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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
54/105

第54話 うちにしか説明することができないもの。

 これが妖精のスキルであることは、言うまでもないだろう。だが、攻撃ばかりを想定していたコーザにとって、その防壁は十分に意表を()くものであった。

 対応が遅れる。

 反射的に銃弾を放つが、その内容はすでに決まっていた。

 火の弾(ショット)だ。


(しまっ――)


 今こそ、火炎放射(ファイア)の出番ではないか。

 急いでルーチカに話しかけようとするが、その頃にはすでに、背後から敵の手が迫っていた。


「クソッ!」


 方向を転換。

 防壁の対処はあきらめ、別の道を行く。

 つまり、それはムッチョーダの策略に対し、自ら進んで引っかかりにいく、ということにほかならない。

 もはや手遅れだったのだ。

 足を動かしつづけた先に見つけたものは、黄色と黒との縞模様だけだった。

 禁止区画(デッドエンド)

 同色に発光する一帯は、ちょうどセーフティと対になるものだ。モンスターにしか侵入を許していない以上、人間であるコーザは、当然にエリアから拒絶されることとなる。

 その光を目にしたとき、コーザは己が敗北したことを悟った。

 前へと懸命に進んで来た足が、ゆっくりとスピードを落とし、やがては力なく止まってしまう。コーザは袋小路に追い詰められていたのだ。

 そうして、観念したようにコーザがたたずんでいれば、芝居がかった身振りで親玉が登場した。

 ムッチョーダである。

 紫紺の短髪。その頭部には、片側にだけ耳元で切れ込みが入っている。鷹揚な足取りで、コーザへと近づいたムッチョーダが、仰々しいほどにわかりやすく両手を広げた。


「ひどいじゃないか、コーザ。不佞から逃げるなんて……傷ついちゃうぜ」


 こうなってしまえば、コーザに選択の余地はない。この茶番につきあうことで、延命できると言うのであれば、喜んで興じよう。


「すまなかった。抗争中だったのを、すっかり忘れていたんだ」


 だが、それを快く思わない者もまた、当然ながらギルド側にもいる。すかさず、グララムースが声をあげていた。


「ざけてんじゃねえぞ、コーザぁ! テメエ……さては、おれっちたちのことを探っていたんだろう。未踏破領域に向かったっつう話も、出まかせじゃねえのか! どうなんだ、おい!?」

「……やめろ、グララムース。事前の調べで、コーザが本当にコーラリネットを脱出したか、という話に関しては、とうの昔に決着がついている」

「関係ねえっすよ、ムッチョーダさん。……結果的に、禁止区画(デッドエンド)も見られちまった。壁かそうでないかの判断ができる、氷結側のウビリャーミ対策が、これでぱあだ。()るしかないっすわ」


 居丈高な物言いのまま、グララムースがコーザへと蟹股で近寄る。それを手で制したムッチョーダは、呆れたようにため息をついていた。


レベル五((本当は七))のコーザにまで、こんな仕掛けを使わなきゃならねえ時点で、土台無理さね。グララムース……お前、もう少し早めにとどめを刺せなかったのか?」

「すいやせん……氷結の野郎には、さんざん世話になっていたんで。どうしてもコーザを()っちまいたくて、夢中になっていました」

「……まあ、いい。この点は、もう少しほかのものを考えよう。だが……そうだな。どうする、コーザ? 不佞はお前を殺しても別にかまわんが、コーザが外に行って帰って来たのも、また事実だ」


 不敵な笑みを浮かべ、再びムッチョーダが身振りを激しくしていく。それが、コーザに役者としての台詞を求めての、ふるまいであることは、言うまでもなかった。


「何が……言いたい?」

「情報だ。セーフティの外がどうなっているのか、その話を詳しく聞かせろ。それがお前を解放するにあたっての対価だ。安いものだろう?」

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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