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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第2章 氷結および未踏破領域 イトロミカールへの道
50/105

第50話 クソ……こんなところで、体力の限界かよ。

 不敵に笑ったコーザが、相棒をちらりと見やる。


「新技はどんなものか、大体は予想できているんだろう?」


 当然だと言わんばかりに、ルーチカは肩をすくめてみせた。


「命中率のいい火の弾(ショット)だな」


 それを聞いたコーザは、思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「うちらはホント、火の弾(ショット)に縁があるんだな」


 莢の炎(カートリッジ)しかりということである。

 だが、どういう技であるのかを把握したい点は、依然として変わらない。ゆえに、コーザは拳銃に手をかけた。

 ところが、それを敏感に察したのか、コーザよりも先に、擬雪崩(なぜもどき)が攻撃をしかけて来たのである。

 蠕動。

 気色の悪い口元が大きくすぼむ。

 そうして一度、顔が中へと引っこむと、今度は体内のものを吐きだすようにして、急速に膨らんだ。

 腫れた口が開かれ、勢いよく靄が噴射される。


(やばい……!)


 倒れるように、コーザがうつぶせになった直後、その靄が爆発した。

 ダーン。

 爆風が髪を薙ぎ、すさまじい勢いで頭上を駆けぬけていく。

 白い煙が辺り一帯を覆った。


(先手を取られるとは、まずったな)


 さらなる攻撃の余裕は与えたくない。

 おまけに、敵の姿も見えない。

 だが、新技はあたりやすいとの話だった。


「……」


 そもそも、妖精の拳銃はすこぶる精度がよい。ミスらなければ、ちゃんと狙ったところに的中する。それなのに、より命中しやすいとはどういうことなのか。おそらくは、弾道に補正がかかるに違いない。ならば、闇雲に放ってもあたる見込みがある。

 ゆえに、コーザは寝転がった体制のまま、トリガーを引いた。

 ぱん。

 銃口から弾が飛びだす。

 一瞬のうちに見えなくなったそれは、ヒットしたことが伝わる鈍い音を立てた。

 まもなく、煙が薄れたので様子を確認しにいけば、銃弾は芋虫の横っ腹を、食い破るように命中していた。

 側面からあたっていたのである。さしずめ、蛇の舌(スネーク)とでも呼ぶべきか。


「……なるほどな。対象の横を通過しそうになった時点で、軌道が強制的に変わるのか。こりゃ、『あたりやすい』の域を軽く超えているな」


 その割には、ずいぶんと威力が高いようにも見えた。

 いくら、コーザが相当の場数を踏んで来たとはいえ、擬雪崩(なぜもどき)はBランクのモンスターだ。一撃で瀕死にすることは、火力の問題でできない。それなのに、もう芋虫は動けないでいる。これでは通常弾の存在意義を、見失いそうになってしまうが、おそらくはレベルがあがったことで、全体的にパワーが上昇したのだろう。

 いまだ動こうと試みる擬雪崩(なぜもどき)に対し、コーザはとどめの一撃を食らわせると、ナップザックから水筒を取りだした。

 飲むのではない。

 芋虫が溜めこんでいた物資に、上からかけるのである。

 それは火穂晶(ひすいしょう)と言い、水と反応して燃える鉱物だ。あいにくと粉末状なので、回収することは難しい。無論、それも妖精のスキルを使えば、容易に行えるものであったが、当然ながらルーチカにそのような技はない。ゆえに、不慮の事故に備え、こうして後始末をするのである。


火穂晶(ひすいしょう)のほかには、特に目新しいものはねえな」


 一応は軽く探ったあとで、コーザは水をこぼした。

 直後、連鎖的な反応がはじまる。燃え盛る炎を横目に、コーザは今一度歩きだした。

 だが――。

 立てつづけに起こった、奇怪な出来事による興奮も、そう長くは保たれない。コーザはその意思に反し、ついに倒れた。

 体が限界を迎えたのである。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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