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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第2章 氷結および未踏破領域 イトロミカールへの道
48/105

第48話 ここまでだって、あてずっぽうで来ただろう?

 ルーチカはコーザの顔を覗きこんでいた。暗に、これから先の行動をどうするのかと、そう問うているのだった。


「うちがここまで来たのは……イトロミカールで暮らしていくためじゃない。先に進もう。今までだって、道しるべに頼っていたわけじゃないんだ。それが、もう少しつづくだけのこと。……相棒、コーラリネットに戻るぞ」

「おう。俺様はお前との旅が長くなるのなら、何でもかまわねえよ」


 妙な言い方をするものだと、コーザはルーチカの発言に、軽い引っかかりを覚えるが、口に出して尋ねるまではなしない。自分だって、糧食などの心配をしなくてもよいのなら、別の場所へ行って違う景色を見たいと、そう思うからだ。雑に言えば、ルーチカも旅が楽しいのだろう。


(しばらくは、イトロミカールに厄介になるしかない……か)


 そうして、その間にできるだけ稼ぐ。コーラリネットとは違い、ここには競合相手がいないのだから、問題なくモンスターを狩れることだろう。

 何が売れるのかはわからないが、ある程度まではえり好みをせず、仲介人も引き取ってくれるはずだ。







 それから数日、コーザは戦闘に明け暮れた。ゆえに、タオンシャーネの商人がやって来たときも、ようやくおわったのかという、気だるげな疲労感があるばかりで、あまり感動は覚えなかった。

 それは考えてもみれば、当たり前のことだったのだが、コーラリネットの交易人とは異なり、仲介人は一人ではなかった。集団でやって来たのである。


(でなきゃ、大量の物資を守りながら運ぶなんて、できっこないか)


 一団に目をやりながら、コーザはそんなことをぼんやりと思う。おのずと、ナップザックを握る力も強まっていた。

 これまでに獲得できた物資は多くない。期待したほどには獲物がいなかったからだ。

 コーザが仲介人たちに近づいていけば、彼らは心底驚いたような顔をしていた。


「見ない顔だな……びっくりしたぜ」

「な~に、冒険中にうっかり迷いこんじまってね。ちょいと世話になっている感じだ。……どれか買い取ってくれねえか?」

「割り増しでいいなら、なんでも買い取るさ。八番出口で売ればいいからな。……旅ができるあたり、お前さんは攻撃系だろう? なんなら、俺たちと共に来て自分で売るか?」


 言いながら、仲介人は、コーザの差し出したナップザックを覗くと、感心したように息を吐いた。


「そうしたいのはやまやまなんだが、一度、自分のセーフティに戻る用事ができたのさ。次の機会にでもお願いするよ」

「そうかい」

「……ところで、あんたたちはなんで、人をイトロミカールに置いておかないんだ? ここにはライバルがいないんだ、うちみたいに稼げるだろうよ」

「ふっ、冗談だろう? それはお前さんだって理解しているはずだ。ここは思いのほか獲物がいないし……何より、こんなところに長居をしていたら、こっちの頭がおかしくなっちまう。まあ、商売相手としては悪くないんだがね」


 そうして、目を細めながら仲介人は辺りを見回した。そこには、妖精の瞳を持ち、隠すこともなく相棒と楽しそうに会話する、住人たちの姿が無数にあった。

 瞳を持たない人間にしてみれば、ここは狂気的なセーフティだ。共に暮らすことなぞできまい。


「なるほどな……」

「そうさね。だから、たまに来て、そのときにお土産程度に狩って帰るのが、俺達にはちょうどいいのさ」


 受け取った食料をしまうと、コーザは礼を言ってその場をあとにする。そうしてニシーシのもとへと向かえば、簡単に別れの挨拶をするのだった。


「心配するな、必ずまた来る」

「別に、来なくてもいいのですのよ?」


 相変わらずなチャールティンの態度に、コーザは一度ほほ笑んでから、ついにイトロミカールのセーフティを出発した。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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