第25話 再出発
情報屋と別れてから、コーザとニシーシとの二人は、黙々とダンジョンの中を歩いた。すでに、未踏破領域へと踏みこんでいるため、ニシーシの警戒は人一倍だったが、それはコーザについても、似たようなことが言えただろう。
不慣れな場所。おまけに、必要なこととはいえ、攻撃に参加できないお荷物を抱えている。それ以外の面で、役に立つことの多いニシーシたちであったが、戦闘中はどうしても、煩わしさを感じてしまうのだった。
「お疲れさまです」
そんなコーザの機嫌を、うかがうように発せられるニシーシの一言が、コーザには却って不愉快だった。決して、ニシーシがあざといのではない。コーザは己に恥じていただけである。自分はこんなふうに、子供に気を遣わせなければならないほど、弱い人間だったのか。
「ああ、すまん。大丈夫だ」
(もっと、真面目に生きて来るんだったな……。そうすりゃ何でも、今よりは格段にうまくさばけただろうに)
気落ちするかのようにして、コーザの言葉数は少なくなる。それを見るにつき、ルーチカは堪らず声をかけるのだった。
「情報屋も言っていただろ? それこそ慣れの問題だって。……相棒はまだ目押しに慣れていないんだ、あんまり気を落とすなよ。いきなり相棒は、効率を重視しすぎだ。どのスキルを、いつ、どんな相手に放つのか――なんて、今までやって来なかったんだ。早々にできたら、俺様のほうがむかつくぜ」
「……。お前にまで慰められるとは重症のようだな」
「なんだと!?」
「悪かったよ。しゃきっとする」
そう言って、コーザは倒したばかりの石拾いから、純石などを拾った。なにも、これはニシーシのために集めているのでない。ちゃんと、食料を追加で購入するためである。
しかし、近くに出入口がないのだから、集めたところで荷物になるだけだ。ゆえに、交換できないのではないかと、そう思ってしまいそうだが、きちんとギルドの存在を呼び起こせれば、そうではないことがわかるだろう。交換所から、かなり離れた位置にあるギルドといえども、地表との交易には無縁でいられないからだ。
そのやり方はいたってシンプル。商人とギルトとの間で事前に日にちを決め、一度に大量の物資をやり取りするのだ。こうすれば、交換所に向かう回数を減らすことができる。それゆえに、コーザにしてみれば、ギルドに物資を持ちこむことさえかなえば、氷結たちから、いくらか食料を買い取れる見込みがあった。余分な食料を抱えこんでいるのが、容易に想像できるからである。無論、それは向こうの手間賃を考えれば、正規の価格よりも遥かに高いだろうが、思いのほか、ここに来るまでに時間がかかった。食料が減って来ている現状に照らせば、ないよりはずっとマシであろう。
「……」
純石を持ったまま、不自然に黙りこむコーザを見るにつき、ニシーシは心配そうに声をかける。
「……あの、どうかしましたか?」
「いや……。純石は加工したほうがいいのかと、そう思ってな」
「はあ……。ん? もしかして、また交換するつもりなんですか? それならば、たしかにレートをあげられるでしょうけれど……。やりましょうか?」
コーザから、純石を受け取ろうとするニシーシに対し、やはりと言うべきか、ここでもチャールティンが口を挟むのだった。
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