第22話 Sランクは詰み。そういうことだ。
奇妙な問いに、さしもの情報屋も眉をひそめた。
「飛ばし屋だ? Sランクなんか知っていたところで、どうにもならん。出会ったら妖精王にでも祈れ。それしか俺たちにはできん。聞くだけ無駄だ。知りたきゃ、まだどうにかなりそうな、執行者のほうにするんだな。話してやるよ」
そう言って、情報屋はコーザに手で合図する。知りたければ、金を払えということのようだ。
「うちも一応、知っているんだがな……」
「説明のうまさだって立派な売り物さね。それが俺なりの副業なんでな、嫌ならほかをあたってくれ」
「わかったよ」
しぶしぶといった表情でコーザはうなずくと、情報屋に話の先を促した。
「執行者は区分の上じゃ、一応Aランクだ。つまり、戦えば死ぬが、運がよければ逃げられるってやつよ」
したがって、Sランクは逃げられないし、死ぬということである。知ったところでどうにもならないという、情報屋の台詞に嘘はないのだ。
「区分じゃなくて、知りたいのは戦闘スタイルとかだよ」
「まあ、そう急かすな。フォルムは黒鉄の騎士だそうだ。とにもかくにも、攻撃力が半端ない。得物は槍で、こいつが異様に伸びるんだと。ほかのモンスターを破壊していたなんていう、目撃談も少なからずあがっているあたり、相当に狂暴なんだろうさ」
「ちなみに、情報屋なら鉢合わせても逃げられそうか?」
「無理だな」
「やっぱそうか。レベル十を超えたようなバケモンじゃないと、Aランクは無理なのかもな」
コーザの台詞に、思わずニシーシは口を挟んでいた。
「レベルって、スキルストックの数ですよね?」
「そうだな。それと、技の種類にも多少は影響しているらしいぞ」
(そうだ。どうせ話せるようになったんだから、あとでルーチカに聞いてみるか。なんで、レベルがあがると、別の技が使えるようになるんだ?)
だが、図らずもコーザの疑問は、その場でルーチカが解決することになった。それもひどく乱暴なやり方だったが……ルーチカらしいとも言える。
「さてな、そんなもの俺様が知るかよ」
危うく、ニシーシは反応しそうになったが、どうにか堪えて平然を装いながら、話をつづけた。どうやらニシーシも、交換所の一件から、妖精の瞳を持たない相手への対応を、ちゃんと学んでいるようだ。怪しまれないように、その場では、妖精の話に耳を貸さないほうが吉である。
「そうなんですか……。すみません、僕のチャールティンは、元からレベルが五だったものですから」
「……ごめんなさい、ニシーシ。わたくしが力になれなくて」
「は~ん、うちと一緒ってわけね。レベルが十を超えている人間は、うちが知る限り三人だ。その一人が、氷結。たしか、レベルは十八だったかな?」
コーザが恰好をつけて話してみれば、それは自分の専門だと、情報屋が苦笑を浮かべながら水をさす。
「それは情報がちょっと古いな。今じゃ二十三の怪物だ」
「二十超えって……マジかよ」
「大マジだ。やつはもう手に負えん。危なすぎる。今にムッチョーダとの抗争をおっぱじめるぞ。俺も、もう場所を変えるつもりだ」
「そんなにか」
自分はこれからそんな人物に、会って頼み事をしなければならないのかと、そう思ったコーザは少し気後れしてしまう。
「だから、ちょうどよかったぜ。コーザ。俺も最後に、お前に会っておきたかったんだ。なんなら、よしみで少しレクチャーしてやるよ。レベルがあがったばかりで、ろくに使い方もわかっていないんだろう? どんな技だった? これから未踏破領域に挑むってんだ、そんくらいはさせろよ」
「ああ、助かるぜ」
コーザは礼を言うと、ルーチカの新技である空の薬莢について、話をはじめようとするのだった。
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