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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
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第67話 お守り

 即応。

 待っていたかのように、ヘーネベッタが発砲する。

 連続した射撃だ。

 トリガーは一度しか引かれていないはずだが、そういうスキルなのだろう。少しずつ銃口をずらしながら、複数の弾丸がコーザに向けて放たれる。


「しまっ――」


 想定外だ。

 違う技が来ることなぞ、まるで予期していなかった。


(ミージヒトを意識しすぎた……)


 思えば、大概の人間は、妖精の瞳を持っていないのだから、狙ってスキルを出せるはずがない。再び、同じ空砲が放たれる保証なんて、初めからなかったのだ。


(どうする……?)


 今更、悠長に対策を考えるような時間はない。

 寸秒のうちに、自分はハチの巣にされるだろう。


(いや!)


 不幸中の幸いか。

 たとえ、実物の弾丸であっても、火炎放射(ファイア)であれば、焼き払えるという点は変わらない。

 それに気がついたコーザは、眼前で八の字を描くようにしながら、素早くスキルを放つ。

 ぼうぼう。

 熱の匂いが鼻孔を満たす。

 庇いきれなかった体の端々を銃弾が掠め、鋭い痛みに苦悶の声が漏れた。


「ぐっ」


 火が消えると同時に、今度はこちらが発砲。

 案の定、銃口からは火の弾(ショット)が飛んでいく。

 即時の連射ならば、敵も勘定にいれていないと信じたかったが、あいにくと向こうに驚いた様子は見られない。

 刹那――中空を走る弾丸が唐突に姿を消した。


(何!?)


 間違いない。

 銃で弾かれたのでもなければ、何かに払われたわけでもない。

 それは唐突に、飛翔している途中で消滅したのである。

 あまりの出来事に、一瞬、思考が止まりそうになるが、そこは積み重ねた戦闘の場数が違う。鈍重な頭とは反対に、コーザの体はすぐさま物陰のほうへと、機敏に移動していた。


(ここにも火穂晶(ひすいしょう)か……)


 これでは、ヘーネベッタに水系のスキルがあった場合、丸焼きは免れないだろう。


「相棒、ちょっといいか?」

「手短に頼む」


 本当はお喋りするゆとりさえ、もう心には残っていないのだ。


「さっきのスキル、ちょっと変じゃなかったか?」

「どの辺りがだ?」


 聞き返しながら、木箱の陰から顔を覗かせ、相手の動きに注意を払う。


「奴さんのレベルは九という話だ。しかも、おそらくは典型的な四種類。なのに、さっきの攻撃は、発砲してから、銃口を動かしはじめるまでの時間が、ほとんどなかった。こいつはおかしいぜ」


 電流が走ったかのように、コーザはルーチカのほうを振り向いていた。

 ルーチカの指摘は、ヘーネベッタがスキルを同定する以前から、銃をずらしていたことを意味するのだ。そんなことを、瞳のない人間が真似しようと思ったらば、おのずと実行の手段は限られて来る。


「――ッ! 攻撃系が一つしかなく、しかも律義に毎回同じことをしてなきゃ、ありえねえ動きってわけか」

「そういうことだ」


 銃弾の向きを変えるのは大きな賭けだ。連射のスキル以外には使えまい。そして、撃発ごとのルーチンを作っていなこともまた、先ほどの空砲から明らかである。


「……見えているのはスキルを発動したかじゃなく、弾道のほうかよ!」


 それも、引き金に力をいれる直前から、撃ったあとしばらくまでは効果が及ぶという、強力なものであろう。


(――ってことは、頼みの綱である蛇の舌(スネーク)でさえ、ヘーネベッタには利かねえってことじゃねえか)


 弾道が変化したところで、相手にはその予測があるのだから、まるで意味がない。現状はほぼ詰んでいる。

 心を落ち着かせようと、祈るような気持ちで胸に手をあててみれば、硬い感触に眉をしかめていた。

 懐を探って手触りの正体を確かめれば、それはいつかのお守りであった。

 純石(じゅんせき)で作られた短刀だ。

 まさか、この状況を予知していたわけではないだろう。だが、たとえそうだったのだとしても、今のコーザは驚くことをしなかったはずだ。


「感謝するぜ……チャールティン先生!」


 ひらめいた気がした。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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