4 二木くんの進路
「工業高校に行きたいと思います」
中学の先生に言うと驚かれた
まあそうだろう
自分でいうのも学年一番の生徒なんだ
それが普通高校よりも偏差値が低い工業高校行くと言えば驚くだろう
でも現実を見た堅実な選択なんだが・・・
10年前、オレの父親は交通事故で天国に旅立った
詳しくは教えて貰えないが結構悲惨な状況だったそうだ
・・・母は父の遺体を見て気絶したそうだ
一応、保険金は下りた
でも母親とオレと妹の3人で暮らすとなると足りないほどだ
交通事故の保険金なんてそんなものらしいぞ?
保険会社はあの手この手で金額を減らそうとするらしい
母は朝から晩までパートに出て働いている
それで収支はトントンだ
滑り止めのための私立の高校の受験なんてムダはできない
いや今なら高校無償化なので公立の高校ならいけるだろう
でも普通科なんかに行ったら大学に行けない分就職が心配だ
それに対して工業高校ならば就職率がほぼ100%だ
何時行くんの?
今でしょう!
ほら一択だ
・・・女子が99.89%の商業高校とかはいかないからな?
でも中学の先生は奨学金があるからと食い下がってくる
大体奨学金なんてものは借金なんだ
するわけがないだろう
している奴の気がしれないぞ?
大体人の人生をなんだと思っているんだか、と文句を言いたい
奨学金が貰えなかったらお金を貸してくれるのか?
それともくれるというのか?
同情するならカネをくれ!って言いたいぞ?
口先だけでなにもしないからな
大体、人生は堅実が一番なんだ
それに返済なしの奨学金なんてもらえるかどうかわからないものを当てにして人生設計とか無謀すぎる
それよりも早く働きに出て母親に楽させてやりたい
できたら妹には短大くらいは出させてやりたいな