーフティに長居することができない。この一件があったからこそコーザは、妖精王の存在が、出口につながっていると考えられたのだ。自分よりも、得られた情報の少ないミージヒトが、なぜ同様の結論を導くことができたのか。これについては甚だ疑問だが、いずれにせよ、ゲゾールに接触すれば、おのずと解決する事柄には違いない。

 いよいよ、コーザはダンジョンの神秘へと近づいていた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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