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第7話 この世界のお話

 新しいボクの家族の紹介がパパとママだけで終わってしまったけど、兄たちも姉たちもとても、とても素敵なんです!


 最初に紹介したいのは、無口なザック兄さんですが、あのスキンヘッドは実は薄型のヘルメットで、鎧のような筋肉はアーマーだと教えていただきました。


 取ると短いですがちゃんと髪の毛があるんです! そして、筋肉じゅばんの下は、体脂肪少なめのスレンダーなボディがございました!


 なんでそんなことしているのか不思議なのですが、彼は実は発明家で、治安の良くない土地で仕事をせねばならないビジネスマン向けのシークレットアーマーを開発してる方なのです!


 地球規模の未曾有の大災害から復興し、混沌とした時代を経ながらも世界はまだ、危険がはらんでいます。


 世界の片隅では内戦や地域戦争を百年近く繰り返す地域もあり、パパたちが住むビクトリア共和国もパパが10歳の時に10年も続く内戦が起きたりと、ようやく戦後15年という状況下、世界はまだまだ混とんとしているのです。


 人類共通の未曽有の危機に瀕して、一度は一丸となったものの、それが過ぎ去れば元のもくあみ。懲りずに私利私欲に奔走する人々、平和は一向に訪れない。


 それでも、世界を動かしたい人々はいる。危険があってもヒトの生活を豊かにし、人類大繁栄の夢を、可能性を追い続ける。


 世界を動かす要人たちは、常に身の安全の確保に余念がありませんが、その先兵たるビジネスマンにはさしたる防御もなく、時として暴力の餌食となる場合も多々あるとのこと。


 かく言うボクも絶対安全な場所に居たのに、それを簡単に破れる無敵の異常者に命を狙われてしまうことを経験したばかりだったから他人ごとではない。


 たとえ、彼らと別の次元に居ても、彼らは自分の目に入るものをなんの理由もなく興味を持ち、危害を加えることもいとわない。


 ボクが荒野に放り出された時に着ていたサバイバルスーツもそういった技術の類で出来上がったものでした。


 かなり改良されて作業着レベルに薄いですが、初期モデルは深海作業服か、宇宙服並みのぶかぶかしたものだったようなのです。


 サバイバルスーツは、砂漠や離島、極寒の平原、洋上に一人で放り出されても生き抜けるように作られた究極のスーツです。人工体組織は水と空気とヒトの排泄物の再利用で組織を維持し、ヒトの大体力の数倍のパワーを出せるスーパーマンスーツとも言われてます。


 でも、ビジネスマンがあんなの着て移動する訳には行きません。

 あれって、もともとは軍用スーツですから、見る相手には畏怖の心しか抱かせません。事情が分かっていても、軽快されます。


 そこで、あたかも着ていないように見せるビジネス戦士アーマーをザック兄さんが開発し、売り出しているのです。こんな素晴らしいザック兄貴の妹になれてボクは幸せ者なのです。


 このスーツのモニターは、ゲオルグ・パパの手下たちなので、あらゆる過酷な試験が可能です。各国のセレブや大手企業に大人気ですから、これの売上利益もかなりあって、モニタ参加の礼金も高く、手下たちは、そこそこな富裕層だったりするんです。

 最もその暮らしの恩恵にあづかっているのは、街で離れ離れに暮らす家族たちなのですが。


 ちなみに我がシュミット家にも実家はあるようで、パパの両親をザック兄さんの奥様とその子供たちが守ってくれているそうです。


 え、ザック兄さんって、いくつかな?と思ったけど、まだ25とはね。老け、いや、しっかりした落ち着きのある青年なんだよこれが!

 あのスキンヘッドヘルメットと筋肉アーマー着けてないと、絶対に気づかないというか、別人というか。


 こうなるとレイラママの年齢が気になるけど、今年41になるというから、15くらいの時の子供ってことになるよね!


 ママ曰く、若者が長く生きるのが難しい時代だったから、家庭を持ち子を産み育てる年齢も若年化してたんだって。大変な世の中だったって思うよ。

 ボクの本当の親も大変だったのだろうな。今は記憶がないから何とも感じないのだけど。


 それにしても、ママがザック兄さんを産んだのは、アタシ、いやいや、ボクの年だよ!


 うおっほん、気を取り直そう。ボクは、どうも最近、少女化が進行している。


 それというのも。ジョアンナがオフ日の度に、可愛い服を着せたがるからだ。


 でも、この間のようなことがあったので、今日のようにオアシスに出るときは、泣く泣く男装させているんだ。


 ジョアンナ的にはボクを飛び切りの女の子に仕立て上げたいらしいようだけど、その衣装のほとんどは、たまには女の子らしくしなよとザック兄さんが、オアシスに出かけたときに買い寄せたものだったんだ。


 でも、ジョアンナは自分には似合わないと、箱に閉まっていたんだ。オフの日でもラフなショートパンツ姿で、それ自体はそんなに悪く無いけど、女子してないからなあ。

 彼女こそ、もっと綺麗にしないといけないと思うんだ。なんせ素材が良すぎるのだから、もったいない。


 今日、ボクが着ている男装服は、ビジネス戦士アーマーのファミリー向けタイプなんだ。同伴のザックア兄貴の新作だ。企業戦士は単身者が多いけど、家族ごとというのもある。


 突発する惨事には、女性にも子供にも老人にも分け隔てなく襲ってくるから、それを乗り切るにわってことで開発されているんだ。


 さて、ボクらが今居るところを説明するよ。ここは、ボクが発見されて、目を覚まし、た時に、向かっている説明された荒野の駅都市チョモランマ。


 当初の予定なら、ボクは発見から二週間後に、ここで930Eから降ろされて連邦警察に引き渡され、ジョアンナたちとも別れていたところなんだけど、予期せぬ不幸から幸運に転じて今がある。


 駅都市の名前は、大地殻変動後に失われた土地や街、山、湖の名を冠しているとのこと。残された人びとの記憶をつづり後世に残しているんだね。

 大災害が起きた時代は、今とは比較にならないが、高度なデジタル化時代だっけど、自然の力にはかなわない。


 地殻変動の巨大な力や、溶岩の熱に勝てる物質などは地球上には存在しない。結構なものが失われもした。それでも原始文明レベルまでには落ちなかったので、今は、大災害前よりも遥かにテクノロジーが発達している。


 それでも、人と変わらないアンドロイドや、二足歩行の巨大ロボットなんてのは、まだまだ空想の世界でしかない。


 特にアンドロイドなんだけど、ヒトってのはどうして、アンドロイドを生身の人間に似せたいのだろうね。ロボットなら既にヒトの動きをかなり正確に摸せるに至っているのに、外見をヒトに似せたいって願望はなんだろうね。


 科学者たちの究極の夢は生命の創造なのかもね。自らが創造主になりたいって思っているのか、神の領域に到達したいって思っているのかもしれないし、神になりたいとさえ思っている人もいるのかも。


 未なお、不老不死の研究を真剣に取り組んでいる組織も多いそうだから、あながち当たらずとも遠からずなんだろうね。


 ちょっと脱線するけど、宇宙旅行についても聞いたので話してみるよ。(って、誰に説明?)


 宇宙開発は大惨事前よりも大きく発展した。各国の協力も広がったのが拍車をかけた。


 宇宙に関しては地上の土地の争いのようなことは起きていない。空気も、水もないところじゃ、独占で幅をきかけて孤立して自滅するからなんだろうね。


 そして、人類の夢だった宇宙の滞在も可能になった。民間人が滞在できる宇宙ステーションがあるのだもの。更にお金を出せば、月へも行けるらしいけど。超セレブでもひく程のとてつもない額を現金前払いさせられるので、まだ民間人は誰も行っていないらしい。なんか秘密にしたいことでもあるのかな。

 月までってものすごく遠いからね、安全保証がしずらいてこともあるんだろうけど。


 今の話は、全部、パパの手下のソーンダイク博士の受け売りなんだけどね。物腰も柔らかくて、いい感じのオジサンでね。

 自分で調べるより、彼に聞いたほどが早いんだ。彼も説明が大好きみたいなんだ。


「トロイ、それにしてもおまえ、何かと器用だよな。料理の腕もさることながら、電気工事、機械工事と普通にできるよな。それにコンピュータもわかって、プログラミングや電子回路の設計までできるし。

 第三王女だったからかは知らないが、語学力もすごいよな。この国の公用語をすべて理解出ているんだから、中央駅では、びっくりしたよ。道行く人と普通に会話してんだから。

 だから、考えるんだ。本当のお前は、以前は何をしていた人なんだろうてな。

 もしかして、神様が俺に優秀な助手を使わしてくれたのかなって、思うこともあるんだ。すまん、冗談でも過ぎたな。許してくれ。

 今日は、これから本社の技術部門に付き合ってもらうけど、いいよな」


 兄貴しゃべりすぎ。いつもは、すごい無口のくせに、ボクと居る時は、よく喋る。兄貴の仕事に付き合うのは、好きだし、最初から確認とってるからOKだよ。ボクはにっこり頷いた。

 それを見た兄貴は、頬をやや赤らめた。


 まさか、ボクの天使の微笑に萌えたのか?


 一応、この国の成人年齢に達しているとはいえ、ボクはその一応、養子縁組してないとはいえ、あなたの妹ですからね。あと、不倫はいけません。


 もっとも、今の世は、全世界的に法的責任さえとれば、一夫多妻も、一妻多夫も、家系を作らない結婚も許されてはいますよ。それは、大災害による人口の激減と多様性の生き方が発展した結果でもあるのですけど。


 でもー、でもー、もし、そんなことしたらザック兄貴の命が危ないです。ジョアンナの格闘術が、兄貴を完全に壊します!


 ジョアンナのあの蹴らない、殴らない不思議な格闘技は、愛記号って言ったけ?


 なんだったかな。ジョアンナの料理の師匠、加藤十四郎(十四男だったとのこと)さん、直伝で、その師匠は今でも、警察学校に時おり特別講師で招かれているって話だからな。80のお爺さんでも、若者に勝てるってどんな技なんだか。


 そうそう、ジョアンナは今日、どうしているかというと。夜が明ける前から外出してるんだ。


 ここに来るまで、いくつかのオアシスを回って来たけど、オアシスにいるときは、930Eをベースにして、全員、交代制で自由行動なんだ。


 それで、こうして兄貴や別の人とと行動してないときは、ジョアンナと市場を回ったりして、食材の買い付けとかしてるんだ。


 ここには、ジョアンナの師匠の道場の支部があるからって、夜明け前から出かけちゃったんだ。たぶん、朝稽古に出るつもりなんだろうって話だ。いちおう、彼女も師範代クラスらしいから。


 うら若い女の子が、まだ闇が明けきれぬ街中をひとりでは危ないと思うだろうけど、そこは、ちゃんと兄貴のスーツが生きているから、ジョアンナの格闘術があれば大概の危険は回避できる。


 兄貴の話では、稽古は口実で、実はオトコに会いに行ったんだって。ジョアンナも年ごろの女の子だったんだ。


 そして、その気になるオトコとは、ここの支部で師範代を務める加藤十四郎師のひ孫息子さんだとか、きっとそのヒトも強いんだろうね。


 あの技使われると、兄貴のアーマー着てても、ねじ伏せられちゃうし、無理に動かすと壊れちゃうっていうから、相手が軟体でもなければ無敵だね。


 その道場は、大衆食堂も併設で経営してるっていうから、お昼に兄貴が連れて行ってくれるんだ。やっぱり、十四郎老師直伝のレシピの料理が絶品らしいんだ。


 そして、ついでにジョアンナのオトコとやらも見てやろうと思ってるんだ。デレるジョアンナも見てみたいしさ。

 

 そうこうしていると、オアシスのオフィス街にある兄貴の会社に着いた。チョモランマは1万人の人口がある巨大オアシスなので、そこに立つ会社も従業員が500人以上の規模の大会社が乱立している。


 今日のボクは、正装しているから、普段より二割増しイケメン少年に見えてしまうことだろう。我ながら男前だ、正に男装の麗人だ。


 この美しすぎる容姿で兄貴の腐女子社員をメロメロにしなきゃいいけど、でも、ボクも罪だな。なんたって、中身はとてもキュートな女の子なんだからさ。


 っと、ボクは正面玄関のガラスに映る自分に語り掛けていた。


 夏の日差しがまだまだ暑い季節だ。


 赤道近くの荒野に夏の日差しも、なんて表現はそもそもおかしいか!

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