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8千pv【全104話】フェアリィ・ブレット ~妖精迷宮の銃弾~  作者: 御咲花 すゆ花
第1章 コーザとニシーシ 放浪する二人
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第4話 新技はまさかのスカらしい。

 先ほど、食事中に拳銃が光ったので、これで弾数のストックは三になった。まだ、石拾いのような大物とは出会いたくない。あくまでも、前回は運がよかっただけだ。たとえ、収穫が少なくなったとしても、確実に倒せる相手を狙いところだ。

 それに運がよければ、まだモンスターに回収されていない物資を、道中で拾うことだってあるだろう。もちろん、それは少量であり、とても生活の基盤となりうる多寡ではない。あくまでも、おまけみたいな扱いだが、コーザとしては十分だった。塵も積もれば山となる。それは確実に、出口までの道につながっているはずだ。


(倒しやすいモンスターなら……Cランクのどれかだな。警備員(ガードナー)とかか?)


 モンスターたちは、脅威の度合いによって区分されている。比較的安全に対処できるのがCであり、運がよければ倒せるというのがBだ。例えば、石拾いはBにあたる機械である。

 獲物を見つけるべく探索をつづければ、通せんぼをするかのようにして、コーザの前に突っ立っているモンスターが、一体いるではないか。紛うことなき、警備員(ガードナー)だ。全身が緑色のため、ダンジョンの基調とかぶり、遠目からでは判断しにくいのが欠点だが、自分から襲って来ることは極端に少ない。その見た目も、小型のゴーレムと言っても支障ないだろう。相手の動きは緩慢なので、適切な距離を取って戦いさえすれば、こちらの被害は少なくて済む。


「行くぜ、相棒」

『おうよ』


 頭部に狙いを定め、ゆっくりと引き金を引けば、火の弾(ショット)がそのとおりに命中した。バラバラと、その体が壊れていく。

 一発で倒せるとは運がよい。警備員(ガードナー)は装甲が厚いので、中々に壊れないのだが、今日は全体的についていると見える。ほくほく顔で近づいていけば、なんということだろう。大量の物資が散らかっているではないか。


「マジかよ……。警備員(ガードナー)がこんなに溜めこむことなんて、あるんだな。初めて見たぜ」


 それは明らかに不自然な事態だ。ゆえに、コーザは異常さに気がつくべきだった。悠長に、拾いあげている場合ではなかったのである。

 一つ一つの収穫物を眺めるように、丁寧に袋へといれていく。その中には例の純石(じゅんせき)もあった。おかしなほどに硬く、叩きつけてみても傷ひとつつかない鉱物だ。まるでダンジョンと一緒。こんなものを、地表の人間は、いったい何に使おうというのか。全く理解できない。これだけふざけた硬さなのだ、加工すること自体が、そもそも不可能なのではあるまいか?

 だが、それでも売れることだけは確かだった。ならば、その用途を、自分が気にしていても仕方がなかろう。金に換わること以外、ダンジョンで暮らすコーザにとっては、些細な問題にすぎないのだから。

 そうやって楽しげに、コーザが物資を拾いあげていると、突如としてそこへ、別のモンスターが現れたのである。

 白い駒のようなフォルム。間違いなく、巡回車であった。

 決して強くはないが、見かけた人間をどこまでも追跡して来る。残りの弾数に余裕がないコーザとしては、真っ先に気がついて逃げたいところであった。


「クソっ! 気づくのが遅れた」


 この場に長居しすぎたのである。


(巡回車のキャパシティーは多くない。警備員(ガードナー)が大量の物資を持っていたのは、巡回車から一時的に引き取ったからか!)


 状況は整理できたが、有効な手立ては思いつかない。ひとまず、相手の足を動かなくして、その間に逃げるというのが賢明か。

 勢いよく近づいて来る駒にめがけて、コーザは銃口を構えた。


『最近やってねえしな……そろそろいっちょ、火炎放射(ファイア)でもおみまいしとこうかね! 近づいて放てよ、相棒』

「頼むから、火炎放射(ファイア)は止してくれよ」


 結果は言うまでもなかった。無念にも近場を燃やしただけである。巡回車とは程遠い距離だ。


「バカじゃねえのか! こんなときにだれが火を噴けっつうんだ」

『バカはてめえだ! あんなもん、俺様の火炎放射(ファイア)で瞬殺だろうが!』


 貴重な一発を無駄にした。これで、絶対に次弾で倒さねばならなくなった。だが、ここでは場所が悪い。もっと、接近戦を行える場所に、移動しなくてはならないだろう。

 コーザは闇雲に黒緑色の世界を走った。

 ただでさえ、目印になるようなものが少ない魔境なのだ。全力で走れば、すぐに現在地なぞわからなくなる。それでも長年の経験は、ちゃんと体に叩きこまれていたようで、自覚的にでこそなかったものの、小さな立方体の中へと逃げこむことに、からくも成功した。

 すばやく反転すると、臨戦態勢で身構える。コーザは巡回車を、ここで迎え撃つつもりでいるのだ。


『――ったく、何が気にいらねえのか、わっかんねえな。……しょうがねえや、相棒。とっておきを見せてやるよ』


 いくら追跡がおはこの巡回車といえども、無制限に近寄って来るわけではない。あくまでも、それは、決められた範囲内においてのみの話である。

 ゆえに、ひょっとすると相手の活動範囲を脱し、うまく撒けたのではないかという、そんな淡い期待をコーザは一瞬抱いたが、無論、そんなに都合よく話は進まない。


「――だと思っていたぜ」


 姿を見せた巡回車の突進をかわし、相手が方向を転換させようとしている間に、すばやく接近する。そのまま、無表情に銃口を突きつけた。

 この距離なら、間違っても命中する。大丈夫だ。

 そんな安心からか、コーザの口元には微笑が浮かんでいた。

 かちゃり。

 トリガーを弾く。


「――ッ!」


 だが、そこから銃弾が発射されることはなかった。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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