見知らぬ販売人
最近は見ないんですけど、数ヶ月前はこんな迷惑メールがよく来てたんです…とほほ
黄村 拓也(♂):マンション住まいの会社員、年齢=彼女いない歴のお兄さん
販売人(♀):コピーブランド商品を売りに来た販売人
ナレ(不問):ナレーション、最終的にもはやナレーションをしなくなる
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ナレ「これは、都内某所のマンションで起こったありふれた日常の一コマ
拓也が休日の趣味のゲームを部屋でしていると、ピーンポーンとインターホンが鳴った」
拓也「ん?何だ…この時間に」
ナレ「渋々玄関を開けると、そこにはなんと見知らぬ黒髪ロングで美麗な顔立ちの痩せ型のお姉さんが箱を持って立っていた」
販売人「お邪魔いたします
弊社は各贅沢ブランド商品を取扱っており、自社メーカーで以下の各ブランドのスパーコピー商品を生産し卸売しております
例えばシャ○ル、カ○ティエ、ロレック○、エル○ス、グ○チなどなど格安の上、本物に匹敵する高品質となります、お気軽に申し付けください」
拓也「ぬわっ!?なんだなんだ、つらつら淡々と何言ってんだ」
ナレ「あまりにも間髪入れずに商品を勧めてくる様に、即座に脳内で『見知らぬ黒髪ロングの綺麗なお姉さん』から『見知らぬ黒髪ロングのヤバイお姉さん』に変換した」
販売人「ですから…お邪魔致します
弊社は各贅沢ブランド商品を取扱っており、自社メーカーで下記の各ブランドのスパーコピー商品を生産し卸売しております
例えばシ○ネル、カルテ○エ、ロレ○クス、エ○メス、グ○チなどなど格安の上、本物に匹敵する高品質となります、お気軽に申し付けください」
拓也「聴こえてたよ、聴こえてた上で何なんだって聞いてんだよ!」
販売人「行商人です」
拓也「嘘つけ、今時行商人なんて居るか」
販売人「じゃあ移動販売です」
拓也「マンションの5階まで移動販売してくる人間なんているか」
販売人「ここにいるじゃないですかぁ」
ナレ「販売人はぷくぅと口を膨らませて涙目になっていた…その姿を見て意外と可愛いなと思い、評価を『見知らぬ黒髪ロングの綺麗で可愛くて子供っぽさのあるヤバイお姉さん』と改めた」
拓也「というかその売り文句…どっかで聞いたことあるぞ?」
販売人「そうですか?気のせいじゃないですか?」
拓也「いや、絶対に聞いた…もしくは見た記憶がある…」
ナレ「拓也は脳の中の記憶を必死に掘り返し、そして思い出した…拓也は、伝説の勇者であると!」
拓也「そうだ…俺は勇者、選ばれし勇者なんだ!…って、んな訳あるか!」
販売人「ええぇぇ!」
拓也「いや、ごめん」
ナレ「拓也はもう1度脳の中の記憶を必死に掘り返し、そして思い出した…迷惑メールフォルダに送られてきた如何にも怪しい文面を」
拓也「お前、あれだろ
よくラ○ンとかメールでばんばん送ってくるあの迷惑なやつだろ」
販売人「…ギクッ!な、なんですかぁ?それぇ?私…知りませんよぉ?」
拓也「あからさまに嘘つくの下手だな…」
販売人「そ、それで…どうですか?」
拓也「何が?」
ナレ「何が?と言ったものの、拓也は分かっていた
分かっている上で聞いたのだ
拓也の中で販売人ともっと関わっていたい、少しでも会話を引き延ばして交流を深めたいと思ってしまったのだ!」
拓也「それはない」
販売人「えっ?」
拓也「いや、こっちの話」
販売人「ですから…」
ナレ「販売人は思っていたのだ
こんな業務的な話よりも、この方と、もっとプライベートなお話がしたいと!」
販売人「ちょっ、ちょっと何言ってるんですか⁉︎」
拓也「は?」
販売人「いえ、何でもないです」
ナレ「2人は思っていたのだ
もっとこの人とお話がしたいと…っ!」
拓也・販売人「うるせぇな!」「ほんとに何言ってるんですか!」
拓也・販売人「その…」「えっと…」
ナレ「果たしてこの雰囲気をどうするのか!」
販売人「あのー…そのー…」
拓也「コピー商品なら買わないよ?」
販売人「そのっ!黄村 拓也さん!」
拓也「はいっ!!…って、え?」
ナレ「拓也は名前を呼ばれて驚いたが、直ちに何故知っているのかと疑問に思った」
拓也「何で俺の名前知ってんだよ!
もしかして…スマホのデータから探ったとかじゃっ!」
販売人「いえいえいえいえ、その、私、実は同じ職場なんです!」
拓也「は?いやあの、自分はコピーブランドを扱ってる会社になんて勤めてないですよ」
販売人「知っています!…その、コピーブランドうんぬんは…実は貴方とお話をする口実で…」
ナレ「衝撃の事実!この見知らぬ黒髪ロングの綺麗で可愛いヤバイ人は拓也と同じ会社の人間だった!
どこで家を知ったのか…これは実に気になるっ!」
拓也「もう実況じゃねぇか!」
販売人「はへっ?」
拓也「何でもない…それで、どうやって俺の家を?」
販売人「私、人事業務なので家の住所くらいは簡単に…」
拓也「普通に犯罪じゃねぇか!」
ナレ「普通に犯罪だったぁぁぁぁっ!」
販売人「ひうっ…!その…それは分かってるんですけど…その、黄村さんを一目見た時から気になって…」
拓也「お前なぁ…」
ナレ「呆れる拓也、だがしかぁぁぁし!それとは裏腹にこんな女性に好かれていたのかという喜びを感じていた!年齢=彼女いない歴の拓也…なんてチョロいんだ!」
拓也「あー…ごめん、ちょっと待って」
販売人「…はい?」
拓也「すみません!お隣さん!勝手に色々変なこと言わないでもらえませんか!」
ナレ「え、でも、これが私の日課ですから」
拓也「警察、呼びますよ?」
ナレ「す、すみません…」
拓也「あぁ…なんだ…」
販売人「気持ち悪いですよね…ごめんなさい」
拓也「まぁ、確かにこれは完全な犯罪だけどな、それは俺が黙ってれば良いだけで…」
販売人「…え?」
拓也「黙ってるからには1つ条件がある!」
販売人「な、なんでしょうか!」
拓也「それは…俺の彼女になれ!
分かったな!」
販売人「は、はい!喜んで!」
ナレ「こうして…拓也にとって、『見知らぬ黒髪ロングの綺麗で可愛くて子供っぽいヤバイお姉さん』は、『見知った黒髪ロングの綺麗で可愛くて子供っぽいヤバイ拓也の彼女』になったのでした……
ちょっと、長すぎじゃありません?あ、進めろ?わっかりました!
(咳払い)この先どんな困難が拓也に待ち受けているのかは…また別の話であぁるっ!めでたしめでたし!」
拓也「何で俺だけなんだよっ!」
ありがとうございましたぁぁぁっ!