第44話 今度は、うちから誘うってことだよ。
その笑みに対し、ニシーシは、またチャールティンが無礼を働いたため、そう決断させたのではないかと、にわかに不安がったが、コーザはすぐに違うと否定した。
「心配するな、ニシーシ。チャールティンのせいじゃない。……瞳をもらった際の取り引きでな。どうやら、うちはセーフティに長いこと留まれないらしい」
「それはまた……難儀なことですね」
「まあ、うまくつきあっていくさ。……ああ、そうだ。妖精王はチャールティンにとっても、特別な存在なんだったよな? その理由までは知らんが……」
「それがどうしたと言うんですの?」
「いや、な~に。ペルミテースの延長線上で、おそらく妖精王にも会うことになるからな。お前もついて来るか? ニシーシなら、イトロミカールにいれば、ほっといても安心だろう」
「結構ですわ。お休みをいただけない環境なんて、ごめんですの。それに、特別という話も、ちょうど生みの親と育ての親くらいには、その質に隔たりがありますの。あくまでも、わたくしにとってはニシーシが一番ですわ。知らなかったんですの?」
「それについては重々承知しているよ……。生みの親?」
「別に深い意味はありませんの。気にしなくても大丈夫ですわ……ああ。失念していましたの。コーザはペルミテースに会うんでしたね」
初めからそういう話ではなかったのかと、コーザは呆れ顔を向けるが、あいにくとチャールティンの考えはそこでない。会った先にある。
もしも、コーザがペルミテースを探していることを、知っている人物がいたとしたら……。そして、その人物は報酬と呼べる何かを、横取りしようと考えているのだとすれば、コーザとの戦闘は避けられまい。ならば、事前にコーザのことを知りたいはずだ。特に、対人戦に関わるものであれば、是が非でも耳にしたいことだろう。例えば、今まで伏せてあったようなスキルの中身など。
そう。
ちょうど、情報屋を使って聞きだしたくなるほどに、その内容は、喉から手が出るほどにほしいものなのだ。
これが杞憂であるとも思えなくはないが、あのとき、情報屋が嘘をついたことは確かなのだ。残念ながら、間違いないだろう。そして、これをコーザに伝えることも、今となっては、却って危険に晒すだけとなってしまった。尾行に気がついたことを悟られれば、もっと状況が悪くなるからだ。だが、幸いにも、ペルミテースとの接触までは、コーザの安全も保障されている。だとすれば、自分が考えなければならないのは、実際に戦闘をするときのことか。
自分の読みが甘かったことを、少しだけチャールティンは悔やんだが、それらはニシーシを害するものではない。まもなく、気にしないことに決めると、ニシーシのそばにそっと控えた。
「それよりな、ニシーシ。うちはタオンシャーネに向かいたいんだが、途中まで案内できないか?」
「すみません、僕は場所を知らな――」
そこでニシーシが意見を翻したのは、コーザがウィンクで、合図をして来たからにほかならない。
そもそも、ニシーシはセーフティの外が、どうしようもなく気になったからこそ、ダンジョンに踏みだし、その結果として、コーラリネットに迷いこんでしまったのだ。単純に、バトルエリアを見たかっただけならば、イトロミカールに戻って来るまでの旅で、十分に目的は果たせただろうが、そうではない。自分のセーフティであることが肝要なはずだ。
そうであるならば、できるだけ安全にイトロミカールの周辺を、歩かせてやりたいと思うのが、一般的な人情であろう。途中まで案内してくれという頼みは、コーザなりの置き土産に違いなかった。
コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。
次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ




