魔女がオネェ様に可愛がられるだけ
どうして…私にこんなに良くしてくださるのでしょうか?
はじめまして、私はルーチェと申します。妖しの森の奥深くにある小さな小屋で魔女として一人で暮らしています。
天涯孤独な私ですが、最近お友達が出来ました。フェリクス様というSランク冒険者のとてもすごい方です。…ちょっとだけ癖が強い方ですが。
今日はフェリクス様と街へ遊びに行くことになっています。
「ごめんなさーい!お待たせしちゃったかしら?」
「フェリクス様!私もちょうど来たところですよ」
「やあん、気を遣わせてごめんなさいね?なんて優しい子なのかしら…」
フェリクス様は私をむぎゅむぎゅと抱きしめます。
「それじゃあ行きましょうか」
「はい」
ー…
「うーん…これも可愛いわね…これも似合うでしょー?あとこれとー…これもいいわね。よし、全部買っちゃいましょ」
「あ、あの、フェリクス様」
「なあに?」
「さ、流石に買い過ぎです…」
「あら、いいのよぅ。貴女はそんなこと気にしないで。これでも結構お金は有り余ってるし。むしろこういう機会がないと貯まる一方だわ」
「でも、せめて私の服や靴ではなくフェリクス様の物を買ってください…」
「あらやだ、私の楽しみを奪うの?」
「あ、いえ、そんなつもりは…!じゃ、じゃあ、せめてこっちの服だけで…!」
「あら、そう?残念だわ。じゃあついでにこの服に合わせてこの靴とネックレスも買いましょうか」
「え、あ、ありがとうございます、フェリクス様」
「いいのよ。私の好きでそうするんだから。ほら、せっかくだからこの服でデートしましょ。お会計を済ませちゃうから貴女は着替えてきて。店員さん、お会計お願い!あと、試着室で着替えてもいいかしら?」
「はい!まいどです!」
「じゃあ着替えて来ます!」
ー…
「んもう、やっぱり似合う!可愛いわねー、ルーチェ」
「ありがとうございます、フェリクス様」
「あ、そうだ!あそこのココア、美味しくて有名なのよー。買ってきてあげる!ちょっとだけここで待ってて!」
…フェリクス様は、優しい。私なんかにも優しい。私以外にも優しい。それなのに勘違いしそうな自分が恥ずかしい。
「あ、可愛い子発見!」
「お嬢ちゃん、俺たちと遊ばない?」
「いいことしたくない?いいでしょ?」
「あ、えっと、ごめんなさい。お友達がもうすぐ来るので…」
なんだか怖い見た目の男の人達に絡まれる。
「えー。ちょっとだけ、ね?」
私はやんわりと断り続けたが、痺れを切らした男の人達は私の腕を無理矢理引っ張った。
「いいから来いよ!」
「きゃっ!」
怖い…!
「そこまでよ」
「あ?」
「フェリクス様!」
「え、フェリクス?」
「Sランク冒険者のフェリクスか!逃げろ!」
「お待ちなさい。ルーチェに一言謝りなさい」
「「「す、すみませんでしたー!」」」
「は、はい。大丈夫です」
「貴方達、次はないからね」
「はい!」
「もうしません!」
「ごめんなさい!」
怖い男の人達は逃げていった。
「ごめんなさい、怖い思いをさせたわね。今日はもう帰る?」
「いえ、大丈夫です。…あの」
「なあに?」
「どうして…私にこんなに良くしてくださるのでしょうか?」
「…馬鹿ね。そんなの、貴方が好きだからに決まってるでしょ」
「え?」
「あらやだ、気付いてなかったの?私、あれだけアピールしてたのに!もう!」
「す、すみませんフェリクス様!」
「でもま、とにかくそういうことよ。どう?私と付き合ってみない?」
「もちろんです!よろしくおねがいします!」
「ふふ、幸せにするわ」
「私もフェリクス様のお役に立てるように頑張ります!」
「あら、そんなこと気にしなくていいのよ?」
「いえ、じゃないと釣り合いが取れないくらい幸せなので!」
「まあ!ふふ、それなら私だってそうよ?」
私の頬にそっとキスをするフェリクス様。
「愛してるわ、ルーチェ」
「大好きです、フェリクス様」
私は今、世界で一番幸せです。