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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
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第68話 花の塵というヘーネベッタのスキル。

 ムッチョーダ側にしてみれば、コーザのレベルは、いまだに五という認識のままである。

 ならば、次にスキルを使うことで、ヘーネベッタの意識は確実に五番目――最後の弾に向かうはずだ

 そこを狙う。

 コーザは銃を左手に持ちかえると、勢いよく物陰から飛びだした。

 当然のように相手もトリガーを引いて来る。

 再びの空砲。

 しかし、その種はすでに割れた。先ほど火の弾(ショット)を消滅させてみせた、防御系統のスキルに違いない。かまわずに足を前へ進める。

 それとは対照的に、ヘーネベッタは己の勝ちを確信していた。

 引き当てたからである。

 ナリナーヅメを殺害するにいたった、花の塵(ファントム)というスキルをだ。

 もちろん、気持ちの変化を顔に出すことは決してない。胸中で、静かにほくそ笑むだけだ。

 異変が起こったのは、その直後である。


「相棒、後ろだ!」


 ルーチカの言葉に、コーザがにわかに振り返る。ヘーネベッタにしてみれば、それはありえない光景だった。確実に死角から、必殺の一撃を放ったはずなのである。


「バカな……」


 それを羽の庭(ガーデン)と見分けることなぞ、後ろに目がなければ不可能な芸当だ。

 だが、現にコーザはその区別をやってのけている。現実を理解するのに、ヘーネベッタには、いくらかの時間が必要であった。

 その隙にコーザは迫る。

 背後より飛来する銃弾は、難なく回避することができた。初見であればかわせなかっただろうし、実際、ルーチカが見つけてくれなければ、自分は今頃穿たれていた。それも、位置からして頭部。確実に死んでいたことだろう。

 だが、気がつけたのであれば話は変わる。一発しかない銃弾なぞ、見てから避けることは造作もない。よほど、連撃のほうがしんどかった。

 パン!

 四度目の撃発だ。

 もちろん、中身は火の弾(ショット)

 なんてことはない、平凡な攻撃だ。

 だが、手練れのヘーネベッタならば必ず気がつく。もはや、コーザには攻撃の手段である、スキルストックが残されていないことに。

 必然的に、その目はコーザの銃口に釘づけとなる。

 しかして、その違和感に気がつくのは、またも一呼吸ぶん遅れることとなったのだ。

 コーザの利き腕は右だ。

 だのに、今は逆の手で銃を持っている。


「――ッ」


 何かある。

 ややもすると、コーザは右腕のほうがより負傷しているので、そうしたのだとも捉えられそうな場面だが、直感的に、策略の気配を感じ取ったヘーネベッタは、さすがに激戦のムッチョーダで、数々の手柄を残しているだけはあるだろう。

 ゆえに、ヘーネベッタはその使命のほうを重視した。

 この者もまた、相対するコーザという人物は、ここで仕留めねばならない危険な存在だと、そのように認識を改めたのだ。

 そうであるがこその、前進。

 ふつうであれば距離を取ればいいものを、ヘーネベッタは足を踏みだす選択をした。コーザを確実に殺すためである。

 発砲。

 その相棒が保険をかけ、ここで羽の庭(ガーデン)を意識的に使ったのは、賢いと呼ぶよりほかにない。

 だが、通じない!


「後ろは大丈夫だ! 突き進め!」


 理由は不透明だが、コーザには花の塵(ファントム)が通用しないのだ。ゆえに、そこには羽の庭(ガーデン)がどうかを見極めるための、判断のゆらぎと言うべき空白の間は、腹立たしくも存在していない。

 火炎放射(ファイア)

 連射を警戒しての選択である。

 目押しのできないヘーネベッタにしてみれば、コーザの悪運を嘆くばかりだ。

 対する敵も最善の手。

 二度目のスキルが連射を引き当てる。

 幕引きだ。

 まもなく、羽の庭(ガーデン)に炎が回る。さすれば鎮火し、こちらの弾丸がコーザを射抜くだろう。

 だが――。


「何!?」


 コーザは、その直前で迂回していた。

 炎が消えたとき、銃口の正面には、人の姿がなかったのである。

 おそらくは先ほどの火の弾(ショット)で、羽の庭(ガーデン)が持つ間合いは、見切られていたのだろう。

 恨めしそうに下唇を噛むが、依然として自分の優位は揺らがない。

 すでに、コーザの弾数は尽きた。

 どちらにせよ、これで終結だ。

 しかし、ヘーネベッタの目は視界に弾丸の軌道を、にわかに描きだしていた。

 完全なる不意打ち。

 ミージヒトとの決戦を、度外視したコーザにしてみば、当然の行動である。スキルを残しておく必要はない。だが、ヘーネベッタにとっては予想外もいいとこだ。

 横にかわしつつ、トリガーを引く。

 このとき、ヘーネベッタの相棒が羽の庭(ガーデン)を使ったのは、だれにも責められないものだろう。六発目があったのであれば、コーザにはその次もあるだろうと、そう警戒するのは、むしろ聡明でさえある。

 しかし、今ばかりは悪手であった。


「うぉおおお」


 肉薄するやいなや、コーザの短刀は、ヘーネベッタの首をかっさばいていた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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