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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
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第69話 グララムース

 かろうじて、ヘーネベッタを倒すことには成功した。

 疲労感が体に重たくのしかかるが、泣き言を並べているわけにもいかない。氷結たちに見つかる前に、ミージヒトを探さなければ――。

 だが、どれだけテリトリー内を走りまわってみても、その姿は一向に確認できない。

 それどころか、うわささえ流れて来ない始末だ。


(ありえない……)


 いやしくも、ミージヒトはムッチョーダの中でも、指折りの実力者だ。抗争という重大な場面で、活躍していないことなぞ想像もできない。それなのに気配さえつかめないとは何事か。

 肩で息をしながら周囲を見渡せば、思いもよらないものが目に飛びこんで来る。

 死体だ。

 無論、自分が探しているミージヒトのものではない。それは情報屋の亡骸であった。


「裏切って……いたのか」


 全身が凍りついたかのように、その体は恐ろしく冷たい空気を放っている。殺され方からして、氷結とやりあったことは疑いようがなかった。


「バカ野郎……」


 友を偲び、歯噛みするのも一瞬だ。形見としてハンドガンをもらい受けると、その場をあとにした。

 ほどなくして、コーザは氷結と再会する。そのかたわらには入れ墨の姿も見えた。約束をたがえたことには怒りを覚えるが、今は氷結のほうが問題だ。

 ミージヒトの不在という、抗争の成否に関わるような重大な情報を、間違っても氷結が見逃しているはずがない。ならば、知っていて自分は泳がされたと、そう考えるのが道理である。まんまと自分は、氷結に一杯食わされたのだ。


「どういうつもりだ、氷結!」


 コーザがいきり立っていることなぞ、氷結はまるで気にしない。優雅に煙草を吹かしながら、流し目のように視線を軽く向けるだけだ。


お友達((情報屋))なら、ずいぶんと反抗的な様子だったからねぇ。あたいが軽く小突いちゃったよ」


 その件についても思うところはあるが、それは情報屋が選んだ結果でもある。相対ずくのことだろう。コーザが憤っているのは、そこではない。


「違う……ミージヒトなんか、どこにもいねえじゃねえか!」

「な~んだ、そんなことか。お前はちょっと後回しかな」


 言いおわるよりも早く、くだんの人物がコーザの前に現れていた。

 ムッチョーダその人である。

 獄炎。

 ルーチカのスキルとは、比べ物にならない火力が一帯を覆う。

 そうかと思えば、それらは即座に凍った。

 氷結が応戦したのである。

 熱気すべてが奪われたのではないかと、そう錯覚するほどの一白。

 肺が痛い。

 呼吸をするのさえやっとの思いだ。

 膝に手をあて、中腰のままにムッチョーダのほうを見やれば、そこには信じられない光景が広がっていた。

 すでに、ムッチョーダの体はぼろぼろだったのである。


「あらま、生きていたんだ。しぶといねぇ。さっき、葬ったと思っていたんだが……あたいの腕が落ちたのかい? それとも、お前が予想以上に強かったのかな」


 だが、その口元に浮かんだ微苦笑は、どちらであってもかまわないと言いたげだ。

 どうせすぐに死ぬ。

 ゆえに同じことだと、氷結は怪しくほほ笑む。

 かちゃり。

 拳銃に手をかける。銃口が二つもついた異様なチャカだ。


「不佞が……こんなところで」

「アッハはハハ! お前さぁ、右腕((ミージヒト))がいない状態で、このあたいをどうにかできると、本気で思っていたのかい?」

「まさか! テメエ、気がついていやがったのか。ミージヒト……今すぐに出て来い! どうした……なぜ、現れない? ……不佞を見捨てると言うのか……バカな。お前は、そもそもムッチョーダの勢力を高めるため、コーザを()――」

「残念、そこまでかな。答え合わせはあたいのお楽しみだ」


 発砲。

 それに応じ、風と光との妖精がスキルを放つ。

 光線は四肢を貫き、突風がそれらをバラバラに吹き飛ばした。紛うことなく、即死である。


「さて、採点の時間だ。グララムース」


 もはや、目の前で何が起こっているのか、コーザにはまるで理解できなかった。今、名前を呼ばれた者は、ムッチョーダの成員に相違ないではないか。

 コーザが一番の被害者であるはずなのに、この状況で驚くべきことに、自分は完全なる蚊帳の外にいる。


「勘弁してくださいよ、氷さん。おれっちは、ちゃんとコーザに『後ろに気をつけ(・・・・・・・)るんだな!』と、忠告しましたぜ。それに捕まったときにだって、逃がすためにずいぶんと無茶させられている」

「ほう。それなら、コーザ……お前のミスだ。あたいの贈り物を受け取ってくれないなんて、つれないじゃないか」

「何の話をしている! わかるように説明しろ」

「まだ、理解できないのか。ミージヒトはお前を、コーラリネットからつけていたんだよ」


 がっかりだと言わんばかりに、氷結が冷たく煙を吐いた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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