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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
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第59話 交渉

 コーザの姿を確認しても、氷結は木箱の上に腰かけたままで、前回のように出迎えることはしなかった。


「ムッチョーダ側に人が迷いこんだ、といううわさは本物だったか……。どうだい、コーザ? すでにムッチョーダの成員は、その幾人かを妖精王のみもとにまで、丁重に送り届けてやったからねぇ。向こうは大層賑やかだったことだろう」


 やたらにぴりついていた理由は、仲間を失ったためだったのかと、コーザは内心で舌打ちをする。


「ああ、おかげで手厚いもてなしをしてもらったよ」

「それはよかった。あたいからのささやかなプレゼントだと思って、遠慮なく受け取ってくれ」


 コーザは言いようのない不安を覚えていた。

 とりもなおさず、それはワープゲートの使用に伴う、対価である。前回のぶんも払っていないというのに、このうえさらに値切ることなぞ、はたしてできるものなのだろうか? それをしたくないのであれば、わざわざギルドに寄るようなことはせず、直接にワープゲートへと、向かえばよいのではないかという主張は、もっともな指摘でこそあろう。

 だが、なおそれは誤りである。現に、こうしてコーザの先には、赤黒い渦がきちんと姿を見せているからだ。そうであるにもかかわらず、依然として氷結たちは、厳然と目の前に立ち塞がっていた。それは端的に、氷結がギルドの位置を、再びワープゲートの手前に移した、ということにほかならない。

 なぜ?

 当然のように、コーザの頭にはそんな疑問が浮かんでいた。そんなコーザの訝しむような視線から、何を考えているのか理解したのだろう。氷結は煙草を吹かしながら、ひどくつまらなそうに答えていた。


「お前が潜ったことにより、あたいの中で、ワープゲートの価値がにわかに高まった。だから、もう一度占領することにしたのさ。つまりはただの偶然……疑り深いねぇ」


 たしかに、自分は最速で、ムッチョーダからここまでやって来た。途中、セーフティに顔を見せたくなる気持ちを、抑えてまで駆け抜けたのだ。おざなりの対応をする時間は、氷結にはないはずである。コーザとしても、たまたまの出来事であると信じたい。


(だが……もしもムッチョーダ側の情報が、氷結に筒抜け(・・・・・・)なのだしたら……?)


 自分が捕まっている間に、氷結がコーザの帰還を知ったという線も、十分にありうる話となる。

 だが、さすがにそれは考えすぎだろうか。ムッチョーダとて、氷結たちの動きには、慎重すぎるほどに注意を払っているはずだ。自分たちのテリトリーに侵入者がいれば、コーザのときと同様に、すぐに気がつくことだろう。

 コーザは思いなおすと、首を横に振って今一度氷結と向かいあう。この場を切り抜けるには嘘をつくしかないと、そう覚悟を決めた。


「悪いが、今回の往訪は予定外のものなんだ。イトロミカールの捜索はうまくいっていない。ニシーシを待たせているんだ……時間が惜しい。支払いはもう少し待ってくれねえか?」

「冗談だろう、コーザ? お前は至極順調に事を進めている」

「何を……言っている?」


 現実は氷結が指摘するとおりだ。おおむね、コーザは首尾よく、ペルミテースの手がかりを得られたし、ニシーシも無事に送り届けることができた。

 しかし――。


(それは、氷結には絶対にわからないことだ)


 ワープゲートを潜ったあとの出来事なぞ、想像する以外に術がない。万に一つもありえないのだ。

 仮に何らかの手段で、ムッチョーダ方面に対しての、並みならぬアンテナを張っているのだとしても、今しがた自分が話したばかりの内容を、氷結が知ることは絶対に不可能である。だれかが伝えるよりも早く、コーザのほうが先に、こうして氷結と接触しているだろう。

 だというのに、どうして眼前の人物は、断言するように話すことができるのか。

 あまりの不気味さに、コーザの体は軽く震えていた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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