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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
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第65話 ヘーネベッタ

 ナリナーヅメが銃を構える。

 一発目。

 引き金に手をかけるだけで、実際はスキルを使わない。見せることだけを目的とした動作であり、言うなれば、本命につなげるためのパフォーマンスだ。

 ナリナーヅメとほかの人間とに、決定的な差があるとすれば、それは使えるスキルが一つしかない、という点に帰結する。ゆえに、ナリナーヅメはこれを極限にまで応用させた。妖精の瞳こそ持ってはいないものの、往時からナリナーヅメは、スキルの発動に条件をつけたのだ。ある種の動作をしたときにだけ、妖精に罪の科(エクセキュート)を使わせる。これを相棒が自発的に学ぶまで、延々とつづけた。

 結果、多大な時間を費やしたものの、ナリナーヅメは獲得するにいたったのである。不発と本命とを、自分の意思で区別するのに成功したのだ。ほかのだれにも真似することのできない、ナリナーヅメに固有の芸当であろう。そして、これはナリナーヅメのスキルと、すこぶる相性がよかった。

 不可視の弾丸である。

 罪の科(エクセキュート)によって放たれる弾道は、本人以外に確認の仕様がない。おまけに、その発砲音も極めて微小なものだ。対戦している状態の人間が、それを聞き取ることは不可能だろう。

 こうした一連のパフォーマンスに対し、ヘーネベッタは、一切の回避行動を取らなかった。

 おかしい。

 そう疑問に思いこそするものの、考えられる道理もないわけではない。ヘーネベッタのスキルだ。

 四種類すべてのスキルとなると、未確認なものも含まれるが、そのうちの三つについては承知している。

 羽の庭(ガーデン)

 ほかのスキルを一回だけ無効にするという、強力な技である。

 これを事前に使われていたのだとしたら、無警戒に近寄って来ることも納得がいく。向こうは今、完全防御の鎧を、身につけているのに等しい状態だからだ。

 なれば、その余裕を崩してやろうではないか。不可視のスキルを無力化しても、弾自体は見えないままだ。敵は鎧が剥がれたことにさえ気がつけない。ゆえに、二発の銃弾で十分に仕留められる。

 二発目と三発目。

 拳銃を左右に振りながら、トリガーを二度引いた。そのうちの一回はスカだが、もう一方は脚部を狙った本命である。

 罪の科(エクセキュート)はあたる場所を問わない。対象に命中した時点で、串刺しになることが確定する。

 放たれた弾丸は直線状の軌道を描き、そのままヘーネベッタに向かって飛んでいく。


「何?」


 そこで、初めてナリナーヅメは声をあげた。

 弾丸が打ち消されないのである。

 向こうの有効範囲内には、もう入っていることだろう。もしも、すでに羽の庭(ガーデン)を使われていたのだとすれば、自分の弾丸は消滅していなければおかしい。

 ということは、無敵の鎧をまとっているわけではないのか?

 ナリナーヅメの驚きは止まらない。

 走っていたヘーネベッタが、何もないところで急に飛び跳ねたのである。それはまさしく、自分の弾丸が、命中するはずだった場所にほかならない。

 まるで見えているかのような動きである。

 連射。

 そのうちの一度にだけ本命を混ぜてみる。

 だが、結果は同じであった。明らかに弾道を予測したうえで、ヘーネベッタは罪の科(エクセキュート)を避けてみせたのだ。


「なるほどね……。ウビリャーミと同系統のスキルっていう話は、単なるがせねた(・・・・)か」


 本来のスキルは弾道の予測。

 これでは不可視のスキルも形無(かたな)しだ。いやおうなしに読まれてしまう。


「オレの負けか」


 もしも、自分の相棒が、複数のスキルを有していたならば、このピンチも脱することができたのだろうか? いや、それは望むまい。一つしかなかったからこそ、自分たちは今までやって来られたのだ。

 もはやスキルの残数はない。潔く、受け入れよう。

 力なく拳銃をおろせば、ナリナーヅメの頭部は後ろから(・・・・)射られていた。

 用心深く、ゆっくりと死体へと近づきながら、ヘーネベッタが静かに独り言ちる。


「……半信半疑だったが、念のためにスキルをごまかして正解だったな。やはり、間者が紛れこんでいたか」


 コーザたちの逃げていった方角を、ヘーネベッタは鋭く睨みつけた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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