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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
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第57話 ノーグリィ

 盤桓師(クロウラー)の見た目は、へどろに塗れた大きめの鳥である。翼を有していても羽ばたくことはなく、地を這うようにして、微細な物資を収集しながら移動していく。ダンジョンから与えられるエネルギーが、ほかのモンスターに比して格段に多いため、盤桓師(クロウラー)は妖精のような技が使えた。疑似的なスキルを、発動させることができるのだ。

 厄介なことに、それはちょうど妖精と同じであり、引き起こす超常現象の種類は、個体ごとに異なっている。Aランク待ったなしの能力ではあったのだが、幸いにも、強力なスキルの使用は確認されていない。それゆえのBランクという評価であった。


「……アイシー」


 呼びかけに応えるかのように、ハンドガンが藍色に光る。凍塊氷石(ブリザード)という強力なスキルのもと、一撃で仕留めようという腹づもりであった。

 敵の攻撃。

 あえて受けたのはスリルを求めてのことだ。手加減をせずに戦えば、氷結が圧勝するのは目に見えている。

 だからと言っても、スキルの威力をさげるまではしない。スキルの残数は有限なのだ。そんなことをしても、全体で見れば、戦闘の時間は延びるどころか、むしろ減ってしまう。


「やっぱり、弱いな……。とっておきの技でもあるのかと、ちょっと期待していたんだけれど、残念」


 言葉とは裏腹に、氷結の顔には悲しそうな表情がない。

 当然だろう。

 もはや、Bランクに氷結の敵はいない。それならば、さらに先へ。Aランク以上に挑戦しようと考えるのは、増長していた氷結にしてみれば、無理からぬことであった。そして、その機会は思いもよらぬ速さで訪れた。

 氷結がギルドに戻ったとき、すでにそこは血の海と化していたのだ。


「何……これ」


 想像だにしなかった光景。

 早朝、自分の頭を乱暴に撫でていた大人でさえ、今は帰らぬ人となっている。幼い日の氷結にとって、それはとても直視できるものではなかった。

 悲しみも高ぶりもそこにはない。

 無だ。

 心がまるで現実について来ない。

 何をすればいいのか、そんなことはわかりきっているはずなのに、いきなり体の使い方でも忘れてしまったのか、その場から一歩も動くことができなかった。

 呆然と、目線ばかりが徘徊する。

 見たくもないはずなのに、一秒も早く消し去りたい光景だと言うのに、己の瞳は、無情にも舐めるように情報を拾っていく。

 臓物。

 忘れられたナップザックと、持ち主がいなくなってしまった腕と足。壊れかけのハンドガンには、上からモンスターの一部がのしかかっていた。

 そうやって無力感のままにたたずんでいれば、氷結の姿に気がつくギルメンがあった。


「何をしている、阿子丸! 早く逃げないか!」

「どう……なっているの?」


 その者は、いらだったように氷結の腕を引きながら、ギルドの定位置から離れようとした。


「俺にだって正直わかんねえよ……。修理霊(ドミネーター)だ……。あいつがいきなり、ギルドの本部に、大量のモンスターを連れて来やがった!」


 それは聞き覚えのない機械の名前であった。だが、ギルメンの言葉から、出現したモンスターの数が少なくないことは、明瞭にわかった。

 ゆえに、そこに思いいたる。


「ノーグリィは?」

「……」


 返事はない。何も言葉は発されなかった。

 ただ、その代わりに、氷結の腕を引くギルメンの力は、にわかに強くなったのである。それが問いに対する答えだった。

 激高。

 弾かれたように腕を振りほどき、氷結は駆けだしていた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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