第64話 桁違いに残忍なナリナーヅメのスキル。
思いのほか、ムッチョーダ側の対応は早かった。さすがに、抗争中ということだけあってか、向こうも警戒は怠っていなかったのだろう。
横道から現れた人間をめがけ、ナリナーヅメが拳銃を放つ。
パフパフ。
気の抜けた音が聞こえて来るものの、弾道は見えない。
(不発……?)
相手も同じことを思ったのだろう。にやにやとした笑みを浮かべながら、銃口をナリナーヅメに向けて構えるが、そこから銃弾が発射されることはなかった。
串刺しである。
突如として、その体がアスタリスクのような星形に、槍で貫かれたのだ。
そのうちの一本は、頭から脚部にかけて、体を完全に打ち抜いている。まず間違いなく、即死であろう。
興味ないと言わんばかりに、ナリナーヅメは敵の死体を横目で見ながら、コーザに向かってにこやかに口を開いていた。
「オレ、これ以外のスキルがないんだよね。だから、百発百中ってわけ。すごいっしょ」
「お前はストックの数が少ねえんだ、無駄撃ちするな」
入れ墨の忠告に対し、ナリナーヅメは舌をべえっと出して、不満を露わにしていたが、コーザの関心はそんなところにはなかった。
(弾丸は……確かに放たれなかったはずだ。耳飾りの酸性雨でさえ、発砲するのは見えたというのに……)
異様なスキルをまのあたりにしたコーザは、狼狽を隠せず、背中には冷や汗を流していた。その様子を見て取ったナリナーヅメが、得意げにコーザへと近寄る。
「気になる? でも、教えてやんないよ」
その後もナリナーヅメの無双はつづく。
前方より顔を覗かせたギルメンたちを、問答無用で突き殺し、最終的に四人の成員を亡き者としていた。
「いや~、働いた。オレってば、大活躍」
反面、それは敵をおびき寄せる結果にも、つながったのだろう。後方から新手の人員が姿を見せた。
(……やばい)
連れている妖精の雰囲気が、これまでのメンバーとは明らかに違う。
ナリナーヅメの相棒にも似ているが、それよりもやや濃いのだ。殺意とでも呼ぶべき、負のオーラが。
「ヘーネベッタか……面倒なのに見つかったな。任せられるか?」
「さっき、回復したから、残数は二個ある。大丈夫っしょ。レベルは九で、スキルは三つとも把握済みだって」
「わかった。俺たちは先を急ぐ」
後ろに回した手を振って、ナリナーヅメが別れの挨拶をする。それを不安げに見つめていたコーザも、やがては、入れ墨に急かされてその場をあとにした。
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