12 ピザ屋のバイトの絶望
「残念だが首から下は動くことはない」
いきなり絶望に叩き込まれた
ピザの宅配のためにバイクに乗っていた
もう少しで届け先だと思ったら、横道から凄い勢いで車が飛び出してきて跳ね飛ばされた
気が付くと病院だった
目線を下げると体中が包帯でグルグル巻きだった
「ふぁんじゃふぁわ(なんじゃこりゃあっ)!?」
口元に付けられたマスクで日本語にならなかった
すぐに先生が来て言った
それが冒頭の科白だ
なんでだよっ!
日本の医療技術は最新じゃないのかっ!
『神の手』とか言われている医者がゴロゴロしているじゃないか!
そう言ったが
「ふぁぶふぁをあ」
口元のマスクで意味不明になっていた
「あ~、言いたいことは判らないが、一応言っておく」
そう言って医師は一通りの説明をした
脊椎の4番だか5番だかが損傷したために身体を動かせなくなっている
顎の骨がこれでもかというくらい折れていたのでこれからは言葉を喋るのを苦労するだろう
目線で文章を作って意思疎通ができる機械がある
レンタルの費用は高額になるだろうが使えるだろう
というか、いきなり車の前に飛び出してきた事に対して警察が事情を聴きたいから使えるだろう、だそうだ
その後も機械が使えるかはリハビリ担当と相談して決めてくれ
ベットに寝たきりだけど自宅で介護できるのならば帰宅はできる
等々
「ふぁふあああふる(ふざけるなっ)!」
そう言った
なんでオレが悪いことになっているんだ!?
どう考えても車の方が悪いだろう
マスクのせいで言葉が喋れないと思っていたがそれ以上に悪かった
このままではオレ一人が悪者か!
思わず悔しくって涙が流れた
・・・しかし手が動かせないので拭くことはできなかった




